F1は、開幕して5ヶ月目にして、一番忙しい月に入りました。
7月は今回のイギリスGPを含めて3戦が予定されているからです。
そして、このイギリスGPとドイツGPが、いわゆる「ホーム」的なチームやドライバーが多いことから、同じヨーロッパ戦でも、雰囲気はこれまでのレースとはちょっと違うといったところでしょうか。
また、今年のF1が接戦のせいでしょうか、目が肥えていると言われるイギリスのファンも、今年は観戦に踏み切る方が多くなったようで、なんと初日にして約8万人もの観客がシルバーストーンにやってきとのこと。
しかも、DAY1は早朝からあいにくの雨。
シルバーストーンには、公共交通手段がゼロに等しいので、自家用車(観光バス)で訪れる以外の方法は無く、おかげで、シルバーストーンへ向かう道は大渋滞。
KOB陣営も、危うく遅刻の憂き目に遭うところでした・・・。
雰囲気としては、富士SWに向かうのに、十分早く首都高速3号線下りに乗ったつもりでも、いきなり「綾瀬バス停付近を先頭に約20kmの渋滞・・・」という電光掲示板を見るようなものです。
(ちなみに、チーム・オーナーは、大の付く遅刻をしましたが・・・。)
そして、その雨は1日中続くことになり、気温が18度くらいであっても、吹きさらしの風で体感温度は低いにもかかわらず、早朝からずっとF1の走行を待ち続けてくれたファンの皆さんには頭の下がる思いです。
DAY2もDAY3も、雨の予報ですが、どうか体調を崩されないよう・・・と、祈るばかりです。
さて、これでコンディションが1日中ウェットだったということはお分かりになったかと思いますが、KOBは午前のセッションがP7、午後のセッションがP2と順位的には力強い内容で終えることができました。
クラッシュのリスクを回避したり、使用セット数が限られているウェット・タイヤの温存という理由で、走行を控えたドライバーもいた中での順位ですが、天候を含め、条件は皆一緒なので、うまくリスクを管理しながら、ラップタイムも上々という好スタートと言えるでしょう。
ただ、もう少し、ドライに近い状況であれば、前回のレポートでお伝えした新型のエアロキットのデータ取りを入念にやりたいところではありましたが、
条件が安定しないので、できる限りデータ取りをトライしつつも、ウェットと目されるレースに向けて、ブレーキ温度の管理や、タイヤ内圧のチェックが、主なメニューになりました。
ラップタイム的には、アクアプレーニングが酷かったのと、他ドライバーの燃料搭載量の推測が難しいので、実際のところ、他ドライバーとのラップタイム差を見て、アップグレードを受けたC31が、どのような「位置」にいるかは、まだ解りません。
その見通しは、今後のレースのドライ・セッションまで、待たなければならないでしょう。
さて、これ以外に、今回のDAY1に関しては、レポートできることが少ないので、今回はちょっと解説を・・・。
これまでのレポートの中で「ラムダドライバ」云々という表現を使っていますが、これが何のことか触れておきましょう。
本レポートで言うところの「ラムダドライバ」とは、排気を利用したダウンフォースを増やす、専門誌でいうところの「ブローイング」のことです。
では、どうやってダウンフォースを増やすのか・・・。
車を運転している皆さん(ただし、最近発売されているアイドリング・ストップ無しの車)であれば、自家用車のエンジンが掛かっていて、ギアがニュートラルの状態で、アクセル(スロットル)を踏まないで(アクセル開度0%)エンジンが回っている状況は想像できると思います。
その時、エンジン回転計を見ると、大体毎分600~900回転だと思います。
これを、一般的にエンジンのアイドリング状態と言いますが、この状態で排気管に手をかざすと「ボッボッボッ」と、排気の風圧を感じることと思います。
この状態で、ドライバーはアクセルを踏んで無くて(アクセル開度0%)も、エンジンは、少しだけスロットルが開いていて、燃料の供給を受けて、回転を続けています。
F1エンジンも、もちろん、自家用車のエンジンと同じようにアイドリング回転します。
但し、そのエンジンのアイドリング回転が、毎分4000~4500回転です。
一般的な自家用車のエンジンだと、ほぼレッドゾーン・・・という回転数です。
その時、排気の風圧を想像してみて下さい。
(想像だけですよ!危険ですから、絶対に手はかざさないでください!!)
