(「その2」から続く)
第3が、「コンプリメンター」である。「コンプリメンター」(complementors:補完的生産者)とは、企業Aにとっての競合企業というよりも、補完的な製品やサービスを提供する企業Bのことをいう。コンプリメンター企業が提供するものは、企業Aの製品やサービスを拡張し、消費者にとってより魅力的なものにする。例えば、ソフトウェアとハードウェアの会社が協力して、顧客体験を向上させることがあげられる。
あるいは、自動運転車「アップルカー」の製造・販売に乗り出すと噂がある米アップルの例をとろう。アップル自身は自動運転と車載電池に関する技術を提供し、組み立ては他社に委託するとされているが、組み立てを担当する企業は、アップル社にとって、コンプリメンターに該当するといってよい。
私たちがインタビューしたとき、ネイルバフ博士が「コンプリメンターという要因は、『5つの競争要因モデル』の6つ目の要因である」と説明してくれたのが強く記憶に残っている。
では、記事の中で、ネイルバフ博士がどのように語っているのか、紹介しよう。
「『コーペティション』について考えるとき、ほとんどの戦略論は、競争相手を打ち負かし、大儲けすること、つまりビジネス・アズ・ウォーに焦点を合わせている。多くの人は、ゼロサムゲームのような考え方をしている。
ビジネスの競争原理を否定するものではない。しかし、ゼロサム論では、より大きなパイを作る可能性がなくなってしまう。」
ネイルバフ博士は、2020年代に入っても、ゼロサム論的な競争戦略を考えている経営者が多いと指摘しているのだ。
「ライバル、つまり競合企業と協力することはとても、重要であるにもかかわらず、あまり理解されていない。同様に、人々は、競争力のある製品や代替品に注目するが、実は補完することで自分のやっていることの価値が下げずに、より高めることができることを理解していない」
「私の仕事の多くに共通するテーマは、『価値の獲得』(capturing value)と『価値の創造』(creating value)という2つの中核的な活動に焦点を当てることだ。
『価値の獲得』は基本的に競争的である。『価値の創造』は、基本的に協力的である」
ネイルバフ教授の発言から、教授は。「コーペティション」(co-opetition)という媒介にして、「価値の獲得」と価値の創造」という2つの側面を追求していたことが理解できる。
(「その4」」に続く)
