今回は完全に自分が紙に日記を書いてる口調で

ブログに残そうと思ったので、

いつもと違う雰囲気で、少し長めですが、

小説だと思って

よかったらお楽しみください*

 

因みに、これを下書きしたの随分前で、ブログにアップするかとっても迷ったけれど、

久々に心に残る日だったので、アップすることにしました!

 





 

住所録を買った話。



 

 

* * * * *

 

ふらっと、街を走ると小さな通りに明るい看板の中古屋さんが見えた。

 

ガラクタや、用途の分からない品物が置いてあり、貴重な可愛らしい洋食器もあり、

それでいて

いつからそこにあったかも分からないような商品すらある。

そんな中古屋さんが元々好きだったので、

特に欲しい物があるわけではないが、通ったついでにそこへ立ち寄ってみた。

 

そのお店は綺麗な作りで、人が多いわけでもなく、

店内は照明のせいもあってか全体的にのぺっりとしていた。

 

比較的ゆっくり店内を回り、最終的には文具が置いてある場所で物色することに落ち着いた。

乱雑に重なったノートや、事務用品、メモ帳から筆道具まで

全てが大雑把に積まれているその場所で、ふと見つけた住所録。

丁度、というよりもだいぶ前から新しい住所録を探していたので、

透明な封がされている住所録を手に取って、買うべきか否か迷っていた。

 

手の中にあるそれは

重厚感のある表紙が漆で艶めき、金色の枠縁の中に

鮮やかな紅葉が3枚、そして、金色の桜が天の川の様に描かれている立派なものだった。

 

これならば、自分の部屋に合わない、という事は無い。

それに、たったの300円という値段だったので購入することに決めた。

 

部屋に帰り、中古屋さんで包装されたであろう透明な封を切って、

艶やかなその住所録を取り出した。

その住所録はひたすらに押し入れに入っていたのだろうか

真っ先にお香と畳の匂い、そして、それが少し風化した様な、

懐かしい匂いが机の上を通り抜けて行った。

 

あ、か、さ、た、な

と並ぶページはまっさらで、紙の縁は金色に染められていた。

 

一番最初のページは「常用」と記載されていたので

そんなページもあるのか…と紙をめくったその手が、

少し跳ねた。

 

そのページ、たったその、場所だけに

鉛筆で、丁寧に数人の住所が記されていたからだ。

 

頭の中では

知らない誰かの住所を知ってしまっていいのだろうか。使っていた前の人が大切に書いた大事な相手であろう名前を、どこの誰かも分からない私が目を通していいのだろうか。」

そんな事が僅かな間で頭を駆け巡り、ページを少し閉じた。

 

けれども、鉛筆で書かれているその住所は消そうと思えば簡単に消せる物だ。

見なかったふりをして消そうかとも思ったけれど、

まるで本をめくるかのように、

自然にそのページへと手が戻っていった。

 

知らない誰かの思い出に触れるのはいつ振りだろうか、

そんな風にして、誰かの思い出に触れることは私にとって、とても貴重で、人生を見ているかのようで、胸をえぐるように感情を流れ込ませてくる、大事な「触れられるもの」だ。

興味のような、想像世界に旅立ちたいような

そんな思いで開いた。

 

北の方の住所2つと

東京に近い町の住所が2つ。

 

郵便番号はまだ5桁の時代の物だった。

 

名前も一けた台の数字後半部分が入る人が2人。

苗字が違うのだけれど、双方、きっと兄弟の多い人なのだとすぐにわかった。

 

そして住所は測量事務所、次いで時計店と、不思議な組み合わせだった。

 

果たしてその住所の店主が友人なのか、行きつけの場所なのか、はたまた仕事の間柄なのかは分からないが、

この立派な住所録のなかに記した、たった4つの住所の中の一つなのだから

大切な場所なのだろう。

 

 

どんな風にしてこの人は北と、東京付近の人と知り合ったのだろう、

どんな手紙を送りあって、会話をしていたのだろう。

 

住所録からわずかに滲む懐かしい匂いと共に思いを馳せてみる。

私がまだ生まれて間もない程前の郵便番号の桁、買った場所とは程遠い町の名前、大事に記された鉛筆書きの綺麗な字の住所たち。

 

私が誰かの想いを消すことなんてできるだろうか。

 

消そうと思えば消せるそのページは大事に手を加えないように使おう。

 

そう思って漆表紙の美しい住所録をそっと仕舞った。

 

 


 

 

ここまで読んでくださりありがとうございます*


住所録を買ったあの日、とても素敵な誰かの思い出に触れた気がして、なんとなく

ここに書き残しておきたかったのです…


いつもとは違う完全変化球ブログで

つたない文章でしたが、お付き合いありがとうございました。

また、気が向いたらこんな感じで書くかも。

 

では、皆様素敵な日々を。

 

 

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