こんにちは。『ここに生まれついて』で脚本を務めました大山です。前回のブログから非常に日が空いてしまいました、すみません。


タイトルの『シェイプ・オブ・ウォーター』はアメリカ映画のタイトルで、この映画は僕が映画を好きになるきっかけになった映画です。いまこの映画を見たらどう思うかちょっと怖くて暫く見てないですが、大学一年生の僕にとって面白かったことは確かで、この映画が全てのきっかけになったことも確かです。


言葉の話せない女性と人外の恋を描いたこの映画(特にラストシーン)を見た時、僕はなんだかすごく救われたというかそんな感じの感覚を持ちました。救われたというとすごく胡散臭いですけど、そうとしか言いようのないもので、それはなんとなく息苦しい毎日の中でその息苦しさが軽くなる感覚でした。


何となく漫画とか小説とか、なんでもいいですけど、そうした一般的に物語媒体みたいにされるものは高校の時から好きでした。でもそれは『3月のライオン』とかで言えば、優しい人情味あふれる世界へと逃げ込むであったり、『夜は短し歩けよ乙女』とかで言えば、夢みたいな世界へと逃げ込むであったりで、フィクションの世界への逃避行が目的でした。


ただこの映画で味わった感覚は逃避行にとどまらないもので、それまで味わったことがなくて、現実の中に現実に目を背けずに解放区を見つけたようなそんな感覚でした。そんな感覚がもっと欲しくて僕はここから映画にのめり込んで行きました。


暫くはこんな感覚だけを求めて映画を見ていく中で、様々なスタンダードを知ったので、今はもうそんな解放の感覚だけを求めて映画を見ているわけではないのですが、段々と掴めてきた漠然とした解放の感覚を自分でも生み出してみたくて色々な作品をSTEPSや外で作ってきました。


生活しているとどうでもいいことばかりだし、面倒くさいカスみたいなことばかりですが、本当は全部どうでも良くなくて、どうでもいいと思いたいだけな中で、解放の感覚とはそうした存在に対する重力めいたものから解き放たれる感覚でした。


ずっと抽象的な話で何も言ってるのかよくわからないと思うんですけど、僕が今回もずっと意識していたのはこうしたことでした。


完璧に描くことができたとは思わないですけど、自分としてはすごくいい作品が作れたなと思ってます。是非見てみてください。


楽回でみた劇中劇へと向かうシーンは

間違いなくこれまで見てきた景色の中で最も美しいものの一つで、この先も僕が見る景色の中で最も美しい景色の一つだったと確信しています。この公演を作り上げるのに協力してくれたみなさん、見にきてくださった方々、ありがとうございました。


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公式YouTubeチャンネルにて配信中

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STEPS Musical Company 第66回本公演 『ここに生まれついて』


脚本 大山陽平

演出 斎藤航太


▷あらすじ

スランプに陥り、故郷の町へと逃げ帰ってきた駆け出しの劇作家アキ。

ところが、憂鬱に浸るアキをよそに友人たちは「天才脚本家」の帰還に大盛り上がり。アキは地元劇場の活気を取り戻したい彼らから新たな劇の創作を頼まれてしまう。

スランプ真っ只中、依頼に全く気乗りしないアキであったが、シンガー志望のうるさい同居人トトの登場、町から出たスター女優ジーナの帰郷、そして幽霊(?)の少女ナナとの出会い、とどんどん騒がしくなる日常に逃げ出す機会を逸していく。

しかしナナと次第に惹かれ合っていくアキはやがて一つの劇を思いつく。


クリスマスでの公演に向け沸き立つ町。その一方で、アキとナナの恋は思いもよらぬ方向へと向かいはじめる──。


「君を夜から連れ出そうとしたんだ」

「なら今ここで、私と一緒に逃げ出せる?」


▷出演

伊東和真 徳田百々香 大洞紗優香 小蔦柚歩 室井剛喜 高梨結衣 鈴木こころ 杉原弥奈 大江光輝 大石田倖太 前田和奏 安立琴音 漆畑帆南 長谷川万芳子 池尾京 島田晴野 山本治之進 中村毬白