
アナスタシア・レング Anastasia Leng Hatch CEO
2015年1月28日 インタビュー実施
工芸品専門オンラインモール:Hatch
「ハッチ」(Hatch)の共同創業者。同社はカスタムメイドの日用デザイン用品(デザイナー商品、アクセサリー、キッチングッズなど)を専門的に取り扱うネット上のマーケットプレイスを運営する。「ハッチ」を創業する前には、5年以上、グーグルに勤務する。グーグルの本社(マウンテンビュー)で、プロダクト・マーケティング・マネージャーとして活躍。Google Voice、Google Chrome、Google Walletなどの技術開発の初期段階にも関与。ペンシルベニア大学卒。大学では心理学、社会学、フランス語の3つを専攻。アメリカに移って来る前に、ロシア、ベトナム、バーレーン、ハンガリー、フランスなどにも居住。
1 私(ガブリエラ)の母校であるペンシルバニア大学(PEN)で、心理学を専攻したのち、あなたはグーグル社の新規ベンチャー事業部門に勤務しました。そこで、新規企業のプログラムの実施や新製品開発に関与しました。そのような仕事に5年携わったのち現在の「ハッチ」(Hatch)となる企業を立ち上げました。このようなキャリアは計画したものですか。あるいは、起業家になるという願望が、大学での専攻やグーグルでの経験をきっかけにして、徐々に大きくなったのですか?
明らかに私のキャリアの展開は計画したものではない。グーグルで、自分が初期段階のプロジェクトや製品に興味を示す性格であることを悟った。既存のプロジェクトで前任者の仕事を引き継ぐのではなく、計画図がないようなまったく新規のプロジェクトに携わるのが好きだ。私が持っている起業家精神は、グーグルに影響を受けていると思う。グーグルでの最後のプロジェクトは、世界を視野に入れた起業家支援のためのセンターを立ち上げることだった。そこでは、南アフリカのアクセラレーター(新規企業の立ち上げのための支援組織)からスタートして、通称「キャンパス」と呼ばれるロンドンの中心的な拠点の設立で頂点を極めた。その仕事に携わる過程で、企業を新規に立ち上げ、また、ゼロから事業を構築するような素晴らしい志をもった人々と会うことができた。私は、彼らを通じて「起業家病」に感染したのだと思う。
2 自分一人で起業するのではなく、どうして、ライアン・ヘイワード(Ryan Hayward)氏と共同で起業することを決断したのですか。あなたの会社のなかで、誰が何を担当していますか。どのように重要な意思決定がなされているのですか。株式、つまり所有権はどのように分割されていますか。重要な課題はどのように解決していますか。
私とライアンは、最初から共同で起業することを決めていた。というのは、私たちは、グーグルでお互いを知っており、その前に、ペンシルベニア大学でも知り合いだった。あなた(ガブリエラ)と同じように、彼も、同窓生なのである。ハッチの起業に伴う興奮を共有しながら、それを共同で発展させた。私とライアンは、2012年8月にグーグルを退社した。そのときに、定めた簡単なゴールは次のとおりである。可能な限り迅速に、機能的なプロトタイプ(原型)をスタートして、それを提示して、社員を雇用するための資金を獲得すること。そのプロトタイプを発展させるため、ライアンと私は、共同で、15万ドルの資金を供出した。そのプロトタイプにより、当社は、サーチ&サーチ(広告代理店)、500スタートアップ(500 Startups)、グレート・オークス(Great Oaks)などのベンチャーキャピタル、そして他のエンジェル投資家などから、100万ドルを調達した。その資金を活用して、チームを組成した。現在、当社には6名の社員がいる。
一旦エンジニアが入社したら、私たちはプロトタイプを廃棄し、最初からすべてを再構築した。起業するために、私とライアンは2012年にグーグルを退社した。しかし、企業としてのハッチは、2013年5月にスタートしたと考えている。その時期に、新規バージョンの製品を再スタートさせたからだ。最終的にライアンは、法律を勉強することを決断した。そのため、彼は、約8ヶ月前に当社を去り、コロンビア大学ロースクール(法科大学院)に入学した。現在、私は、唯一残る創業者である。
