【今回の記事】

[女子中学生が自殺、いじめ 学校側は相手生徒を指導せず](https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210316-00000009-jnn-soci)


【記事の概要】

《女子生徒や母親は去年3度に渡り、SNSのLINEグループで悪口を書かれるなどの「嫌がらせを受けている」と担任に相談していたが、「仕返しが怖いので指導してほしくない」と生徒が言ったため指導はせず、経過を見守っていたという。》


【感想】

 以前にもいじめを改善する方法を以下のように提案しました。

我が子がいじめを受けていた(その2)〜いじめ行為をなくす方法〜

この時は、イジメをさせないようにするための加害者本人の動機付けの面からのアプローチの仕方を提案しましたが、今回は、イジメを生む背景そのものの改善策の提案になります。


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「先生が指導すると仕返しされるかも知れない」

あまりに虚しい響きのSOS。しかし、このような思いは決してこの女の子だけではなく、あくまで氷山の一角のような気がします。つまり、私達は、仕返しを生んでしまうような教師による指導が行われていることが多いという現実から目を背けずに、正面から向き合う必要があるのではないか?それが今回の記事の趣旨です。


加害生徒への指導方針

 いじめが起きる要因については、国立教育政策研究所の滝充氏が、①加害者の性格原因説、②被害者原因説、③加害者のストレスによる情緒不安説、④加害者の道徳性欠如説、⑤傍観者による煽動説、を詳細に比較・検証したうえで「いじめは加害者が日常生活の中で溜めたストレスの発散行為である」(上記③)と結論付けています。決して、いじめられる側に原因があるわけでも、加害者が生まれつき持った特質によるものでもないのです。


 また、精神科医の岡田尊司氏が提唱する愛着アプローチの考え方(不適応行動をとる当該者に対して、当人と愛着で繋がった親等が『安全基地』となって子供に安心感を満たしてやると、当該者は適切な「探索行動」を取れるようになる)によれば、ストレス、つまり不安感を溜めている加害生徒に対しては、先ずはそのストレスや不安感を解消する働きかけをしなければならないのが基本です。


 因みに、そのストレス(不安感)改善の方法(詳細は、次項「子供のストレス(不安感)を改善する方法」で説明)は、本人を攻撃する性質のものではないので、加害生徒は被害生徒に仕返しをしようとは思わないでしょう。

 一方で、教師がいじめ加害者のいじめ行為に対してそれを注意矯正するような指導をした場合、ストレスを抱えたままの生徒はその指導に反発し、やはり被害生徒に「仕返し」という八つ当たりをするでしょう。

(イメージ)


つまり、不安感を抱えたままの「充電場面」(下表)にいる子供は、「大人からの注意を素直に聞き入れ自分を修正する」という「探索行動」はまだできないのです。


 一方で、おそらく「いじめ加害者に注意をしないで、悩みを解決してあげるなんてとんでもない」と思う指導者がほとんどだと思います。しかし、だからこそいじめ指導が上手く機能せず、「仕返しが怖いから注意しないで」と訴える被害者が現れるのだと思います。


子供のストレス(不安感)を改善する方法

 さて、いじめ行為が、クラスの中のある特定の生徒に限られている場合は、加害生徒は主に家庭生活、特に親との関係でストレスを溜めている可能性が高いです(事実、2011年の大津いじめの際の加害生徒の親は 「仲良くプロレスごっこをしていただけのうちの息子が悪いというのは責任転嫁」という趣旨のビラを撒いたり、「暴力は被害者を思ってのことだった」と裁判で証言したりと酷かったです)。その場合には、本人がどんなことにストレスを抱えているのかを聞いたうえで、保護者に働きかけて、その改善を図る必要があります。

 一方で多人数によるいじめであれば学級担任の指導が原因の可能性が高いと考えられます


 なお、各家庭での子供のストレスを軽減しようと思うならば、やはり愛着アプローチの考え方によって、我が子との愛着を形成し不安感を解消するための具体的な愛情行為(「安心7支援」等)を親御さんに知らせて、子供の不安感を軽減してやる必要があると思います。「子供に対して何をすればいいか?」が明確にならない限り、その親の子育ての仕方が変わることはないでしょう。


 一方で、以下の事例は、学級担任にストレスの要因があるケースだと思われます。

女性教諭が児童に差別的発言で「学級崩壊」、大阪の小学校

 この場合は、学級児童が担任教師に対して愛着不全になっているために学級崩壊(愛の絆の崩壊)の状態になっていると考えられます。これを改善するためには、やはり「愛着7支援」のような具体的な愛着形成行為を教師が行って、子供との愛着を修復する必要があるでしょう。


愛着アプローチによる攻めの改善

 因みに、NHKのある番組で見たのですが、台湾の天才IT担当大臣オードリータンさんは、子供の頃友達からいじめられた時に、「子供はなぜ友達をいじめるのか?」ということについてモンテッソーリやピアジェなどの児童心理学の本を読み勉強したと言います。その結果「いじめる子供は、自分に自信がないから友達をいじめる」と言うことが分かり、彼は「いじめっ子を自分の手で変えることはできない」と考え、無理にその学校に居ようとせずに転校したとのことです。

 自ら児童心理学を調べるあたりは、いかにも天才らしいアプローチです。また「自分に自信がないから友達をいじめる」という結論は「加害者が抱える不安感が原因」とする先の滝氏の見解と一致します。しかし彼は、その後その学校を去ってしまいます。現在でも、なぜか被害を受けた子供だけが転校を余儀なくされる現実が多く見受けられます。

 しかし、こんな理不尽な“逃げの解決法”がまかり通って良いはずがありません。私は、岡田氏が提唱する愛着アプローチによって、加害者側、被害者側、何れの不安感も解消されるという、“攻めの解決”の道が開かれるべきだと考えています。