「ええ、ええ。大人だって泣くことはあるんですよ。いちいち泣いていたら、身が持たないものだから、気持ちに硬い甲羅を纏うようになってしまいますけどね。剥がしてみたら、治りかけのかさぶたの内側みたいに、じくじく傷んでいるんだと。そんなとこ見せたら、カッコ悪いと思ってるんですかね。怒ってるみたいな、不機嫌な顔してる人は、本当には怒ってるんじゃなくて、しかめっ面して泣くの我慢している、小さな子供みたいな感じなんじゃないですか。
だいたい、何か人に優しくされたりすることが少なすぎて、優しくするのが実は簡単なことなのを忘れてしまって、ちょっとでもそんな言葉投げ掛けられたら、泣きたくなるなんて、ささやかなことで事足りる、やすいいきものだと思うんですよ。

目にゴミが入ったり、一ミリにもならない棘が刺さったりして痛かったんなら、それだって泣いてもいいんじゃないですかね。
ぎゅっと目をつぶって、痛くするものが去るのを待つんで、いいんですよ、きっと。
泣けば、長い時間をかけて積みあがった氷山みたいな冷たい気持ちもゆっくり融けるのだから、悪いものじゃない。
だから、大のおとなが泣いてたからって、そんなに怪訝な顔をしないでいいんですよ。

それから、きみが泣きたいときがあれば、まあ、その時は思い出してほしいと思ってる人間がいるんだってこと伝えたいと思ったんですよ。」