レトロゲーマーが現行ハードを買う一番の理由と言えば、やはり1990年当時までは不可能だったアーケードゲームの完全移植しかないだろう。一応、それに関して言えば、MAMEというPC界最大のアーケードゲームエミュレータが1996年頃から存在していた。ただ、それには色々問題もあったのと、そしてやはりPC上ではなく、家庭用で簡易かつ大画面でプレイしたい、という願望もあり、家庭用の完全移植というのは長らくゲーマーの夢であったのだ。
もちろん、かの「ナムコミュージアム」をきっかけとして、初代PSの時代からそういう動き自体はあった。しかし、ここで言うのはあくまでエミュレーターをベースとしたアーケード完全再現の意味である。当然、その頃のハードではあまりにもパワー不足であり、解像度の件もあってあくまでオリジナルに近い移植にしか過ぎなかった。それを初めて実現したのが、Xbox360のXboxLiveArcadeである。
これに倣い、PS3やWiiにおいてもエミュレータをベースとした移植が続々と発売されていった。しかし、当然セールスが見込める人気作ばかりであり、また当時の家庭用の限界から、せいぜい1980年代までのゲームがやっとであった。その壁を越える事が可能となったのが、2013年発売のPS4とXboxOneである。
前にも触れたが、PS4発売時はゲームにはほとんど無関心であったため、どのような入手状況であったのかはさっぱり記憶にない。ただ、PS3のように後方互換性が一切なかった事から、現在のPS5のように転売屋の餌食になる事もなく、品切れが続いたという事はなかったはずである。むしろ、国内ではセールスが不調という声すら聞こえてきたぐらいだった。
まあ、当時はアーケードもすでに廃れていたし、互換性がなければPSという名前である必要すらない、とすら思っていたほどであったが、そんな2014年の初夏、「ハムスター」社より、アーケードゲーマーの興味をそそるシリーズがひっそりと開始されていた。それが、「クレイジークライマー」を初めとする、記念すべき「アーケードアーカイブス」の立ち上げである。
最新のハードで走らせるにはあまりにも古いゲームであるが、逆にそれがエミュレータベースである事は簡単に予感させた。PS5が発売された今となっても現役のPS4のグラフィック、1990年代までのゲームであればエミュレータで動作させる事はそれは容易であるはずである。そして、ここから今に至るまでの歴史が始まったのだ。