【可夢偉レポート】バーレーンGP DAY3(Race) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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すみません、狙っていたポイントが獲れず、ガックリしています。

orzですね。


DAY2のレポート
「誰が何回ピットに入って、何色のタイヤを装着したかを見ておいた方がいいと思います!」
と、書きましたが、そのココロは
KOBは実は他のドライバー3~4回ピットストップするだろうという予想の中、2ストップを狙っていた
ということにありました。

それは、スタート時点で、堅い方のプライムタイヤで出たのはKOBだけだったということでもお解りいただけるでしょう。

チームメートのPERは柔らかい方のオプションタイヤのスタートによるスタンダードな3回ストップ狙いだったので、
チーム的にはタイヤの保ちの関係から、先に入ってくる予定のPERから外したタイヤの摩耗を計測し、KOBが後で使う予定のオプションタイヤで何ラップできるかの情報を得て、残りの周回数を分割するという考えでした。

(一方のPERは、KOBの1回目のピットインで外したプライムタイヤの摩耗を計測して、残りの周回数を分割するという、チームとしては効率良くデータが回収できる方法です。)




ところが、です。


 KOBは当初のプラン通り1回目のピットストップをL15まで引き延ばしてポジションを上げる予定でしたが、
その間にタイヤ交換を済ませて2セット目で走り始めた車輌のペースが速く、KOBの1ストップ少ない分のマージン約20秒(1回のピットロード走行とタイヤ交換作業の時間)が、急速に失われていく状態となりました。

そのダメージを吸収すべく、
KOBは1ストップ目のタイヤ交換を予定より早いL13にずらし、その分走行距離が長くなるのを承知で、もう1度プライムに変更し、廻りのペースに合わせることにしました。

ここで、3ストップ作戦の中古オプション・スタート組が、最初のタイヤ交換をL8からL10の間に行っていますので、
それがオプションタイヤの性能限界だとするとKOBは合計57LAPのレースの最後のオプションタイヤを装着するには、2セット目のプライムでL47~L49あたりまで引っ張らねばなりません。

ただでも、難儀なドライブが待ち受ける事となりました。


ところが2度目のタイヤ交換を終えた3ストップ組のペースはさらに速くなり、
一方のKOBは2ストッププランのマージンを使い果たしてプライムタイヤが性能限界に達し、ポジションアップは絶望的になった状況で、L31に26ラップを残して2度目のタイヤ交換にピットに入り、オプションに変更しました。

そのまま最後まで届けば、ポジションキープでゴールできるという状況ではありました。

ただし、2セット目として使用した新品プライムで18ラップしか持たなかったのに、3セット目の中古オプションでの26ラップは、誰の目にも無理な注文ではありましたが、
この時点では、もう後には引けません。

当然、この距離は長すぎで、タイヤの限界も早く来てしまい、
L45には3ストッププランで走っていたチームメートのPERに追いつかれ、
そのPERとKOBをポイント圏外に脱落し、ペ
ースは2回交換にこだわる必要が無くなるまで落ちてしまったので、
最終的にはL50で3ストップに変更、もう一度タイヤ交換してP17に順位を落としてゴールを目指す事になりました。

結果として、3ストップ組の最後のピットストップをしたカタチとなって、小林より前を走るマシンの中で、タイヤが一番良い状況になった(正直なところ、このあたりでSCが出るのを待つしかない状況に追い込まれたわけです。同一ラップでP17だったので、レースはきっと面白い事になったでしょう!)ので、当然のことながらペースは急激に上がり、トロロッソの2台を交わし、またSENとBUTのリタイヤによってP13でゴールとなりました。


一方、そもそも3ストップでレースを組み立てていたPERはP11でゴールなので、
チームとしては、どちらのプランでも大差は無い結果となってしまい
「単にマシンの速さが足りなかった」
と、いう状態で終わってしまいました。


レースが終わった直後の状況で言えるのは、つまり
2ストップか、3ストップかの善し悪しではなかったということです。

解っているのは、
路面温度がDAY1、DAY2より約10度以上下がった事、
レース直後のフルタンク時のラップタイムが、DAY1、DAY2のロングラン時より1~2秒程速かったことです。


まずは、反省点を追求する前に、詳細なデータの分析をしなければなりません。
我々のような思いをしたチームは、他にもあります(マクラーレンの2台)し、ドライバー間で差の出たチームもあります(フォース・インディアの2台)

そして、ギアボックス交換ペナルティを受けて、後方から追い上げてきたMALとMSCの状況も分析しなければなりません。
なぜなら、彼らは全てのタイヤがニュー・セットだったからです。
MALのペースは、リタイヤするまでは、かなりのモノでした。
もちろん、路面温度が下がったので、その分、グリップが向上した・・・と、結論付けるのは簡単な事です。
DAY1のレポートで触れたように、これだけラップタイムが向上すると、当然、DAY1でFIAに申告したギアレシオが、レース状況に合わなければ大きく影響しますし、レースでは予選で使用したセットアップから変更する事は出来ないので、DAY2に決定したバランスがレースに合わなければ、これも大きく影響します。

 F1の場合、詳細なデータ分析というのは、レース結果とコンディションから逆算して、
いつ、どの時点での判断を誤ったかをハッキリさせる事
(それと、いつどの時点での他チームの判断がどうだったか)と、
次に同じような事が起きた場合、どう対処すべきかということを言います。

(社会人の皆様においては、業務上、プロジェクト進行において似たようなことはあると思いますが、我々F1屋も同じようなことをしているのです!)




さて、その上で、
5月1日~3日にかけて、イタリアのムジェロで3日間のテストが実施されます。

ここで、ほぼ全チームが、大幅なエアロ・アップデートを施して、次のスペインGPに備えます。


大体、F1のエアロ・アップデートには2~3ヶ月かかります。

今回のアップデートは、
それぞれのチームが、それぞれのチームの2012型を見て、
そのアイデアを取り入れたり、
また新アイデアを投入したり・・・と、
外見から見ても注目のテストになると思います。



Sauberも、アップデートを投入しますので・・・。

うまく、機能すると良いのですが!!


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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。

KOB=小林可夢偉
MAL=パストール・マルドナド
MSC=ミハエル・シューマッハ
PER=セルジオ・ペレス
SEN=ブルーノ・セナ
BUT=ジェンソン・バトン