会社の立ち上げには極めて感情的な仕事が伴う。それは、大きな心理的な負担になる。たとえば、配偶者を含め、誰よりもあなたがやろうとしていることを理解してくれる人。あなたと同じように、膨大な作業や大きな心理的なプレッシャーに対応してくれる人。そうした人が自分の近くにいてサポートしてくれるのは、かえがたい財産になる。企業の初期段階で、共同創業者がいることは大きな力になる。
ライアンと私が事業をスタートしたとき、私たちはお互いにそれぞれの役割を常に交代していた。最初、彼は製品(開発)を担当した。一方、私は、事業運営、資金調達、そしてマーケティングの大部分を担当した。8ヶ月後、最初のプロトタイプが軌道に乗ったので、私たちは役割を交代した。数名のエンジニアが入社したことにともない、私が製品(開発)を担当し、ラインはマーケティングを担当することになった。私たちは、お互いの責任のなかで、それぞれある程度の裁量権をもった。もちろん、大きな意思決定を行う場合は、共同で判断した。マーケティング戦略に関しては、最終の決定権はライアンがもった。彼が必要だと考えたとき、私のところにきて、情報を提供してくれた。同様に、私は、ジョン・バイ(John Bae)とともに、製品やエンジニアリングに関する意思決定を行った。ジョンは、当時、エンジニアリングの責任者で、現在は、当社での私のパートナーである。
ライアンの退社により、業務の遂行がより難しくなったものと、より容易になったものがある。というのは、ラインと私は、対等のパートナーだったため、ときに、社員たちは、ある問題で、私と彼のどちらが責任者なのか判断するのが難しい場合があった。あたかも、子供が自分のほしいものを父親から得ることができずに、次に母親のところに行くようだった。社員たちは、私から満足な回答が得られないときは、ライアンのところに行った。しかし、現在、社員たちは、私が最終の意思決定をすることを知っている。社員が何をすべきかよく分からないと思えば、明確な答えを求めて私のところにくる。このような点において、ライアンの退社は、チーム内に意思決定の明確さをもたらした。
ライアンの退社の負の側面は、チームに対する感情的な影響である。すべての社員は、私とライアンの両者をチームとして最初から知っている。共同創業者の一人が去ることは、すべての者にとって心が痛む経験である。
3 御社のビジネス・モデルと事業運営について説明してください。具体的に、どのように利益をあげているのですか。サプライチェーンはどのようになっていますか。御社に似ているという意味で、競合企業はどこですか。アマゾンのような大規模な小売企業は脅威だと考えますか。競業他社とどのような点が異なっていますか。競業他社に対して、具体的にどのような競争優位を有していますか。
当社ハッチとはどのような企業か、当社のビジョンは何か、その背景を説明することから始めたい。当社のビジョンは、インタラクティブ(双方向)で、カスタマイズ化されたショピングの経験を中心に展開している。そうしたショッピング経験は、顧客が、自分の嗜好を取り込んだ商品を作り出すために詳細を調整できるというものだ。こうしたアイデアの起源は、次のような自分の認識にもとづいている。すべてのショッピング経験を通して、顧客は、あなたが購入したいと検討する商品に関して、イエスかノーの二者択一の決定をしなければならないということだ。
ハッチは、こうした限界を超越する仕組みを提供している。それを可能にするため、当社は、次のような人々と提携している。工芸品作者、工芸会社、芸術家。こうした人々は、自分たちのデザインに顧客の個性や希望を取り込むことにより、(通常商品に比べ)2倍の差別化(もともとのデザイン性に、顧客の個性・希望を取り込むという意味で)に伴う優位性を生み出している。ハッチで特集される商品のすべてが、顧客の嗜好によって決定される最終商品に向けての出発点になっている。顧客は、その商品に自分の個性を反映させるために、材料、色、サイズ、形を変更することができる。
当社の事業に最も類似した競合企業はどこかという質問に対する一般的な答えを示そう。当社は、あらゆるオンライン販売企業と競争している。なぜなら、顧客がオンラインで買い物をするとき、「私はこのオーダーメイドの商品がほしい」と考えているのではなく、「私はこの商品がほしい。私は、この商品を、私の希望にピッタリ合った商品を提供する企業から購入する」と考えている。そうした意味において、当社は、アマゾン社を含めすべてのオンライン販売企業と競合している。
