昨年初めての3DCGアニメとして新作が公開されましたが、名作「カリオストロの城」が4DXで公開されましたので、久しぶりに見ました。

何回見ても飽きない映画ですが、なぜルパン三世というのは世代を超えてここまで支持され続けるのでしょうか。

やはりこの名作の存在というものはかなり大きいと思います。

ルパン三世のオリジナルテレビシリーズは1971年ですが、当初は大人向けに作られていたということもあり、かなりのお色気(?)シーンに子供心にひそかに興奮していました。(キューティーハニーを親に隠れてみていたことも思い出しました)

再放送を繰り返すのち、後で人気が出始め、1977年に2回目のテレビシリーズが訪英開始されました。

個人的にはそれがそれまでのテレビアニメでは考えられない革命をもたらしたと個人的には考えております。

それは以下の2点です。

①オープニングテーマとエンディングテーマをインストにした。

ルパン三世は誰もが口ずさむあのテーマ曲が有名ですが、「アニソン」が一つのジャンルを確立している現在でも主題歌を完全インストにするのはかなり勇気がいるものと思います。しかもまだアニメというものが子供向けであったあの時代にオープニングもエンディングもどちらもインストにしたというのはかなり前衛的であったと思います。

また、これは前年に「犬神家の一族」の音楽を担当したジャズミュージシャン大野雄二を迎え、テレビアニメの音楽を担当させたというのもすごいです。

大野雄二氏の映画、テレビにおける活躍はもう周知のことですが、氏のブレイクのきっかけとなり最も売れたのはルパン三世のテーマとなります。

当時ルパン三世のレコードを買いましたが、完全にジャズのアルバムであり、子供の私にはほとんど理解できなかったです。

②声優を前面に押し出した。

それまでアニメの声優というのはもちろんアニメファンの中では知られていましたが、一般的にはまだまだ裏方であり、エンディングにクレジットされる程度でした。

それがルパン三世ではオープニングで主演俳優さながらに役名と声優名が大きくクレジットされるようになりました。

実写のテレビドラマのような手法でオープニングを演出したことで、アニメのキャラクターへの現実感をかなり感じた覚えがあります。

 

(ここからネタバレです)

 

さて、そこで「カリオストロ」です。

2回目のテレビシリーズの成功で劇場版長編がつくられたのが1978年の「vs複製人間」です。これは私も観に行きましたが、今までのルパンの世界からはかなりSFスペクタクルになってしまい、少しとまどいを感じた覚えがありました。その一年後に「カリオストロ」ですが、それはプロットそのものは現実感のあるルパンらしい内容でしたが、クラリス姫の存在で登場人物のキャラがかなり変わってしまい、結果的にルパンの中ではかなり異質な内容となってしまいました。

宮崎駿氏の画風にもよると思いますが、本来ルパンの持ち味である「スケベな女ったらし」という部分が全くなくなり、かなり真面目な大人として描かれています。

それでも私がこのルパンが好きな理由は、男なら誰でも憧れるそのヒロイズムにあると思います。

過去にカリオストロ城に侵入し、失敗し、傷ついたルパンを、幼きクラリス姫が水を与えてルパンを癒した、ただそれだけのことでもルパンは正に命をかけてクラリス姫を救い出します。

もちろん、カリオストロの秘密であるゴート札や隠された宝物(?)も盗もうとは考えていたかもしれませんが、ゴート札は銭形に任せ(要するに警察に渡した)、宝物も最後クラリスを開放するという条件で伯爵に渡そうとします。

ルパンにとって最優先順位はクラリス姫であり、多分次元も五右衛門もそこは同調していたのだと思います。(不二子だけはちゃっかりゴート札の原板をもっていきしまたが)

命をかけて美少女を守る、かなりべたなストーリーではありますが、守るべき相手に対し自ら「泥棒」と名乗り、悪党を「魔法使い」と表現することでクラリス姫を自分のほうに引き込んでいくあの演技がかったセリフ回しは何度見てもかっこいいです。

ただ、それによってルパンは最後は予想外のものまで盗んでしまうのですが,,,

 

ルパン三世はもはや国民的な人気者です。

ルパンの人気の秘密は、もちろん宝物を様々なアイデアで盗んだり、その過程で悪党を追い込んだりしたりするのがあるとは思いますが、もう一つの理由にその徹底したヒロイズムにあると思います。

世界的に指名手配をされる稀代の大泥棒でありながら決して悪人ではない、ワルサーP38を持ちながらも盗みには決して使わない、でもここぞという時はそのすさまじい集中力で目的達する、あと関わった人は決して見放さず全力で助ける、正に男の理想です。

ルパン作品の中で最もそのヒロイズムを前面に押し出しとのがこの「カリオストロ」ではないでしょうか。

 

あと、もう一つこの映画の大きな価値はクラリス姫の存在です。

アニメ美少女好き、ロリコン好きだけではなく、全てをかけて守るべき存在としての女性を求める男性(及びそういう存在にあこがれる女性)の心をわしづかみにして、アニメ史上に残る美少女キャラとなりました。

でも、結局クラリス姫は、後のナウシカやシータにつながるので、宮崎駿氏の好きな女性像なのでしょうね。

 

さらにこの映画の価値を高めているのはその択一なアニメ技術です。

今の技術からすれば大したとこがないかもしれませんが、当時の技術からすればかなり高いものであり、特に最初のほうにあるクラリス姫を助けるカーチェイスのシーンは何度みてもすごいの一言につきます。

 

ただ、この映画に一つ疑問があります。

どうして不二子は東洋人なのにカリオストロに潜りこむことができたのか?

これ、アニメのマジックで、実写ならバリバリ違和感あったと思います。

 

最後に、この映画宮崎駿であるので、かなりマイルドな図柄だし、色っぽいところはないし、わざわざルパンは敵が死ぬところをクラリスにみせず声だけで表現して残酷なシーンも極力使っていないにも関わらず、最後の時計台でカリオストロ伯爵が死ぬシーンは、想像したらかなりえぐいです...

結構宮崎駿氏も残酷ですね。