こんにちは、今回音響チーフを務めさせていただいた2年の清水理子です。公演が終わって余韻に浸ると共に、いろんな思いが押し寄せています。
 
今回、念願の音響チーフでした。2年チーフの肩書きもかっこいい。でも正直、怖かったです。すべてにおいて。
その理由として主に2つあります。
 

まず、私は頭の回転があまり良くないです。別に自分を卑下しているわけではなく、自分でも自覚があり、授業でディスカッションするときや何かの話し合いをするときについていけてないなと思うことあったり、自分の意見を言いたくてもそもそも意見が思いつかない、必ず自分よりいい案を出してくる人がいることが多いです。こんな自分がちゃんと指示を出してみんなをまとめられるのか怖かったです。

 

2つ目に、舞台監督さんは、私に音響知識がある程度あると思って音響チーフにオファーしてくださったのかもしれませんが、過去1回しかちゃんと音響部にいたことがなく、根っこの部分から音響機材設置の方法や音が出る仕組みを知っていたわけではありませんでした。また、自分はこれまでの人生で学校の教科の問題以外で、複雑なことや機材と無縁の人生を送ってきました。Wi-Fiの設置とか携帯の機種変時の設定とか全部兄がやってくれていたし、4人家族で私以外がそういう話には対処してくれていました。

でも、将来1人で暮らす時どうするのか?家庭をもつにしても全部そういう複雑なことは旦那さんに任せるのか?と考えてみると、自分のプライドに傷がつきます。あーいいよいいよ、お嬢ちゃんに言ってもどうせわからないからと言われるのは不本意の極みです。

 

ここで当たり前のことに気づきました。

知識がないなら勉強すれば良いのです。ポンコツだって勉強すればそれなりになんとかなるのでは!私は音響チーフが決まってから音響についての本を買ったりYoutubeで勉強しました。学校の教科以外のこういう新しいことを学ぶのがとっても面白かったし、知れば知るほど奥深い音響の世界にワクワクしました。

 

しかし、仕込み期間が始まると自分の知識の浅さを痛感しました。また、毎日のように異なった機材設定トラブルがあり、なぜ音をスピーカーから出すだけなのにこんなに苦労しなくてはならないのであろうか、なぜ歴代チーフはできたのに、自分がチーフの時にこんなに音を出すという当たり前のことも叶わず、役者をはじめとする各所に迷惑をかけているのか。すごく辛かったです。仕込み期間中は毎日バタバタでてんてこ舞いでした。しかし、プロスタッフさんと一緒に機材をいじっていく現場での実践で初めて見えることが多くあり、音が出ない原因を考えてトライアンドエラーとトラブルシューティングを繰り返していた日々も悪くはなかったです。日を経るごとにだんだん音へのこだわりの気持ちも高まってきて、自分のやりたいことを明確にして、それをするにはどうすれば良いか考えることにも慣れてきました。これができるようになったのは、副チーフや補佐、舞台監督や演出の方々のおかげです。なぜなら、彼らの思考は論理的で、いつも私の意見を待ってくれて、その上で行き詰まったときにいくつか選択肢を残した上で提案をしてくれたり、私に質問を投げかけることであくまで私の意向を尊重した上で導いてくれたからです。本当に感謝しています。たった2学年くらいしか違わないのに本当に頼りになる、近くて遠い存在のおにいさんおねえさんたちです。

 

音響部が適切な環境を提供できないことで役者の気持ちが萎えてしまっているだろうことは容易に想像がつきました。知っていたはずなのに実際にそうだと分かったときは消えてしまいたいくらい落ち込みました。高い参加費を払って熱量を持って毎日毎日稽古を積み重ねている役者の努力が、音響ミスやトラブルによって崩されるのは避けるべきことです。極論、リスクを本当に最小限にするならばプロスタッフに丸投げして完全委託すればよいのです。しかし、それでは自分たちで作っている公演とはいえません。自分たちでやっているからミスは仕方ないということが言いたいわけではありません。やはり役者と同じ熱量を持って試行錯誤して努力していくしかないのだと思います。

 

私は今回、2年チーフだからといって公演が打てる最低限のことに妥協したくなく、付加価値を作れることを示したくて、いくつか新しい試みに挑戦したりしましたが、それがリスクに繋がるのが怖くて結局安全策に戻したり、トラブルがあったりと波瀾万丈でした。今回私がやらかしたことは全て次のチーフに引き継ぎ、私がもう一度音響チーフをやらせていただく機会を頂けたら、リベンジしたいと思います。最終的にはたくさんの素敵な仲間に支えられて良き楽日を迎えることができ、本当によかったです。これだからSTEPSはやめられないのです。大好きな人たちへ、この場を借りて皆様に感謝申し上げます。

 

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STEPS Musical Company 第64回本公演 「テアトルマリオネット」

脚本 元谷瑞香

演出 薮内光

 

🩰あらすじ

──ちっぽけな僕らにできることはあるか。

 

 今からそう遠くない昔、公平と幸福を謳う東の果ての小さな国に、平和を謳う子どもたちを養成する音楽学校があった。厳しい稽古に厳しい躾、外出すら滅多に許されない日々。そんな中でもささやかな幸せを忘れずに過ごす子どもたちだったが、ある日突然、学園の経営不振を理由に数名の生徒が追い出されると知らされる。

パニックに陥る仲間たちを救うために立ち上がったのは、歌の上手な孤児の少女ソフィア。だが彼女の些細な提案がさらなる事件を引き起こしてしまい……

 

 自分自身で在るということ、心のままに生きること。

「そんなささやかな幸せを、誰も傷つけずに得ることはできないの?」

皆で笑い合える明日を勝ち取るため、音楽の力を信じた子供達が今、立ち上がる。

 

🩰場所

川崎市アートセンター アルテリオ小劇場

 

🩰日時

2024年3月16日(土) 16:30

17日(日) 12:45/18:00

18日(月) 12:45