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隆男は西麻布のちょっと奥まった路地にある“T‘s”というネオンが出ている地価1階のバーの扉を押しながら
「さ~、着いた!」。
カウンターの左側にある席に座りながら祐子は
「結構雰囲気いいわね!」
すると隆男は祐子の右隣の席に並んで座りながら
「うん、時々一人で来て、ジャズ聴きながら少し飲むんだ。」
「そうなんだ。ところで中島君奥さんは?」
「う~ん、色々あって別れた。一人のほうが気楽でいいんだよ!」
「なことないでしょう? 中島君って家事なんか出来るの?」
「結構するほうなんだ。料理もするし、ドボルザークも聞くんだ。」
「????何、ドボルザークって?」
「いや~ね、ちょっと!」
何かドボルザークが隆男と妻の間に関係がありそうだなと祐子は思った。
「クラシックも聞くんだ。」
「いや~、いや~リハビリなんだ。どういうわけか音が急に聞こえなくなって。そしたらドボルザークが難聴の回復に役に立つって誰かに言われて。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
「何飲む?」
「俺、ジントニック!」
「そうね~!私は、フローズンダイキュリー」
「ほら、あいつがピアノの弾き語りをするんだ。」
とカウンターで飲んでいる初老の男を指差した。
「なんでもやるぜ。ジャズ、ポップス。まあ、演歌はやらないけど。」
運ばれたきたジントニックとダイキュリーで二人は
「かんぱ~い! 本当に久しぶりね!」
と祐子は隆男を見つめながら杯を上げたのでした。
暫くするとピアノの演奏が始まり、あの初老のピアノ弾きが“イパネマの娘”を弾き始めた。
「俺、この歌好きだな~!」
と言いながら、隆男が右手を祐子の大腿部の上にさりげなく置いた。
「アタシも」
と言いながら自然に?祐子もその隆男の手の上に自分の手を重ねたのです。
さて、今後の展開は???
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