【今回の記事】

記事[「監察医 朝顔」(21日放送分)


【記事の概要】

《無事に家出から帰宅したつぐみ。父親の真也は夕食の前につぐみを注意しようとする。一方母親の朝顔は「今日はもう(注意しなくても)いいんじゃない」とさえぎろうとするが、父親は「よくないよ」と言って注意を始める。》


【感想】

 今回は、ドラマ「監察医 朝顔」を通して、子育ての原則について考えたいと思います。


 さて、子供に世の中のルールを教え社会的自立を促そうとする父親と、子供を受容しようとする母親、二人ともそれぞれ本来の言動を見せたのです。因みに、父母のこの違いには、それぞれ特有のホルモン、母親のオキシトシン、父親のバソプレシンが関係していると言います。つまりは、単なる気質ではなく生物学的な理由なのです。


 さて、この場合のつぐみが抱えていた問題はもちろん深刻です。下記「子育てチャート図」で言う「ケース①(青色矢印)」ですから、原則通りなら母性の後に、父性による指導は必要はありません。


しかしこの場合は、子どもの命に関わる問題でした。その場合は例外であり、真也の判断は正しかったと私は思います。


 最終的につぐみは、ハッキリ返事をして父親と「これからは勝手に家を出ない」という約束を交わすことができました。それは「つぐみはお父さんとお母さんの宝物なんだよ」と我が子を受容する母性の働きを示したからだと思います。もしもあそこで注意だけをしていたら、つぐみは口をつぐんでいたかも知れません。なぜなら、父親の前に正座させられ怒られる予感を感じ、急に萎縮状態の「充電場面」に陥っていたからです。そんなあの子に先ず必要だったのは真也が示した母性でした。父親であろうとも、時には母性の役割をする必要があることが分かります。


しかも、真也は決して声を荒げず、穏やかな口調で話しかけました。子供への指導には決して“大きな声”は必要ありません。激しい口調で子供を萎縮させてしまっては、その言葉さえ子供の心に届かなくなってしまいます。日頃から親が微笑みを大事にしていれば、この真也のように真剣な顔をしただけで充分なのです。

 また、その父の指導中に、母を思うつぐみの気持ちを知った朝顔が、思わずつぐみを抱きしめます。その正に母性の働きが、緊張していたつぐみの心を更に柔らかくし、直後の父親との約束に導きました。父性の働きと母性の働きが見事にバランス良く働いたシーンでした。

 もちろん、1人親でも、以上のような父母良成を場面に応じて使い分ければ、立派に子供を育てることができます。その使い分けの目安になるのが、先の「子育て3場面表」です。


 さて、そもそもつぐみは、「自分がいるとお母さんが大変そう。自分はいない方が良いのではないか?」、そう不安になり、母から離れ祖父のもとへ向かおうとしました。そういえば、朝顔が急な仕事の連絡が入り出かけようとしていた時、母親にしがみ付くつぐみの顔からは笑顔が無くなっていました。つまり、その時つぐみは問題を抱える「充電場面」にいたと考えられます。


もしも、その時「お母さんはあなたが大好きなのよ」という愛情表示を、ハグなどのスキンシップでしておけば、つぐみは家を出ていなかったかも知れません。


 朝顔は、その夜自分の悩みを真也に打ち明けます。娘の事、父親の事、祖父の事。実は朝顔自身が、様々な問題を抱え「充電場面」にいたのです。そんな朝顔に真也がかけた言葉は、「話してくれてありがとう」「朝顔はよく頑張ってるよ」「いろいろ任せすぎちゃったんだね、ごめんね」という朝顔の気持ちを受容するものでした。その後、おにぎりを頬ばる朝顔に笑顔が戻りました


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 しかしこれはあくまでドラマです。現実には、そうそう理想的な言動を取れるものではありません。しかし、どんな時にどんな支援をすればいいかを事前に意識していれば話は別です。

 また、前回の記事

でもお話ししましたが、日常の突然やってくる指導場面に対して、「今のこの子の言動には、A専門家のあの考えで対応すべき」「今度はB専門家のあの考えで…」という対処は到底できません。けれども、「子供に笑顔がないから、まず母性(安心7支援)」「注意が必要でも、まず母性。注意はその後」「熱中して取り組んでるから、父性の見守り(見守り4支援)」等のような大枠で意識していれば、対応も十分可能だと思います。