ミクロ(微視的)の規模では、ハンドメイド商品の総合的なマーケットプレイスであるetsy.com(エッツィー)が評価を得ている。しかし、当社にとって、「ハンドメイド」(手作り)という点は、差別化のポイントになっているのではない。当社の関心は、メーカーが提供できる個性化とオーダーメイド(カスタマイズ)とそのメーカーの質にある。その意味で、当社は、より「精選」されたマーケットプレイスである。当社のサイトで販売が許可される前に、すべての商品は注意深く調査される。当社は、競合他社のサイトでは手に入れることができない商品と顧客エクスペリエンス(経験)を追求している。
4. あなたと共同創業者に加え、ハッチには何人の正社員がいますか?社員数だけでなく、売上高、利益率、資金調達、商品開発の面で、次の3年から5年の成長目標をどのように考えていますか。
当社が提供している製品と顧客体験は、事業の国際的な拡大に適しており、理想的だといえる。ヨーロッパやアジアについていえば、両地域の文化は、職人と職工の歴史をもっている。当社のマーケットプレイスは、そうした製作者を市場の最前線に押し出し、世界中のユーザー(顧客)とつながることを可能とする。したがって、ハッチのビジネスは、日本、英国、イタリア、フランスのような国にとって魅力的に見えるだろう。こうした理由により、ハッチは、国際的に事業を拡大したいと思っている。しかし、そうした事業展開は、商品単位やビジネス経済的な面で、第一のマーケットである米国において、当社のビジネスがうまく機能することを証明したのちのことになるだろう。現在、18の異なる国の製作者(メーカー)が当社のウェッブに登録している。しかし、収入の大部分は、アメリカ市場から得ている。
当社は、登録する製作者(デザイナー、職工)が一番多いマーケットプレイスを目指しているわけではない。むしろ、最高の製作者が登録するマーケットプレイスを目指している。当社は、世界中で、成功している芸術家、職工、製作者を探し出し、こうした人たちが事業で成功するように支援したいと思っている。ハッチがこういう人たちの収入にどのくらい貢献しているか?ハッチは、こうした人々の会社の成長をどのように支援しているか?そうした点が、当社の自己評価のポイントである。次の3年から5年の当社の目標は、当社のサイトで、登録したデザイナー(芸術家)が自分たちのビジネスを継続するために十分な利益を獲得することを支援することである。そうしたデザイナーたちが当社の中核的な存在である。彼らの存在が、当社の存在理由だといってよい。
当社は、当社のウェッブサイトで自分の作品を販売するすべてのメーカー(製作者)に対して、販売取引への統一的な手数料を課して、収入を得ている。オーダーメイドを可能とする商品のパーツを分割するプロセスは、伝統的なオンライン小売企業よりも、当社はより効率的なプロセスをとっている。現在、ほとんどの芸術家や職工は、商品のセットを作成し、それをオンライン小売店で販売する。そうした商品は、当初のままで(形、デザイン、カラー)販売される。
当社は、より質の高い選択肢を提供している。つまり、作者が、オンランイン上で自分の作成した商品を紹介し、その商品のオーダーメイドの方法を示している。商品が購入されるまで、製作者は、その商品の製作を始めない。そのように、ハッチは、製作者が材料や商品の在庫を最小にすることを可能にしている。すべての商品が売上に直結している。ハッチのプロセス全体が、従来のオンライン小売業者と取引することに比べて、ずっと経済的で効率的になっている。製作者と話しをすると、彼らはハッチのこうしたシステムが好きだと言ってくれる。従来型の小売業者に商品を卸しても、製作者はほとんど利益を上げることはできない。むしろ、製作者は、商品を卸すことは、自分のブランドの認知率を高める戦略だと認識している。小売業者への卸売は、ほとんどの場合、経済的な損失になっている。
ハッチは、企業として、現在、ユーザーの購入取引ベースで、収支が合うように取り組んでいる。より具体的にいうと、顧客を獲得するためのすべての費用を調整したのちに、顧客の最初の購入の時点で、収支が一致するようにしている。さらに、月ごとの総売上に着目し、それが当社のサービスの浸透率の基準になっている。事業を国際的に拡大する前に、当社は、月間の総売上ベースで、75万ドルから100万ドルを達成する計画をもっている。
5 御社の組織文化はどのようなものですか?
