先月初めにTrek Fx3の2019年モデルを遂に購入した事がきっかけとなって、久々にロードバイクにも乗り始めてどちらも現在進行形なのだけれども、クロスバイクが最新のと対照的に、後者は10年以上前にフレームで購入し、自身でコンポを移植して組み上げた赤いマドンSLの2007年モデルだ。
今となってはビンテージとも言えるが、それでも当時の世界最高峰レベルのフレームかつツールドフランスを駆けたフレームである事は間違い無く、今でもホビーユーザーの自分にとっては十分すぎる性能だ。デザインもシンプルな今とは異なり大分凝っており、美しい赤をベースに白と黒のライン、そして何よりトレックのホリゾンタル最後の世代でもあり、そのフォルムの美しさは今見ても惚れ惚れするものがある。
しかし、当然ながらパーツも当時そのままであり、コンポもすでに3世代前となってしまった6600系のアルテグラだ。無論、性能は今でも申し分ないとは言え、11速が当たり前となった今では互換性は皆無。かろうじて10速対応チェーンは現役で販売されているとは言え、他のパーツ、特にデュアルコントロールレバーなどが破損した場合は一大事だ。そこで、4月頃に購入したサイクルスポーツ増刊のロードバイクベストバイに目を通して見ると、Émonda ALR5と言うアルミフレームの完成車が目に付いた。
自分はイタリア信仰的な考えは皆無だし、一度GIANTのOCR2と言うのを買ったのを除けば、スポーツ車は全てTREKだ。それは単に、自分がMTBを買うきっかけとなった1999年公開の映画「メッセンジャー」で、草なぎ剛氏が乗っていた車種がトレックだった事に過ぎなかったが、当時のTREKはそれなりにコスパも良く、またスポーツバイクとしては珍しく、代理店では無く日本法人が存在しアフターケアや流通経路もしっかりしていたため、初の本格的ロードバイクもTREKの1500を選び、そこからはランスの影響もありTREK一筋だ。
そんな訳で、レビューで絶賛されていたÉmonda ALR5購入に心が傾いたのだけれども、正直当時は今ほどハマってはいなかったので、ロードバイクに20万近くつぎ込むのは躊躇ってしまったのと、そしてしばらくして105がリニューアルされる、との話を目にしたため、ひとまず2019年モデルが出るのを待つ事にした。
そして夏頃にお披露目されたが、完全リニューアルされたそのフレームは、まるでカーボンと見紛うほどの美しいフレームであり、とてもアルミとは思えぬほどの代物だった。もちろんレビューでも絶賛されたが、当然興味は湧いたものの購入意欲は正直なかった。何故?それはググれば一目瞭然であるが、色が好みではなかったから。昔は青が好みだったが、例のマドンSLが赤と言う事、そして仕事上赤黒を身につける機会が多いと言う事、そして何より内藤哲也のイメージカラーが赤黒なので、次にロードバイクを買う事があれば絶対に赤、と決めていたからだ。
前年までの3年間、Émondaには必ず赤が含まれていたし、当然来年度もそうだと思い込んでいたから、まさかの紫とシルバーの2色とは思いもよらず、いくらフォルムが美しかろうと、新105を積んでいようと、どうしても買う気にはなれなかったのだ。知らない人が見ればしょうもない理由かと思うかも知れないが、イタリア製のフレームやコンポなどは芸術品と言っても差し支えないほどの美しいデザインも多く、ホビーユーザーからすれば高い金を払う以上、デザイン性と言うのはロードバイクを購入する上でも欠かせない要素のひとつなのだ。よって、どうしても赤でなければ、と言う自分的には、2019年モデルは選択する余地はなかった。
もちろん、デッドストックでもない限り過去のモデルを新品で購入する事は不可能なので、中古しか選択肢はない。アルミと言うのは負荷をかければ必ず劣化するので、その点不安が残るが、素人がそこまで乗り潰すとは考えづらいので、とりえあずそれに関しては目を瞑る事にした。さて、中古となると、手段としてはヤフオク、メルカリ、そして中古最大手のサイクリー、その辺りに目星をつけて出品もしくは入荷されるのを延々と待つ事にした。
さすがに人気モデルだけあるのかそれなりに出回りが良く、割とすぐに2016年の52サイズが出品されると、入札者は私だけで落とす事が出来た。出来ればセガフレードの2017年が良かったが、そのロゴ以外大きな違いもないし、ホイールがグレードアップされさらにペダルやその他諸々のパーツも付いて10万円、となれば見逃す理由はなかった。入金3日後に届いた翌日に、あらかじめ注文しておいた新品のワイヤーをセッティングすると、いよいよその瞬間がやってきた。
