私は、これまで何度も少子化問題についての考えを首相官邸の意見・感想欄に投稿してきましたが、先日それまでの“まとめ”として、ある3つの柱からなる方策を提案しました。

 そこで、今回から複数回に分けてその内容を紹介したいと思います。これは単に少子化問題について考えるだけでなく、子育てそのものついての理解を深めるためのものでもあります。


(以下、投稿文)

 我が子を将来、結婚や出産を回避しない安定型の愛着スタイル(乳幼児期に形成された親子間の愛着によって決定づけられる人格タイプ)を持つ健全な大人に育てるための基本は、「実の母親(母性が不足した母親の場合は父親等が“育ての親”として代わる場合もある)が我が子を最低1歳になるまでは、精神的に安定した状態で適切な育児方法によって直接世話をすること」だと思います。(少子化をはじめとして、虐待やネグレクト、ひきこもり、いじめ、非行や犯罪等の様々な社会問題とは無縁の安定した人格の大人を育てる、あくまでその延長線上に結婚・出産行為があります。少子化問題に特化した子育てはあり得ません。事実、そういう当たり前の子育てをした家庭で育った大勢の人がこれまでに結婚・出産に至っています。)

 

 まず「最低1歳になるまで」とした理由は、その期間が、泣いて助けを求める乳児が母親という「安全基地」を目指して移動・避難できないために命の危機を感じ、親との愛着(愛の絆)を諦める「脱愛着」、ひいては、他者一般との絆の形成(結婚・出産等)を避ける「回避型」に陥りやすい(下記拙案プレゼンスライドより)…


期間であること。更に、本来その間に身に付けられるとされる「基本的信頼感」や「基本的安心感」が、“新しい絆を繋ぐ挑戦”とも言える結婚や出産をするうえで絶対に欠かすことのできないものであると考えるからです。

「愛着崩壊 子どもを愛せない大人たち」(角川選書)の著者で精神科医の岡田尊司氏は「出来れば3歳までは実の親が世話をするべき」と指摘していますが、今の社会の実態としてはそれを一様に求めるのは無理があるため、現在育休取得期間として共通に認められている1歳までに絞りました(岡田氏も「最低限0歳の間だけでも母親が働かず直接世話ができるよう保育手当を給付するべき」と指摘)。それが改善されるだけでも、状況はかなり変わると思います。


 次に、「精神的に安定した状態で」としたのは、今の少子化のきっかけが戦後高度経済成長期での、ワンオペ育児を強いられた専業主婦による“精神不安定育児”であったとされている(下記拙案プレゼンスライドより)…


ためです。


 また、「直接世話をする」としたのは、現在では保育所の利用が当たり前になっていますが、保育所の利用が始まった当時は、そのことで愛情不足の子供が増えたために「回避型」の大人が増えることに繋がったとされている(同上スライドより)ためです。また、臨床心理士の網谷由香利氏は「鬱障害などの心の病気の原因は、『母子一体化』が妨げられる“0歳児保育”にある」と、元東京女子大学の林道義氏も「0歳児保育、特に四か月保育は大切な母子一体感を損なう可能性が大であり、危険なかけ」と、それぞれ1歳未満の保育所利用に警鐘を鳴らしています。


 更に、「適切な育児方法によって」としたのは、たとえ生後一年間を親が精神的に安定した状態で直接世話をしたとしても、生理的早産によって生まれる乳児が置かれる過酷な生活環境や「愛着の選択性」(産まれた子供が、先ずはある特定の養育者に対して愛着を形成しようとする性質)を理解せずに、「抱き癖が付くから泣かせたままにした方がいい」とか「泣く子は育つ」等の“絶対保護”の意識に欠けた方法で世話をしたり、夫婦が平等に育児に当たったりすると、将来「回避型」の大人に育ちやすいと考えられるためです。


 以上の4要件が大切であることは、岡田尊司氏に確認して頂ければ分かると思います。


 以下に、その4要件を具現化するために必要と思われる、ある3つのサポートを挙げます。

(次回へ続く)