当社の企業文化は、とても楽しいと表現できる。社員はよく笑う。社員同士は、家族のように親密だ。社員はお互い、純粋に好き合っている。ビジネスの多くの課題については、意見が一致せずに議論する場合もあるが、そうしたディスカッションを一緒にやることにも社員は楽しみを見出している。社員全員で、1週間に1度運動し、シェイプアップするという新年に設定した目標を達成するために努力しています。数人のメンバーで読書クラブも作って、月に1度集まって、ワインを楽しみながら本について語り合っている。私は、個人的に、当社のチームの各メンバーに親近感をもっている。当社は、このチームを構成するメンバーがいなければ、当社は現在のような形になっていなかっただろう。彼ら(社員)は、私や当社にとって素晴らしいチームだ。
当社が成長しても、現在の企業文化を維持できればと思っている。当社の価値観を共有できず、企業文化にうまく適合できず、当社を去らなければならなかった社員もいた。一方、現在在籍する社員たちは、当社のビジョンを信奉してくれている。もちろん、企業は、典型的に成長するにしたがって、官僚化していくものだ。そうした進化(官僚化)は避けることはでいない。しかし、地に足がついた現実性、賢明さ、謙虚さ、勤勉さといった中心的な組織文化を維持することは不可能なことではない。
6 ハッチは、最近、ベンチャーキャピタルから資金調達を行ったと認識している。次の投資ラウンドはいつを予定していますか。御社のウェッブサイトによると、500 Startups、サーチ&サーチの投資ファンドに支援を受けています。さらに、世界最大級の宿泊施設予約サイトAirbnb(エア・ビー・アンド・ビー)のデータサイエンス部門のトップやデザイナーズ商品に特化したECサイトのFab(ファブ)のCOO(最高執行責任者)が、ハッチのアドバイザーとして名を連ねています。その背景を教えてください。
当社は、今日はで、150万ドル(1.5億円)の資金を調達した。最初に、(シードラウンドとして)当初の投資家から100万ドル(1億円)を調達した。その後、当社の内部で資金の拡大を図った。第2投資ラウンドは、外部の投資家は対象外とした。シリーズA投資ラウンドは、ここ6ヶ月から8ヶ月の間で実施したい。そのためにも、現在の目標を達成することがとても重要である。
コンピューターを利用してオーダーメイドの商品を製造する「マス・カスタマイゼーション」(Mass Customization)が大きな流行になっているため、こうした投資家はハッチに興味を示しているのだと思う。しかし、多品種の商品を対象に水平的に「マス・カスタマイゼーション」を実施した企業はない。ナイキ社は、シューズの特注化サービスと提供している。ラルフ・ローレン社は、ポロシャツのストライプのオーダーメイドを実施している。しかし、日常生活に関係する多様な商品を対象に、そうしたオーダーメイドを実施している企業は存在しない。投資家は、当社が「多様な商品のオーダーメイドのサービスを提供していること」「そうしたサービスに伴うプロセスの規模を、製作者を通じて拡大していること」に関心をもっているようだ。
もっと一般的にいえば、多くの人々が、「製作者の時代」の到来を現実の現象として信じている。3Dプリンターやレーザーカッターのような製造機器の低コスト化により、より多くの製作者や職工たちが、利益を獲得できるビジネスに関与することを目撃するだろう。こうした人々は、単に商品を展示するのではなく、最終的に販売できる商品を作成し始めるだろう。こうした潮流の最初の波をとらえ、何を製作すべきかを決定し、最初の販売ショップをクリエイティブなアーティストが開業することをサポートする。投資家たちは、そうしたことを、当社に試してもらいたいと考えている。
3番目の要素は、それは最後の要素でもあるが、これは、チームに関係している。わたしはグーグル出身だ。チームの他のメンバーは、アイビーリーグ(米東部名門大学)を卒業している。彼らは、優秀で、経験も豊富である。ベンチャー企業の初期段階においては、事業コンセプトが成功することを証明するものは何もない。成功を証明するデータも存在しない。そのような状況においては、初期チームがとても重要になる。投資家は、当社のチームは、ハッチを成功させるために、可能なことをすべて実施すると判断している。
個人的な将来計画に関してだが、私は、大企業によってハッチが最終的に買収されることを目標に始めたわけではない。私の目標が、将来快適な生活をするために蓄えを増やすことであったなら、たぶんグーグルに残っただろう。私は、自分が思うような企業を立ち上げたかった。だから、ハッチを起業した。ハッチを通して、私自身の価値と事業を行うという自我を実現したいと考えた。こうした理由により、ハッチの規模を拡大し、独立した企業にしたいと思っている。
