触れるのを忘れてしまったが、猪木は引退後にも私が覚えている限り、2試合だけエキシビジョンマッチを行った事があった。ひとつめは、2000年の3月、メモリアル力道山2にて行われた滝沢秀明戦、そして同年の大晦日に行われた第1回猪木祭りにてのヘンゾ・グレイシー戦である。
しかし、それ以前にも行った事があった。その際たるものは、1995年頃に当時フジテレビの土曜日夜に放映していた「とんねるずのハンマープライス」におけるエキシビジョンマッチである。当然、オークション形式で行われたのだが、今ならYouTubeで一部始終見れるのでそちらをご覧になってくれた方が早いだろう。
この番組は当時ほぼ毎週見ていたので、当然この回も見ていた。猪木信者である石橋貴明氏が司会であり、当然落札者も相当な信者、かつプロレス研究会所属だったというので相当なものである。しかし、いくら研究会所属だったとは言っても所詮は素人、そんな素人相手に試合を成立させ、客席を大いに沸かせる事が出来たのは当然「ほうきを相手にもプロレスが出来る」とされた猪木の力量あってのものである。
最後はローキックの連発から卍固めを決めるという、猪木信者にとっては夢のようなコンビネーションで試合は幕を閉じた。見ている側も非常に楽しめた一戦であったのだが、実は猪木の凄さをさらに実感する事となったのはこの後の事である。これに味をしめた番組は、私が覚えている限りでは橋本真也と、アンディ・フグも同形式のエキシビジョンマッチを行った。しかし、アンディはともかく、橋本は相手の良い所を全く引き出す事も盛り上げる事もせず、叩き潰すだけで終わったかと思う。
もちろん、橋本もプロレスを舐めるなと言う気持ちがあった事は間違いなかったとは思うのであるが、それにしても素人相手に全くプロレスをさせず、叩きのめすだけで終わったのはどうなのか、と思ったものだ。この辺りで猪木との力量の違いを目の当たりにしたものである。そりゃ猪木はプロレスの天才なので、比べるほうが間違っているかも知れないのだが、あまりの内容の違いに唖然とした事も確かである。
それ以外も、Wikipediaを見て思い出したが、高田延彦に対してもオファーがあったものの、プライドの高い高田は「プロレスを舐めるな」と一蹴、代わりにUインター道場1日体験なるものを行った。これも放送は見ていたのだが、Wikipediaを読んでから思い出した。つまりそれだけ印象に残らなかったという事である。