以前投稿した下記記事から始まった今年の夏の活動報告。


 今回からは、8月3日(水)に岩手県立大学で将来学校の養護教諭(保健室の先生)を目指している学生さんを対象に行った全体講義(90分間)「周囲から受け入れられにくい子ども達と心を繋ぐ支援の在り方」についてその概要を紹介します。
 この「周囲から受け入れられにくい子供達」というのは俗に言う「困った子」と呼ばれることが多い子供達です。内容は学校教育となっていますが、学校で「困った子」とされる子供達の多くは家庭でも同じように思われている場合が多いように思います。そういう子供達への支援のあり方と捉えてご覧いただければと思います。


 ここで言う「周囲から受け入れられにくい子供達」とは、「自閉症スペクトラム障害」及び「愛着スペクトラム障害」と呼ばれる子供達とします。
「自閉症スペクトラム障害」は生まれつきの特性である一方で、「愛着スペクトラム障害」は生まれた後の親の愛情が安定であったために現在陥っている症状という違いはありますが、どちらも特に人間関係が不得意な子供達です。そのために学校でも教師や友人達とトラブルを起こしがちです。


 さて今回取り上げる子供達と暮らしていると、こんな場面に遭遇することがあります。例えば問題を抱えた子供が「えー!プールできなくなったの?!昨日はそんなこと言ってなかったよ!」と大騒ぎした時に教師は思わず「仕方ないでしょ!算数が遅れてるんだから。そんなことで泣かないの! 」等と言ってしまいがちです。私も以前はそうでした。

 しかしそれではこの子供の症状は改善するどころか一層深刻なものになってしまいます。では一体どう対応するのが良いのでしょうか?


 同様に、子供が「俺、今日は給食一人で食べる」と言った時に教師は思わず「どうしてそんなわがままを言うの?!早く自分の班のところに戻りなさい!」等と言ってしまいがち。しかしやはりそれでは問題は一層深刻なものになってしまいます。どう対応するのが良いのでしょうか?



「お前、今俺を叩いただろ」と友達に言った時には思わず「○○君は『ちょっと手が触っただけ』と言ってるでしょ!あなたはオーバーです!」等と言ってしまいがち。しかしそれもやはり上手くいきません。


「あいつの顔、馬に似てる!」と言った時には思わず「どうしてそんな失礼な事を言うの?!○○君に謝りなさい!」と言ってしまいがち。やはり上手くいきません。



 さて、これまで挙げたような場面の際には、この子がどうしても出来ないこと、いわゆる困難特性は何か、つまり「この子はなぜこんなことを言ってしまうのか(してしまうのか)」ということを知ることができて初めてその子に相応しい支援を考えることができます。

 しかしこの岩手県では昨年に「あなたは特別支援学級に行きなさい」等と高圧的な指導をしたり、「注意しても思い通りにならないから」という理由から不適切な指導をしたりした教師の事例が報道されました。私は特に「注意しても思い通りにならないから」という発言に注目しています。つまりこの教師達は全ての子供に対して不適切な指導をしているわけではなく、教師の指導が通りにくい俗に「困った子」と言われる子供達、つまり正にここで取り上げている「周囲から受け入れられにくい子供達」に手を焼いていて、ちょうどここで紹介したスライドの左側のような指導が行われた末に不適切な指導に走ってしまったのではなかったかと考えています。直接その指導現場を見ているわけではないにも関わらずそう思えるのは、私の経験上でも、やはりそういう子供達に対して不適切な発言をする教師を何人も間近で見てきたからです。

 そこで次のスライドから子供達がどんな障害特性を持っているのかについてお話しします。

(上記各スライドの右箱枠「?」の適切な指導の仕方については後で紹介します。)