素人短編小説 飛行慣熟訓練 -12ページ目

素人短編小説 飛行慣熟訓練

元運航従事者の素人小説です。
飛行機に興味のある方は是非優しい目で読んでやってください。
なお、文中に出てくる団体、個人名はフィクションです。
また、小説自体も、事実を基にしたフィクションです。

カーテンの隙間の明るさで目が覚めた。
時刻を見ると、まだ6時だ。


出勤は8時30分なので、まだ時間がある、いや今日は飛行慣熟訓練の日だった。
早めに出勤して準備をするために、いつもより早く起きようと思っていたのだった。
と、その時スマートフォンのアラームが鳴った。


絶対に起きると評判の、GPWSの音をアラームに利用している。
ウ~ウ~プルアップ!
運航従事者で、この音で起きない奴はいないだろう。このアラームで起きないパイロットがいたら乗らない方が良さそうだ。


アラームを止めて起き上がり、顔を洗い、キッチンへ行ってコーヒーを淹れる。
私はミルクを入れない派だ。
リビングへ行き、テレビを付けると丁度天気予報の最中だった。
天気の”て”の字も知らない若いキャスターが、原稿を読んでいる。

 

上空は別として、東京の天気や風向きが分かるだけで良しとしよう。
根拠は同じなのに、同じ事を気象予報士が話すのと、お天気キャスターが話すのでは、信憑性が違う気がするのは私だけだろうか?


 そんな事はどうでもいい、これじゃ早く起きた意味がなくなる。気を取り直してコーヒーを飲む。
出勤時間は、通常8時半だが、今日は準備の為に7時半には着きたい。
と言っても、家から空港まで車で10分、7時10分頃に家を出れば関係者の駐車場から事務所までの時間を考えても十分だろう。


頭を起こす為にも朝食を取ろうと思い、キッチンに向かい食べ物を探す。


結婚はしているが、自分の事は自分でやるのが我が家流、夕食だけは妻にお願いしているが、朝食は担当外のため、まだ寝ている。
別に楽をしている訳ではない、彼女も仕事を持っているので条件は同じなのだ。
いや、夕食を作って貰っている分彼女の方が大変か。

 

トーストを食べながら、暫くリラックスをする。飛行慣熟訓練の日はどうもリラックス出来ない。緊張とは違う違和感とでも言うのだろうか、

とにかく普段とは違うのだ。
ボーっとしていると7時になった。


慌てて洗面所に行き、歯磨きをし、髪を整える。
部屋でスーツに着替える。私達の仕事に制服は無い。普段は、「仕事に相応しい程度」の軽装で出勤も珍しくないが、今日は訓練の為に、

羽田に行くので正装だ。


ネクタイを締めると、仕事モードのスイッチが入った。これも制服効果のひとつだろうか?サラリーマンの制服はスーツが定番だから、やはりその効果なのであろう。


今は、私服を認めている会社も多いので、そのうちに制服効果が無くなる日が来るだろうな。等と考えているうちに着替えが完了した。時計を見ると、ちょうど7時、まだ少し時間があるので、しばしリラックスをする。


普通なら訓練の事を考えるのだろうが、私は仕事を家に持ち帰らない主義だ。もっとも、家に飛行機は着陸しないので、持ち帰りようが無いと言うのが正直なところだが。

 

そろそろ7時10分だ、家を出よう。


「行ってきます」と言うと、奥の部屋から、「行ってらっしゃい」と声が聞こえた。


その声に背中を押され、家を後にした。

 

 

*他にも、『元飛行機関係者のしょうもない話』を書いていますので、よろしければご覧下さい。(station-control)です。