素人短編小説 飛行慣熟訓練 -2ページ目

素人短編小説 飛行慣熟訓練

元運航従事者の素人小説です。
飛行機に興味のある方は是非優しい目で読んでやってください。
なお、文中に出てくる団体、個人名はフィクションです。
また、小説自体も、事実を基にしたフィクションです。

私も少しホッとすると、急に眩しさを感じた。
地上と上空では、眩しさが全く違うのだ。

客席で感じる眩しさの数倍は眩しいと思う。
持ってきたサングラスをかける。

パイロットもサングラスをかけているが、格好をつけている訳ではない、紫外線から眼を守るためだ。かけていないと白内障の原因にもなるので話は深刻だ。

一丁前にサングラスをかけているが、わずか1メートル前にいる人達とはまるで立場が違う。日本中の人数を考えれば、ラインのパイロットより、私達の方が少ないのだが、決してそうは思われない。私達もプロ意識を持って仕事をしているし、定期的なチェックもあるが、パイロットのオーラには叶わない。

実際に飛ばしている人達のすぐ後ろでいると、ネガティブな感情が起きてしまう。
嫉妬なのか?

見っともない、考えるのはやめよう。それより、チェックポイントでの揺れや残燃料の記録が大切だ。
記録を終えて、顔を上げると、真っ青な空が目に入った。

コックピットから見る景色は、運航関係者の特権だ。
富士山の北側辺りを飛んでいると、天気のいい日は、太平洋と日本海が両側に見える。

国際線担当の同期は、オーロラを見たそうだ。例えオーロラが出現しても、客席だと北側の窓からしか見えないが、コックピットからは必ず見える。
人間の小ささを感じるそうだ。
そういう本人も小さいのだが。

個人的には、国際線担当でも、ヨーロッパやアメリカの北東部などには行きたくない。
十数時間も狭いコックピットに男4人はむさ苦しい事この上ないし時差がキツイ。

数時間が一番いい。忙しくもないし、かと言って暇でもない。
慣れないうちは、緊張の連続だが、何度も乗っていると余裕がでてくる。
余裕と言うと聞こえがいいが、弛緩と言った方がいいだろう。
ATCが子守歌に聞こえてくる時がある。

ふと前を見ると、羽田に近づくにつれ、雲が多くなってきている。
やはり、羽田の天気は良くないようだ。

COPの井上さんが、ACARSで天気の情報を取って、CAPと私に見えるように差し出す。

風が190度から11ノット、VISが5000m、-SHRAか、やはりILS22だ。
RWY22の場合、RWY34に比べて時間がかかる。しかもILS22の場合は、LDA22に比べても10分は遅れる。
私が乗る時は、何故かRWY22が多い。夏場が多いせいだろう。
CAPのブリーフィングが始まった。

『ランディングは、エクスペクト、レーダーベクターILSの22、ビロウ10000はライトマイナス程度の揺れが予想されますので、キャビンに連絡して下さい。今のところスポットは68でノーチェンジです。質問はありますか?』と、COPの井上さんと、私の方を向いた。
「特にありません」声が揃った。