【可夢偉レポート】イタリアGP DAY1(P1&P2) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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前戦ベルギーGPのスタートで発生した憤懣(各チームともそれぞれにサイズと深さは違いますが)を抱えたまま、F1はイタリアGPにやってきました。


また、気温的には、陽光のために暑さすら感じるのですが、路面温度はベルギーGPのレース日(気温/路面:22度/36度)よりむしろ低い、(気温/路面:24度/28度)という状況でした。
そして、今回のタイヤのアロケーションは、ベルギーGPと同じく、堅い方のプライムタイヤがハード・コンパウンドで、柔らかい方のオプションタイヤがミディアム・コンパウンドが設定されています。

ベルギーGPにおいては、予選上位陣の脱落で、クルージングと呼べる内容でポール・トゥ・フィニッシュを果たしたBUTは、1ストップでレースを終えていますので、路面温度からすると、1ストップはチャレンジすることが可能と見ることができます。
ただ、BUTはセイフティカー・ランでベルギーGPの序盤は助かっているのと、レースでは実質的なチャレンジャーがいなかったことを考慮すると、2ストップが無難であろうかと思われます。
また、モンツァは、その特異なレイアウトから、効率良くラップタイムを稼ごうとすると、最終コーナー(パラボリカ)から第1シケイン(バリアンテ・プリモ)までのストレート区間、第2シケイン(バリアンテ・ロッジア)からレズモ1、そしてレズモ2からアスカリ・シケイン(バリアンテ・アスカリ)の全開区間でスピードを稼ぐためにダウンフォースを削って走らねばなりません。

とはいいながら、レズモ1、レズモ2、そして高速シケインのアスカリが、れっきとした「コーナー」なので、これらのコーナーは適正値以下のダウンフォースで、スライディングしながら抜けていきます。
従って、これらのコーナーにおいてタイヤの摩耗が激しくなることを勘案し、スパに比べて路面温度が低く、タイヤに熱が入りにくいレース序盤でタイヤの表面を削り飛ばす可能性を考慮すると、なおさら2ストップが主流かな・・・と、いう状況です。


さて、ベルギーGPと違って、今回のイタリアGPはP1&P2を、久しぶりに「ウェット」コンディションを想定しないで準備できる貴重なセッションとなりました。
どのチームも、モンツァ・パッケージと呼ばれる、今季シリーズを通して、最もダウンフォースの低い唯一のエアロ・パッケージで走ります。
例えば、上海やバーレーンといった典型的なヘルマン・ティルケ氏デザインの新設サーキット群と比べると、ここモンツァは、一番ラップタイムの良い状態での車両の発生するダウンフォースと、車両の走行抵抗の関連を表す数値が、約2倍も違うと言われています。
(関連数値なので、ざっくり言えば「感度」の目安です。ダウンフォースが1/2ということではありませんが、そんなカンジに受けとって貰って結構です。)


要は、車両がダウンフォースの効いていない、フラフラな状態であるということです。
具体的には、ブレーキは効きにくい、トラクションは掛かりにくい、横Gに負けて横滑りはする・・・と、いう状態です。
そういう状態で、F1ドライバーは時速約340kmから、ちゃんとシケインが通過できる速度までブレーキをロックさせずに減速できるのですから、彼らは「特別」と、言わざるを得ません。(レースでは、さらに追い抜きをしますけど。)

そういうF1マシンなので、ルーキーとして初めてF1マシンをモンツァで走らせる場合、大概のドライバーが最初の計測ラップに入った最初のコーナー、つまり第1シケイン、を曲がりきれずに(止まりきれずに)直進します。
今回は、F1参戦50戦~300戦のドライバーが集っているわけですが、それでもチームの「計算上」最も効率の良いエアロ・パッケージで走ると、第1シケインを直進してしまうケースが多々見られましたね。
ですから、P1とP2では、計算上のエアロ効率をキープしつつ、ブレーキを効きやすくしたり、コーナー立ち上がりのトラクションを良くしたり、タイヤの摩耗を見ながらセッティングを進めて行くという作業になります。


もちろん、直線のスピードが伸びるように、ギアレシオも微妙に設定します。
もちろん、これは直接のライバルとなるチームの出方を見ながら・・・です。


で、KOBです。
残念ながら、せっかくのドライ・セッションなのに、P2で車両に不具合が出てしまい、走行メニューを全てこなすことができませんでした。
また、練習用のエンジンが、すでに寿命間近のスカスカのエンジンだったので、ストレート・スピードも伸びませんでした。
幸い、チーム・メートのPERがトップ10に入っているので、チームとしてのデータが不足するという事態は避けられました。
現状、P3に向けて、いかにリカバーするか・・・と、いうことに集中するのみという状態です。


ただ、誤解の無いように記しておきます。
DAY1は、ニュー・トライ廻りに不具合が出たというだけのことでルーティン・ワークに問題があったわけではありませんので、念のため。
良いニュースとしては新機軸の機能は確認はできているのと、旧型のC29、C30の懸念ポイントであった縁石の乗り越しについては、C31ではほぼ問題の無いレベルに仕上がっています。
レースの展開予想については、忙しくなるP3を経て、予選結果が確定してから・・・と、いうことですね!

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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。

KOB=小林可夢偉
BUT=ジェンソン・バトン