前述のよう、私がロードを初めて購入した2005年頃と言えば、アルミは剛性こそ高いものの振動吸収性が著しく低く、快適性は最悪、と言うのが当たり前だった。TREK1500はホリゾンタルフレームだったので、OCR2よりかは大分マシだったのだが、それでも長距離走った後の身体へのダメージは堪えるものがあった。そのイメージが今なお焼き付いているため、インプレなどを読んでも半信半疑ではいられなかったのだが、それだけに乗って数メートル走った瞬間の驚きと言ったらなかった。
カーボンのように魔法のじゅうたんの如き浮遊感こそなかったものの、それまでに自身が体感したアルミフレームの感覚とはまるで違うものだった。確かにゴツゴツしたアスファルトであればダイレクトに伝わるものの、それなりに舗装された道の上であればスムースな事この上なく、何も知らなければカーボンフレームと言われても信じてしまうほどのものだったのだ。
あいにく、その日はフロントディレイラーの位置が上すぎるのに気付かなかった事と、午後雨が降ってしまったので、満足のいく走りは出来なかったものの、ようやく今日境川CRを走る事が出来たので、その実力を十分に堪能する事がかなった。前述の境川CRは神奈川県央県民であれば定番だが、うちからだと大和側の起点まで10キロほどあるので、初めて走ったのは実は最近の事だ。車が来ない区間が多いのでそれは非常に快適なのだが、舗装状態の悪い道が多いため、正直若干アルミではキツかったのは事実だ。しかし、マドンSLも剛性重視で快適性は多少犠牲にしているため、感覚的には「マドンよりかは若干」と言ったレベルだった。
そして、このÉmondaは、私にとってOCR2以来のスローピングフレームでもあった。当時TREKに拘っていた最大の理由のひとつとしてホリゾンタルでなければ嫌だ、と言うのがあったが、すっかりスローピングに取って代わられた今となってはもちろんそんな拘りなどあるはずもなく、むしろどれだけ違うのかと言う楽しみの方が大きかった。のはずだったが、正直乗り降りが楽かな、と言った程度で、はっきり言って他の違いは良くはわからなかった。特徴のひとつに「シートチューブが短いので、空気抵抗が少ない」と言うのがあるが、どこのメーカーもTTバイクはホリゾンタルで揃えているので、いまひとつ説得力がない。剛性も、基本的に剛性の高いフレームばかり乗り継いできたものだから、気になるほどでもなかった。まあ、比較対象が当時最高レベルのOCLVなのだから、仕方ないと言えば仕方がないのだけれども、それでも当然とは言えOCR2や、TREK1500と比べれば、もはや別次元のアルミフレームと言えた。
もちろん、コンポも忘れてはならない。2012年にデュラエースが11速となって以来、ようやく待ちに待った11速、そしてコンパクトクランク初体験だ。当時はまだCCは初心者や脚力のない人向け、みたいなイメージが強く、どうしても抵抗があったのだが、もちろん今となってはそんな考えは微塵もない。グレードは105だが、TREK1500がアルテグラだった事もあって105のコンポはほとんど使用した事がなく、実質これも初体験と言えた。当時から10年近く経ってリリースされた事もあってその性能に期待したが、その期待に違わず素晴らしいフィーリングであり、正直当時のアルテグラ6600に匹敵するのでは、と言うほど素晴らしい性能であった。特にブレーキの効きが素晴らしく、6600よりも遥かに小さい力でストップが可能であり、正直これなら自分にはディスクは要らないな、と思ったものだ。
先述のように、比較対象がマドンSLである以上、当たり前ではあるが正直走行中にやっぱりフレームはマドンの方が良いかな、と複雑な気持ちにもなったりはした。しかし、あくまでÉmondaはエントリーグレード、ロードバイク初心者が多く乗る事になるかも知れないフレームだ。ホイールがアップグレードされていた以上、完全にオリジナルの走行感覚こそ説明は出来ないものの、確かにこれで20万円弱のエントリーモデル、と言う枠でくくったらそれはそれは十分すぎるほどの性能である事は間違いない。少なくとも、ホビーユースなら下手に安いカーボンよりも、良い働きをしてくれるだろう。