【可夢偉レポート】バーレーンGP DAY2 (P3&Qualify) | GOODSMILE RACING 広報ブログ

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さて、KOBのバーレーン予選は12位でした。

この結果、「w」でも「orz」のどちらでもありませんでした。

想定では、
予選8~9位で「w」
予選14~16位で「orz」
という状況でありました。


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さて、P3とQualifyの話に入る前に、ちょっと情報を。
現在のF1レギュレーションでは、P2の終わった段階でギアレシオを申告しなければなりません
※ギア(歯車)とギアの組み合わせによって生まれる回転差の比率

今回で言えば、
15時30分にP2が終了し、
17時までにFIAにギアレシシオを申告して、
レースが終わるまで変更してはならないことになっています。

簡単に言うとトップスピードを決める・・・ということです。


しかも、それは翌日の予選と、翌々日のレースを見越して決めなければなりません。

この作業、実に難儀です・・・。

ここに、今回の予選のスピードトラップ(第1コーナー手前)の結果がありますので、紹介すると・・・。

GRO 318.1km/h
RAI 317.9km/h
HAM 317.2km/h
DIR 316.9km/h
HUL 316.7km/h
KOB 315.5km/h
PER 314.9km/h
BUT 313.4km/h
ROS 313.4km/h
MSC 312.8km/h
SEN 312.3km/h
PET 311.2km/h
KOV 311.1km/h
MAL 311.1km/h
ALO 310.7km/h
MAS 310.2km/h
VER 308.1km/h
RIC 307.8km/h
WEB 307.0km/h
VET 306.9km/h
KAR 306.6km/h
DLR 306.4km/h
PIC 300.6km/h
GLO 300.4 km/h

よく見ると、チームメート同士で並んでいるのが解ると思います。

例えば、GROとRAI、KOBとPER、DIRとHUL、ROSとMSC、ALOとMAS等です。

これが、チームのギアレシオ戦略・・・と、考えて良いでしょう。



予選では、DRSが自由に使用できるので、
これらはいずれもDRSの作動状態(つまり、リヤウィングのトップ・プレートが水平になって、抵抗が減った状態)の値です。
当然スピードが高い方がイイ訳ですが、いつもというわけではありません。
なぜなら、レースでは、DRSはDRS検知ゾーンで前走車との距離が1秒以内でないと、使用できないのです。
ですから、レースでは、この値は、前走者を追い抜くときだけに達成できる値となります。

つまり、例えば、
レースをリードしているドライバーは、DRSは使えないのです。

で、今回のPPは?
VETですね。

で、VETの最高速は?
なんと20番手で、トップのGROとは約11km/hも違います


仮に、DRS検知ゾーンで、VETがGROの前方0.6秒を走っていたら、VETはDRSを使えず、VETのトップスピードは、これよりもさらに遅い値となり、一方のDRSを使うGROはスピードトラップで11k/h以上のスピード差を付けることができる・・・と、いうことになります。

ですから、DAY1レポートで触れたDRSオン/オフの効率チェックというのは、こうしたストレートスピードを相手の出方を見ながら、トップギアのギアレシオを決める重要な要素となり、慎重にならざるを得ないというわけです。

さて、このスピード差をどう読むか・・・。

RAI、GROのロータス。
追い抜く気、満々ですね。

おそらく、KOBを含む7番手のPERまでがそうだろうと考えられます。

面白いのは、チームとして、スピードが揃っていないマクラーレンですね。
HAMとBUTのセッティングは明らかに違うという事です。

では、遅いVETとWEBはどうよ?
しかも、予選順位は前の方だし・・・。

当然の疑問です。

ストレートスピードが遅いということは、簡単に言うと、ウィングの角度が付いている、つまりダウンフォースを付けているということです。
(もしくは、車体の空気抵抗が、単に大きいだけorエンジンがへたっている。←最悪)

ダウンフォースが付いていると、コーナリング速度が上がり、横滑りもしにくいので、タイヤが長持ちします。
VETとWEBのストレートスピードが遅いのは、何も今回だけではなく、昨年も、一昨年もそういう傾向です。

つまり、彼らのセッティング・フィロソフィなのです。

例えば、前述のVETとGROのスピード差の話ですが、今回のDRS検知ゾーンは、最終複合コーナーの1個目、結構きついT14の手前にあります。

例え、その差が1秒以内でも、VETが相対的に高いダウンフォースで、コーナリングスピードを上げて、早めに加速すれば「ケリ」で逃げ切る事ができるわけです。
スピードトラップでの速度差が大きくても、T14-T15の脱出スピードが遅ければ、GROはスピードトラップの場所まで追いつくのがやっとで、T1のブレーキングは、ダウンフォースのあるVETの方が、その分遅らせる事ができると・・・と、いう狙いです。

ただし、VETがKERSの操作をミスするか、アシストが足りないか、壊れたりするような事があって、一旦GROを前に出すと、今度は追いつく事が難しい事でしょう。
そもそも、VETは、T14に至る短いストレートの前のT13のコーナリングスピードと良好な立ち上がりで、DRS検知ゾーンまでに1秒の差をつけるつもりでしょう。

説明しはじめると、キリがありませんが、じゃあKOBはどうよ、ということになりますね。

前述の通り、追い抜くつもり(当然です)ですが、直近のライバルのロータスの2台が早いのが気になります。

しかし、KOBには
2セットの新品プライムタイヤ、
1セットの4ラップOLDの中古のプライムタイヤ、
3セットの3ラップOLDのオプションタイヤ

が残されています。

本来なら、オプションタイヤ全使いでQ3に進出して、Q3は中古でソコソコ・・・というプランだったのですが、Q2の2回目のアタック中、セクター1は自己ベストで通過したのですが、セクター2のT11で変わった操作をした為にミスしてしまい、タイム更新ならずにQ3進出は逃してしまいました。

もっとも、この変わった操作、新境地へのチャレンジなので、そういう意味で「orz」では無かった、ということです。

これをうまく使って、早いタイヤの性能劣化の影響で、3ストップとも4ストップとも予想されている混乱のレースを好結果に繋げたいと考えています。


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KOBの他の台風の目は、
3セットの新品オプション、2セットの新品プライムを持っているP18のMSC、
ギアボックス交換により5グリッドペナルティが決まっていてタイヤを温存したMAL、
新品のプライムとオプションを2セットづつ温存しているRAIでしょう。

明日は、おそらく目まぐるしく順位が変わるレースになる事が予想されるので、
ノートと鉛筆で、誰が何回ピットに入って、何色のタイヤを装着したかを見ておいた方がいいと思います!


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※レポート内のドライバー略称は以下の通りです。

GRO=ロマン・グロージャン
RAI=キミ・ライコネン
HAM=ルイス・ハミルトン
DIR=ポール・ディ・レスタ
HUL=ニコ・ヒュルケンベルグ
KOB=小林可夢偉
PER=セルジオ・ペレス
BUT=ジェンソン・バトン
ROS=ニコ・ロズベルグ
MSC=ミハエル・シューマッハ
SEN=ブルーノ・セナ
PET=ヴィタリー・ペトロフ
KOV=ヘイキ・コバライネン
MAL=パストール・マルドナド
ALO=フェルナンド・アロンソ
MAS=フェリペ・マッサ
VER=ジャン=エリック・ベルニュ
RIC=ダニエル・リチャルド
WEB=マーク・ウェバー
VET=セバスチャン・ベッテル
KAR=ナレイン・カーティケヤン
DLR=ペドロ・デ・ラ・ロサ
PIC=シャルル・ピック
GRO=ロマン・グロージャン