さてさて、昔あるところ、耳の遠いおじいさんとレモンアレルギーのおばさんがいたとさ、二人は峠にある自分の茶店で出すお汁粉を“なんとか、新しいものにしたい!”と、色々と挑戦したとさ。 “凍ったレモン”の擂り下ろしたのをお汁粉に振り掛けるとか、寒天をお汁粉の中に入れるとかしてたとさ。 “甘さ控えめ”とか言ってるのさ。 それに付ける浅漬けも、色々挑戦したとさ。 この村の特産のパパイヤの浅漬けを今度やってみるとか。 人の話を聞かないおじいさんは、強気だし、しつこいとさ。
そのおじいさんより、もうちょっと若い、頭を剃った怖いお兄―さんが、技術的理由で組長に昇格した時、喜んだ姉御は、取って置きの紫のスパッツ(じゃない!)レギンスと、隠していたウイスキーでお祝いしたそうな。
若手のアンデイーは、いつもの赤にピンクの花柄の半天と、肌色肉襦袢に(女将さんの刺繍入り)袖を通し、百万ドルの笑みを浮かべて、奥さんのベリーダンス教室が終わるのを待っている間、首から下げた老眼鏡で仲良しクラブのロビーで村の新聞を読んでたとさ。
遠く離れた古都、奈良か京都にいたHさんと奥さんは、二人とも腰が悪く、この村の温暖な気候が痛い腰には合うとか言って、はるばるやって来やはったんや。Hはんのだじゃれ(京都風おやじギャグ=わからへん。)に疲れた、いとはんは、そういう人が沢山いるこの村の郊外の、球出山の温泉のエステに行って、痛い腰とギャグで疲れた心を癒すとさ。
暫く前まで、夫婦で町一番の飛脚兼駕籠かきだった鉄人と呼ばれた夫妻も、スタミナが切れ、頭は擦り切れ、今や二人も球出差組のやっかいになってるそうな。
半農半漁のこの村のマグロ漁船の妻は、帰りの遅い現役漁師のだんなを思い、毎朝、門戸気荒半島から遠い海を眺めては、マグロ漁船はどこ? とNo Where Womanの錯乱状態。
村で働けなくなった老人達に、絵を教えている移民先から戻ったおばあちゃんも学級委員の熱意、情熱、胃が丈夫な事、マリリンの黒のTシャツに感動、机の下をリンボーダンスでくぐったとさ。
村の祭りに必要な酒は、みんなから愛されてる“M”ちゃんが、ちゃんと食べ残しのご飯から作ってるとさ。一生懸命作るから、酒を造る過程で”汗が”ぽちゃって、酒に入る。 おつまみのいらない酒になるのさ。
今は村長の用事で、ふるさとに帰ってる、村である意味では、ゆーめー人の“I”世話役は、村の財政を気にして”1日10銭で、生活しよう!“運動を始めたのさ。
半農半漁の村で唯一、“肉食”してるYおじいは、“賭け事が大好き!”、
Yおじいのおばんは“賭け事大嫌い”じゃなくって、“時間にルーズなのが嫌い! だからおばんがいない時、村の食堂では“ラーメン定食(トンカツ付き)を食べるのさ。
同じく、村でゆーめーなのは、もう刀も取り上げられ、ちょんまげも切らなくちゃいけない時代になったのに、まだ髪をちょんまげ風にして、諦めきれないでいるでかせぎ漁師の“ごろはち”あにい。 もう、中堅から、役付けになろうとするのに、ふるさとに定期的に帰る、にょーぼー思いの“変心ごろはち”あにい。 でも彼のおやじギャグは普通。
稼いだお金を賭場で巻き上げられたけど、今日は祭りで過去最高の演技で3位入賞。 にょーぼーにお土産買って帰れるって、喜んでんのさ。
おやじギャグと言えば、背の高い“O”おじき。 寒――い国の田畑売り払って、この村にやって来た”筋“を通す男。 おじきの大所高所からの”笑い話“は、村の祭りの後の宴で、村民から大喝采。 その時はいつも赤い半天で、洋風の茶色の飲物を飲んで語るのさ! その飲み物のふたを開ける時の音。 みんなが聞き耳をたてるのさ。
だって“ペプッ、シー”、この奇妙な音を皆聞きたいのさ。
この村にも、沢山神様がいらっしゃるだ。 おらっちは何でも神様は拝むんだ。
中国から来た“麻のすずめ”という芸事の神様、“なんで、俺は下手なんだ!”って言いながら、いつも賞金稼ぎをしている嵐の神様、居眠りの神様は、くしゃみが神業。
村の相撲の親方は、女将さんに頭が上がらない。 だって女将さんの方が強い。 この間なんかも女将さんが優勝。
“仕切り線が、男と女は違うんだ!”と親方は言うけれど、
女将さんの突っ張りは正確なのさ。
時々隣国の高麗に行く“テルやん”は、刀のつばに黒いなめし皮を巻いてます。
このなめし皮が“結構安いのよ!、抜刀(Put)には抜群!”とか言って、村の近くの中国人の街に、良いなめし皮がないか探しに行きます。 “テルやん”の女将さんは、“わたしゃね、こう見えてもM姉御と、どーねんだい。”、
“だから、どーなんだい。“
村の伝統行事の祭祀で、目がぱっちりの名主の奥さんは、大漁旗を腰を入れて振るのが得意の大女優。この前も近くの村の祭りに出て行って、旗を振ったとさ。 腰の入れ方が、他の女子衆とチャウ!
チャウと言えば、遠い難波(なにわ)の祭りを仕切ってるNやん。 この人は、村の朝礼で、村の仕来りなんかを皆に伝える仕事をしているけど、人の名前をよく間違えるのさ。
そういう時、必ず寺子屋の先生が、“今日は馬車に乗って馬場には入れません。”って親切な、注意を朝礼の最後に皆におせーてくれるのさ。 この先生は赤の着物で、一人黙々と村の食堂で給食を食べてるのさ。
外国から来た私には、不思議な人達がいるこの村で、もっと不思議な人達に出会う気がするんです。 本当にこの村は奥が深い。
Zhri---n, Zhri—n. 忘れてた!
隣の長屋の望遠鏡と糸電話が好きな中国人がいたんだ。 本当にこいつは良くこの村の事を知ってるんだとさ。