前回投稿した下記記事での今年の夏の活動報告。


 今回からは、岩手県立大学で行った個別講義と演習「発達につまずきがある子供の理解と対応 ~自閉症傾向が強い子供を持つ親の悩みに答える~」についての概要を、当日使ったパワーポイントのスライド資料を用いながら紹介します。




 講義では、始めに下記の記事で紹介されている自閉症スペクトラム障害の子供を持つ母親の悩みを紹介しました。

◯YouTube動画《【取材】『発達障害の子育て』(ヤフーニュース特集2017年5月)》


 その後、その母親の悩み(全部で5つ)に答えるという形で、毎年行っている全体講義のプレゼン資料と親向けのプレゼン資料とから必要な関連スライドを抜粋して紹介しました。

 今回は、そのうちの1つ目の悩みについて紹介します。


①親「自分が健常者だからわが子のことが分からない」との悩みに対して

 結論から言うと、発達障害者と健常者とは別世界ではなく連続した世界にいます。

 発達障害の診断は、私が知る限り、被験者に当てはまる症状があるかどうかを調べる多くの設問に対して、一定の基準数以上当てはまると「障害」との診断が下されます。そのため、健常者でも基準数未満に当てはまるという人が大勢います。この「基準数」については、どこかの専門家が便宜上後付けしたものであり、多くの人が大なり小なりその傾向を持っているのです。かく言う私自身も自閉症スペクトラムとADHDの傾向をグレー域程度は持っていると感じています。また、精神科医の岡田尊司氏も「全ての病態は(障害者から健常者まで)スペクトラム性(連続分布性)を持っている」と指摘しています。

 ネットで検索すると、千葉大学の若林昭雄氏が日本版に翻訳した「アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム) 診断チェック」という自己診断チャックリストが紹介されています(「アスペルガー症候群」とは自閉症スペクトラム障害のうちの特に知的遅れのない人のこと)。この自己診断をした時に、結果が「0点」と言う人、つまり自閉症スペクトラムの傾向が全く無いという人はまずいないでしょう。例えば私の姉(自閉症とはおよそ無縁に見える社会性が豊かな人間)にもこの質問に答えてもらったところ、50問中10問以上は当てはまりました。その時姉はこう言いました。「こんなの誰にでも当てはまるでしょ?!」と。(現在は自分の該当数は表示されず、大まかな評価コメントが紹介されるだけのようです)。


 関連スライドは以下の通り。(文字が小さくて見えない場合はダブルタップ後に拡大)



 なお、青木省三著「ぼくらの中の発達障害」(ちくまプリマー新書)は自閉症スペクトラム障害の人に勇気を与えてくれる名著です。関心のある方はぜひご覧ください。