しかしながら、長期的に見て、当社が持続可能性を維持することができない現実に直面するかもしれない。その場合は、当社の商品、ビジネス・モデル、チーム「ハッチ」は、より規模の大きな会社の中に入って、現実的な価値を付加することを望んでいる。もちろん、最悪のケースとして、私たちが注ぎ込んだ血、汗、涙などすべての努力が無駄になり、完全し消え去ってしまうことも想定できる。そうした結果を回避すべく当社の持続可能性が維持できないときは、私は、当社が買収される選択肢を希望するだろう。
7 グーグル社のCampus(キャンパス)と他の新規企業を支援することを目指す計画を教えてください。日本、あるいはアジアにおいて、グーグルは新規企業の支援のためにどのようなことを実施していますか。
アジアにおいて、グーグルが新規企業のためにどのような活動を行っているのか、私はよく知らない。私がグーグル社にいたころ、同社は起業活動や新規起業の支援活動を開発するためにアジアを拠点とする社員がいたことは覚えている。しかし、そうした活動が現実化する前に私は退社した。
キャンパス・モデルは、よく知っている。これは、ある都市で、ハブ(拠点)を作り出し、起業をする際に必要となるすべての資源にアクセスできるようにする仕組みだ。同じビルの中で、起業家は、メンター(指導者)を見つけ、作業スペースを確保でき、他の情熱的な起業家と一緒にコミュニティーを形成できる。くわえて、法律問題から会計問題のすべてに関して相談できるサービスも利用できる。ロンドンのキャンパス・モデルは実際にスタートし、そのハブ(拠点)は成功例として評価された。同様のキャンパス・モデルは、(イスラエルの)テルアビブ、チェコ共和国、さらに、正確に思い出せないが、最低もうひとつの都市に存在していたと思う。
グーグルは、新規企業に対してかなりの程度深く関与していると思う。事実、「起業家のためのグーグル」と呼ばれるチームを作った。そのチームは、メアリー・ヒミンクール(Mary Himinkool)に率いられていた。私は、グーグルで彼女と一緒に働いた。聡明な女性だった。そのチームは、米国以外の国で起業活動を発展させることに積極的に関与していた。特に、起業家になることが困難な国の起業家(予備軍)を新規起業の世界に導く手法を検討していた。そうした国では、新規企業はアメリカほど羨望の眼差しで見られることはない。グーグルのチームは、起業家を、新規企業を立ち上げるという長くて困難な道に導くことを支援する手法の開発に取り組んでいた。特に、技術産業で典型的に不足している創業者の育成に焦点を当てていた。
8 ハッチを創業し、現在運営していくうえで、あなたは、グーグルで学んだスキル、経営資源、教訓のうちどのような能力・経験を活用していますか?ハッチを創業して以来、どのような教訓を得ていますか?
グーグルは信じられないほど賢明で、優秀で素晴らしい実績をもった人々が集まった企業だが、私が学んだ最も重要な教訓は、ソフト・スキル(対人交渉力)がどれほど重要であるかという点だ。グーグルの社内で個人的に成長し成功することに最も密接に関係している要素は次のものだ。他の社員と関係性を構築すること、チームを率いること。こうしたソフト・スキルは、教科書では決して学ぶことはできない。
私はハッチの運営にあたって、この教訓をしっかり心に留めている。これまでの「小さな勝利」、たとえば、投資家に資金を提供してもらったり、チームを組成したりしたことを考えると、それらは、データや商品ではなく主として人によってもたらされたものであると判断できる。ハッチに参加しているすべての従業員は、入社にあたって給料が減額になっていると思う。当社のすべての社員は、優秀で合理的な人間だ。正直に、そして、透明な方法で他の社員と交流し、同じ目標を共有する。そうした機会が、当社の社人の動機付けになり、当社が達成したすべての実績につながっている。くわえて、グーグルではリーダーシップの多様なスタイルを学ぶ機会も得た。そのため、私は自分のリーダーシップのスタイルを作り上げるために、「いいとこ取り」が可能だ。
ハッチで学んだ教訓は、絶対的に何でもできるときに、優先順位をつけなければならない厳格な状況に自分をさらすことほど、有益な経験はないということだ。その作業は、データと直感との間の絶え間のない戦いのようなものだ。その2つの要素の正しいバランスのための公式は存在しない。したがって、自分自身の公式を研ぎ澄ます必要がある。グーグルでは、もしあなたが何かができない(何かをしない)場合は、その代わりをしてくれる人間が絶対にいる。くわえて、グーグルには、社員が何をしているのかを示す明確な計画図がある。対照的に、ハッチでは、進むべき道は固定されておらず、何でもできる。自分たちがやりたいことに対するビジョンを作成する。それを現実性のある戦術と結びつけ、達成する必要のあるものを決定し、冷静に優先順位を決める。それが、ハッチでの教訓であり、スキルであり、私が次に進むべきときは、これらとともに前進する。
9 ハッチを創業して以来直面した大きなチャレンジは何ですか。3つあげてください。どのようにそれらを克服しましたか。将来的にどのような課題に直面しそうですか。