凄そうでしょ?
これまでは、ただ捨てるだけの、この排気の風圧を利用できないか?
と、考え出されたのがブローイングです。
アクセル全開、いわゆるスロットル開度100%、7xx馬力での加速時には、シフトアップ時約1万9000回転の排気が、ダウンフォース発生に転用できるというわけです。
そして、さらには減速時でも使えないか?
…という考えが、どこからともなく出てくるのはF1界では自然な事です。
昨年、鈴鹿の日本GPに観戦に行かれて、第2コーナーあたりで見た方には、聞き覚えがあるかもしれませんが、「ヴアリヴァリヴァリー」という、日本のFNやGTのレーシングカーが決して発する事が無いエキゾーストの音を聞かれたかと思います。
あれが「オフスロットル・ブローイング」、ここのレポートでいうラムダドライバです。
ドライバーが、アクセル開度0%(オフスロットル)なのに、エンジン制御コンピュータ(ECU)は、アイドリングに必要以上の燃料を噴射して点火し続け、排気そのものに、より多くのエネルギーを持たせていたのです。
そうすることにより、減速時にもダウンフォースが増え、コーナリングスピードが増し、ラップタイムの向上に繋がった・・・と、いうわけです。
(もっとも、排気自体をダウンフォースを効率よく発揮する位置に吹き付け(ブローイング)しなければなりませんが)
ただ、このブローイング、良いことばかりではありません。
必要以上の燃料を噴射するわけですから、当然、燃費は悪くなります。
つまり、レースでオフスロットル・ブローイングを多数使用しようとすると、その分、燃料タンクを大きくしなければなりませんし、また、スタート時の燃料搭載量が多くなって、重量増となってしまうというネガティブな部分もあります。
ただ、燃料搭載量が少ない予選は、この限りではありません。
ですから、昨年は予選タイムだけ異常に速いチームが存在したわけです。
(もちろん、これらのエンジン制御は「フライバイワイヤ」だからこそ出来る代物でありますが・・・。)
これらの減速時=オフスロットル時のダウンフォース増加を「目的」を達成するソフトウェア、デバイスの開発には、大きなコストが掛かることから、今年から規制が強化され、エキゾーストの位置を始めとして、昨年とは全く違う状況にはなっているものの、同じエンジンである以上、アイドリング自体が無くなるわけではありません。
かなめちゃんがいない世界など俺は認めないと、
もとい、
ブローイングの無い世界など俺は認めないと、「発動」しようとする人たちが出てきておかしくありません。
数戦前から、予選パフォーマンスとレースパフォーマンスの隔たりに(?)のあるチームが散見されはじめたので、レポート中に「ラムダドライバ」の表記を使用するようになったわけです・・・。
個人的な意見ですが、私はF1は、ラムダドライバの使えるARX-7やコダールといったデバイスの優劣の勝負よりは、アナザーの世界観のように、Zy-99MやM9(単眼)といった拮抗した実力のマシン同士とそれを操るパイロット同士の争いの方が練度を上げると思います・・・。
ただ、ドライバーのバラエティを考えると、ゲルググ使い・・・とか、そういう表現が妙にしっくりきたりもしますので、表現が悩ましいところです・・・。
(はっきりしなくてゴメンナサイ)
注)そういう私自身は、昭和バリバリの宇宙戦艦ヤマト世代です。
(2199もおk)
さぁ、で、肝心のKOBの明日は?
P3がウェットかドライかで、ずいぶんと変わってくるかと思いますが、その中間や、刻々と変わるというのが一番やっかいです。
ただ、Q3進出、それも上位進出は、現実的な達成目標と期待しています!
お楽しみに。。。