さい帯血(臍帯血)って何?何に使えるの? | 私的バンクでさい帯血保管体験記

私的バンクでさい帯血保管体験記

2010年10月に第一子を出産しました。私的バンクにさい帯血保管を依頼しましたので、依頼から採取、保管までの実際をお伝えします。

■さい帯血って何?


さい帯血(臍帯血)とは、お腹の赤ちゃんとお母さんをつないでいるへその緒(臍帯:さいたい)と胎盤の中の血液のことです。


さい帯血は、出産の時に赤ちゃんと切り離されたへその緒から採取します。

採取には、針とチューブが付いた血液バッグを使用し、5分弱で完了します。

赤ちゃんが生まれてへその緒が切られたら、胎盤が剥がれて出てくる前にへその緒に採取針を刺して、血液バッグに採取します。


針はへその緒に刺しますし、血液バッグを下方に置くことで、高低差による重力で自然と血液が入っていきますので、採取の際、お母さんには痛みや危険は一切ありません。

もちろん、赤ちゃんは既に生まれてへその緒も切られた状態ですから、さい帯血採取に関して赤ちゃんにも影響はありません。



■さい帯血って何に使えるの?


さい帯血には、幹細胞(ステムセル stem cell)と呼ばれる、身体の様々な種類の細胞のもとになる細胞がたくさん含まれています。この幹細胞が、いろんな病気の治療に有効なのです。


既に治療としてさい帯血から採取された幹細胞が使われている病気には、以下のものがあります。


【血液疾患】

- 白血病

- 悪性リンパ腫

- 再生不良性貧血


【その他の疾患】

- 先天性免疫不全・代謝異常


まもなく臨床研究(厚生労働省認可のもと、新しい治療法が安全で効果があるかどうかを、了承を得た患者に治療して確認する研究)が開始される病気には、以下のものがあります。


- 脳性麻痺

- 脳損傷

- 水頭症

- 低酸素虚血性脳症

- I 型糖尿病


今後治療が期待される病気には、以下のものがあります。


- 脊椎損傷

- パーキンソン病

- アルツハイマー病

- 心筋梗塞

- 末梢循環障害

- バージャー病


※アメリカのデューク大学では、脳性麻痺や低酸素虚血性脳症、先天性水頭症、急性脳損傷(溺れ、外傷)、心筋梗塞、脳梗塞に対する臨床研究に既に取り組んでいます。


将来的には、再生医療(病気や事故によって失った、または弱ってしまった身体の一部や臓器を作り出す)への応用も見込まれており、既に血管、角膜、皮膚の再生が現実のものとなりつつあります。


また、さい帯血に関する情報は日々更新されています。最新の情報はこちらのステムセル研究所のサイト で是非確認して下さい。

■どうしてさい帯血なの?よく聞く骨髄移植と何が違うの?


上記の病気は、別にさい帯血から取れる幹細胞でしか治すことができないわけではありません。


幹細胞は骨髄や末梢血(通常の血液)などからも採取することができますが、その採取には様々な障害があります。(後述の【骨髄移植と末梢血幹細胞移植のデメリット】参照。)


さい帯血にはそういった障害がなく、また、生まれたての新鮮な幹細胞を多く含み、採取も簡単で安全に行えるために注目されています。



【さい帯血のメリット】


さい帯血のメリットその1:生まれたての新鮮な幹細胞を豊富に含む

さい帯血から採取される幹細胞は、骨髄や末梢血から採取できる幹細胞に比べて生まれたてで幼若な状態です。

そのため、骨髄や末梢血から採取する幹細胞より未分化なので、移植可能なHLA型(白血球の型)の範囲を骨髄移植や末梢血幹細胞移植よりも広げることができます。


さい帯血のメリットその2:家族への適合確率の高さ

さい帯血は本人はもちろん、親兄弟も型が適合すれば使用することが可能です。他人同士だと数万から数千万分の1の確率でしか一致しないHLA型ですが、親兄弟は高い確率でHLA型が一致します。(赤ちゃんの両親は約1/1000、赤ちゃんの兄弟姉妹は1/4の確率です。)


さい帯血のメリットその3:採取時の安全性および簡便性

さい帯血を採取する際には、赤ちゃんはもちろんお母さんにも一切の痛みや危険はありません。

採取にかかる時間も5分弱と短く、追加で麻酔や入院が必要になることもありません。



【骨髄移植と末梢血幹細胞移植のデメリット】


骨髄移植の障害その1:提供者の生活活動および時間的拘束

骨髄の提供は気軽にできるものではありません。

骨髄の提供が決定してから、実際に採取が完了するまでには早くても2ヶ月、平均すると5~6ヶ月の期間がかかります。この間、何度も病院に足を運び、各種検査や採血などを数回行ないます。

また、採取日が近づくと喫煙、妊娠、海外渡航、スポーツなどの制限があります。


骨髄移植の障害その2:提供者の身体への負担と死亡のリスク

骨髄は胸骨や腸骨から採取しますが、その方法は痛みや苦痛を伴います。

局所麻酔(または全身麻酔)をして、骨に穴を開け、そこに注射針を刺して骨髄を吸引します。

吸引の際の痛みや圧による不快感は個人差がありますが、決して楽なものではありません。

皮膚には2~6ヶ所の穴をあけ、1回に数ml~十数ml程度の骨髄液を注射器で吸引します。

これを何度も繰り返すので、最終的に骨盤には数十ヶ所から百ヶ所以上針を刺すことになります。


採取する骨髄液の量は、患者の体重kgあたり15mlが目標です。患者が50kgの場合、750mlが目標になります。


また、骨髄採取や麻酔に伴う重大な事故としては、過去世界で計4件の死亡事故が報告されています。(内1人は日本で発生しています。)

その他の事故としては、以下のような例がありました。


- 気管チューブを入れる際に前歯を傷めた

- チューブを入れる刺激によって喉頭に良性の腫癌ができ、手術により切除した

- 骨髄採取用の針が折れて、皮膚の一部を切開して取り出した

- 全身麻酔覚醒後、一過性の左半身麻痺を生じた(その後、回復)

- 採取終了後、後腹膜血腫を生じた(その後、回復)

- 骨髄採取後のドナーがC型肝炎を発症した(その後、治癒)


このようなリスクがあるため、日本骨髄バンクを運営している財団法人骨髄移植財団では、骨髄バンク団体傷害保険に加入しています。


末梢血幹細胞移植の障害その1:提供者の身体への負担

提供者は、造血幹細胞を増やすG-CSFという薬を4~5日注射します。(1日2回の皮下注射)

その後、血液中に流れ出す造血幹細胞を成分献血と同様の方法で採取しますが、成分献血の際に気分が悪くなったり意識を失ったりする「血管迷走神経反射」と呼ばれる反応が起こる可能性があります。

また、G-CSFの投与により、G-CSFに対するアレルギーによると思われるショックといった重大なものから、尿酸値上昇、血清クレアチニン値上昇、CPR値上昇などといった軽度の副作用がみられることがあります。


末梢血幹細胞移植の障害その2:G-CSF投与の長期安全性の未確認

G-CSF投与の長期安全性は今現在不明です。

そのため、提供後5年間におよぶ中長期フォローアップがあります。