テレビはニュース以外まともに見ない私にとっては、テレビ番組や芸能関係はネット、特に2chから得るしかないのだけれども、ここ最近政府の観光立国方針もあってか、外国人に日本は凄いと言わせるような番組が多いと聞く。
まあ、ようは日本のコンテンツは外国でも大人気、海外では日本ブーム、なように、何にも知らない人たちはまんまと騙されてしまうような感じらしいんだけども、アジア諸国、特に中華圏はともかくとして、一度でもアメリカに足を踏み入れたことのある人ならすぐにそんなものはまやかしだと言う事に気付くだろう。
この件は前にも触れたと思うけども、中国語やハングルは割と意識せずとも目に入ってくるのに、日本語は皆無と言っていいぐらい街中では目にしない。これは歴史的経緯の違いであり、どこにでも自分たちのテリトリーを築き上げる前者とは異なり、日本人は現地人に認められるよう必死で働き、当地の文化に馴染む努力をしてきたから、という事らしいが、確かに世界中の日本人街の圧倒的な少なさを考えればそれは納得いく話。
さらに、大抵の日本人は、アメリカに住んで英語ペラペラになりたい、という願望がある訳だから、それを考えたら必然的にやはり日本人同士で絡むのは好ましくない、と考えるだろう。駐在員の家族を除けば。
それはそれで日本人らしくていいな、とは思うのだけれども、反面、日本人街が存在しないとなれば、必然的に日本人である事を最大限に活かせる雇用先が少なくなる、という意味でもある。中国人あれば、仮に英語が話せなくても、合法的なビザさえあればアメリカに無数に存在するチャイナタウンで職を得るのはおそらく難しくはないだろう。しかし、日本人だとなかなかそうもいかない。もちろん、日本食レストランやコンビニもなくはないものの、数や規模からすれば圧倒的にマイノリティーだ。よって、日本人が日本人である活かせる職場は相当に限られてしまう。
若干前置きが長くなったものの、そんな無意識に日本を目にすることのないNYで、日本を思い起こさせてくれる日本人のための場所、それが紀伊国屋書店とブックオフだ。
前者は地下1階が和書のコーナーとなっており、台北のジュンク堂よろしく、一歩踏み入れた瞬間、日本に帰ってきたような錯覚すら覚える。どのぐらい入荷のラグがあるかは分からないが、日本の書店で売っている一般的な本はここでもほぼ手に入る、と言っていい。もちろん、英語関係の書籍は充実しており、アメリカの書店では滅多に見かけないTOEIC関連書ももちろんある。今さら言うまでもないが、TOEICがメジャーなのは日本と韓国だけ、日本語はもちろん、「英語での」TOEIC対策本すら海外では見かける事が少ないため、実はこういう観点からも日系というメリットは生きてくる。
2階の漫画コーナーも、もちろん英語と日本語両バージョンが揃っている。ここはスペース的にそんなに大きくないため、メジャーなものしか置いていない印象があったが、それでも未だドラゴンボールは全巻揃っていた。
和書はもちろん日本で買うよりも高く、洋書も元々の価格設定が高いため、色々購入する事はなかったものの、我々日本人にとってはオアシスのような空間であったのは間違いない。しかし、NYではさほど日本人を見かける事も多くないし、当然日本語を理解出来るアメリカ人なども滅多にいないため、客足という点ではやはり微妙なものがあった。また、ここの地下1階にはドコモUSAのサポートデスクがあるのだけれども、これも本年度いっぱいで撤退してしまうと言う。正直、3Gでは非常に速度が遅く、Googleマップですら使い物にならなかったため、いまいちではあったのだけれども、それでも日本語で契約出来るキャリアがひとつ減る、というのは大きな痛手だ。
そして、紀伊国屋から北に数分歩いて右折すると、黒い看板のブックオフが見えてくる。何故、あの派手な色ではないのかは不明だが、店内はまんま日本のままだ。店内の告知やアナウンスも、日本語と英語のバイリンガルとなっている。1階は洋書と英語版のDVD、ブルーレイのみ、地下が日本語CDとDVD、英語と日本語の漫画のフロアとなっている。しかし、当然日本語のCDなどはアメリカ人は見向きもせず、まばらに日本人客がいるだけだ。英語版の漫画はそこそこ充実しているが、北米版の漫画は異常に高く、新品で10ドル、古本でも5ドルぐらいするため、ここでは何も買う気にはならなかった。反面、DVDはそこそこ安いため、お気に入りのものがあれば買っていった。
また、1階にはビデオゲームも販売しているが、中には日本語版の中古も混ざっていた。最新のゲーム機はもちろん、メガドライブソフトの中古まであったので、相変わらずレトロゲーム大好きな私としては、出来れば詳しいアメリカ人と色々話してみたかったが、あいにくその勇気は出なかった。
前述したように、3ヶ月で戻るのに、わざわざ余計にお金払ってまで和書を買おうとは思わなかったので、滞在中は一冊も買う事はなかった。洋書も、私好みのWWEや野球関係の品ぞろえは良くはなかったので、フォレスト・ヒルズの書店を見つけてからはほとんどそこで物色していたものだったから、あまり紀伊国屋には用がないと言えばなかった。反面、ブックオフでは英語版のDVDが安く購入出来たのと、地下鉄からのアクセスの良さもあって、それだけのためにわざわざ休日にマンハッタンに出る事もしばしばだった。
食べ物に関しては、まともな日本食レストランはべらぼうに高いので、一度も通っていない。代わりに、日本食のコンビニらしきストアがいくつか存在しており、個人的には5番街のセントラル・パーク南付近に位置するダイノブにしばしば通っていた。ここも含めて、どのお店も職場と家からは不便な場所に位置していたので、毎日通う事はなかったのだけれども、前者は一応ヒルトンホテルから徒歩圏内に位置していたので、時間がある時などには良く通っていた。また、日本人店員さんのひとりが可愛く、自分好み、さらに日本人環境でない事から数割増しで可愛く見えたりもしたので、やっぱり日本人が一番だな、としみじみ実感したものだった。
誰しもが異文化体験を目的として海外に住むとは言っても、やはり日本人であれば日本食や日本文化が恋しくなるものだ。一応、SUSHIロールなどはコンビニでも売ってるし、チャイニーズマーケットでも日本のお菓子や、飲み物を購入する事は比較的容易だ。しかし、ある程度まともな日本食となると、どうしても香港や台湾のようにお手軽に、とは行かないので、その部分でNYは多少の我慢を強いられるだろう。改めて、気軽にわずか300円程度から食する箱根そばのありがたみ(小田急線沿線住民限定)が理解出来たものだった。