ちゃっぽぉ~ん ────
輝美とッ!!
律子のぉーッ!!
人間の肉体というものがこれ程に煩わしいものであるとは思いませんでしたよ。いかに希望を捨てず苦しみに耐えぬいて生きようと心に決めたとしても……その思いを無にするかのように容赦なく機能を停止する。それは気力だけではどうしようもないんでしょうか?
やっ、せやけどカラダだってその気持ちに応えようとはしてると思うよ?もうホンマにボロボロになりもってでも脳からの信号に限界まで反応してるから、痛いし ──── 苦しいんやんか。
だからこそ、その肉体を捨て去ればどれほど楽になるか ──── 過去には、そうして病気を苦に自ら命を絶った方もいらっしゃるそうですが……
うん ──── 私も何か、どっかでそんな話聞いたコトある。でも、それでも何とかならへんかったんかなって私は思ってまうねんッ。だって……
カラダが失くなったら、燃やしてしもたら……もう、しゃべられへんやん!抱き締められへんやん!!
せやろ?
それが、なければならないなんて、やはり途轍もなく煩わしいじゃありませんか。
でも、人間は ──── っていうかイヌもネコもこの世界におる生き物は皆そないしてカラダを持って生まれて来てるんやから、しゃーないんですよ。
まさか、アンドロイドのあなたに……そんなような事を言われるとは思いませんでしたねえ。
やっ、ちょっと待ってよ。そない言うけど、私だっておんなじですよね?この素体がなかったら、(小さな手で頭を指して)この中にあるコンピューターだけやったら、輝美さんとしゃべったり一緒にお出かけしたりゴハン食べたり出来ひんやろ?
唯一の相違点を挙げるとするならば、律子さんあなたの体は
代えが利く
という事になるでしょうねえ。
それやねんよなー……せめて、人間の体の色んな臓器も代えが利いたらエエのにさー。
人工の骨や筋肉は既に開発されているようですが、心臓や肺のみならず様々な臓器を人工的に再現する事は容易ではないでしょう。正常な臓器も含め全てを人工臓器に取り換えるならばまだしも、一部を人工のものにする場合はそれぞれをキッチリ接合した上で拒絶反応が起きないようにしなければなりませんから。
そっか……でも、どっちか言うたらやっぱし『部分的に置き換える』ほうが現実的は現実的やんね。
だとしても、それもまだまだ高いハードルが。人工臓器はあくまで補助的な役割であり、現在は生体移植に頼らざるを得ない訳です。
それでもホラ、やっぱしドナーがなかなか見つからへんとか。見つかっても体に合わんくて拒絶反応起こしたりとかってあるやんか。
無論そんなような問題もありますが、海外などで移植手術を受ける場合……何しろお金がかかります。
もぉ ──── 壁だらけやん、壁だらけ!!!……っていうかさー、何で治らへん病気があるん?何で、ガンって細胞なん?菌とかじゃないん?
ですから ──── 先ほどから何度も申し上げているように
やはり人間の肉体ほど煩わしいものはない
のですよ。
答えになってへんし……
ほんなら、もうアレで行こ!『アンドロイド保険』もエエけど……
どんな病気でもケガでも、なかった事にしますよー(脳ミソ以外)
って(笑)。
なかった事に ──── 治すというのではなく?
輝美さんはお医者さんやないねんから、『治す』は違うやろ。あなたの得意科目は?
『機械いじり』ですっ。
ほっとんど人間みたいなアンドロイド作れるくらいやねんから、人間のパーツパーツを機械で真似るくらい ──── 楽勝じゃないんですかッ!?
それは ────
実際にやってみなければ分かりませ……
言えよソコはッ!!!!
輝美さんだけやないんですかッ!?……この息苦しい現代社会で、“何でもアリ”なキャラは!!!頼むから、らしくないセリフだけは言わんといて下さい。せやから言うてよ、『そんなの3分です』って。サイボーグ施術 ──── やりましょうよ。
……。
そんなの、この私にかかれば1分でじゅうぶんですよ。『脳ミソ以外』?……ふっ、律子さんあなたまだお分かりにならないのですか。私が本気になれば、生体脳に蓄積されたありとあらゆる情報を全てコピーしシステム制御に反映させる事など
朝メシ前なんですから!!! ──── やろ?(笑)
いえ眠っている間に出来ちゃいますよね、起きるまでに。
ほら見てぇ~ん!!!……さすがは“ご都合良主義ル”輝美さんですよねー。
たとえ、それがいかに儚いものだとしても人間はやはり人間として命を燃やすべきだと改めて感じさせられましたし……私は私にしかできない事を、やり続けていくつもりですよ。
うんッ!!!私も ──── そう、ありたいです。原作者の人が何で輝美さんをこの世界に生み落として、私を作るようにさせたんか……その意味をまた改めて考えながら大事に大事に一日一日を歩いて行きたいって思います。
さ……それでは、上がりましょうか。
うんッ。
それでは皆様 ──── また明後日、お会いいたしましょうね。