すでにチャレンジのいくつかについて述べた。そのうちのひとつが、人材に関することだ。どのように、優秀な社員を採用するか。採用はとても難しい。当社は、小規模の企業だが、1人のエンジニアの採用にあたって60人以上の候補者を検討した。最終的に、誰も採用しなかった。こうした状況にともなうフラストレーションにどのように対処したらいいのか。特に、自社が採用した人材の基準を下げなくない場合にそれがいえる。
2番目のチャレンジは、資金を使うことなく、顧客、ユーザー、製作者をどのように獲得するかだ。新規企業は、典型的に、ユーザーを集めるための資金はあったとしても、少額しか有していない。そのため、創造性を維持して、他の多くの広告から生まれるノイズ(無意味な情報)を切り崩すことは大きなチャレンジとなる。
3番目のチャレンジは、企業の成長に関するものだ。新規企業は、常に「成長」という基準で評価される。しかし、企業規模が大きくなればなるほぼ、成長率を維持するために努力しなければならない。当社は、年間ベースで500%の成長率を達成している。月ベースなら、50%から70%である。投資家は、当社への投資に自信をもっている。しかし、ある時点で、当社は、当社が大切に考える価値を犠牲にすることなく、この成長率を維持することはできなくなるだろう。企業が成長するにつれて、成長から、より重要な他の経営指標に移行する戦略を生み出すことが、私が考慮しつづけなければならないチェレンジだ。
10 コンピューターのプログラミングとウェッブデザインは、御社のビジネスの中心だと考えられます。運用面でどのような技術的な困難に遭遇しましたか?そうした困難にどのように対応していますか。
創業者として、私は、十分迅速に対応できていると考えたことはない。当社のエンジニアはとても優秀であり、驚くべき業績を生み出している。しかし、当社は、ボリュームがとても多い計画表をもっている。それには、当社が達成したいと思っているおびただしい項目がリスト化されている。したがって、どんなに迅速に当社が対応しているとしても、常に当社のビジネスのスピードは十分ではないと感じている。
ハッチを創業し、投資資金を獲得したとき、当社のすべての指標は「数字」だったお。成長を数字で示すことが必要不可欠だった。そうした関心により、考えられるEコマースの手法をすべて実施し、サイト訪問者の顧客転換率を高めるための方策はすべて行った。そうした方策を実施する過程において、当社は、自社の強み(ユニークさ)や競合他社と差別化している微妙な差異を見失うことになった。様々な手法で最適化できた月末は、確かに、収入や顧客転換率は情報した。一方で、ハッチがEコマースの競合他社とどのように差異化されているのかは不明確になっていた。ハッチは、競合他社のサイトと同じようになっていた。
2014年末と今年(2015年)の始めから、次の4半期を使って、自社の本来あるべき姿の土台を構築するための方策を実施することを決定した。その方策には、当社を差異化するための人材や当社の土台のためのデザインも含まれている。当社創業以来、初めてブランドの構築ということを検討している。それには、デザイン、戦略やマーケティングの実施が含まれている。デザイン、エンジニアリング、戦略の各要素が密接に絡み合っている。

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また、次のような「アメリカ・ビジネスの最前線を切る!!」をテーマにしたブログも公開しているので、あわせてご一読いただければ幸いです。
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皆さんのビジネスリーダーとしての知識欲をさらに刺激するために、毎月、2回の頻度で、「アメリカ・ビジネスの最前線」を主な対象にして、「アメリカ・ビジネスでいま何が起こっているのか」「どのような最新技術に注目が集まっているのか」「日本や日本製品はアメリカでどのように評価されているのか」といった点について、アメリカ人としての見解を掲載します。日本のメディアでは、日本人による単一的(あるいは一方的)な見解が主張される傾向が強いように思えます。このブログ記事では、「世界には多様な考えがある」ということを日本の読者に具体的なテーマで知ってもらうことを意識しています。日本や日本人に対する外国人の見解、考え方を知ることで、読者自身の世界観を広げ、最終的にはビジネスチャンスにつなげてもらえればと願っています。とりあげてもらいたい「旬の話題」や建設的なご提案など、お気軽に著者までご連絡いただければ幸いです。
ジョセフ・ガブリエラ 博士/MBA
東洋大学
gabriella@toyo.jp
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杉本 有造 博士/MBA
IES全米大学連盟・東京センター
(The Institute for the International Education of Students, Tokyo)講師
gpmalibu@yahoo.co.jp
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