突然ですが、このブログで、度々登場しているこの「愛着場面表」。

 これを更に子育てに応用したのが以下の「子育て三場面表」です。


 これは、保護者向けプレゼン(仮題「子どもに健全な一生を贈る子育ての基本〜我が子を将来、引きこもり、貧困、虐待、各依存症他に陥らせないために〜」)のスライドで、子どもは必ず「A 充電場面」「B 活動場面」「C 日常場面」の3つの場面のどこかにいて、支援方法は「充電場面」と「日常場面」が「安心7支援」、「活動場面」が「見守り4支援」であるという、いわゆる「どんな場面で(いつ)、どんな支援を(何を)すればいいか」を表した考えです。


 この支援の流れを、更に構造的に表したのが次の「子育てチャート図」です。(同上プレゼン資料より)


 子供がいる場面(肌色)は、“非日常”の「A 充電場面」と「B 活動場面」、更に“日常”の「C 日常場面」の3種類。子供に施す支援(緑色)は母性(安心7支援)と父性(見守り4支援)の2種類。


 子供に笑顔が無く問題を抱えたケース①(青色)の場合は、「A 充電場面」がスタート地点「S」。子供に施す働きは、子供を受容する母性であり、それによって子供は、「B 活動場面」に移動してゴール「G」に達します。

 次に、子供に注意が必要だったり、または問題の深刻度が浅かったりするケース②(黄色)は、「A 充電場面」からスタートして、始めに母性を働きかけ、その後に父性を働きかけることによって「B 活動場面」に達します(「随分楽しそうな番組ね。でも約束の時間が過ぎているからもう消そうね」等)。

 次に、子供に笑顔があったり、熱心・熱中したりして自力で活動できるケース③(緑色)は、「B 活動場面」からスタートして、父性を働きかけることによって、更に意欲的に探索活動を行う活動場面に達します。

 更に、「C 日常場面」の場合は、いざという時のために、母性で“安心貯金”をしておきます。


 なお、以上のパターンは、これまで私が目にしてきた専門家の先行研究による演繹的分析、更に私の31年間の教師経験と更にこのブログで取り上げてきた1000件以上の事例分析による帰納的分析から導き出したものです。


 この中で、特に親が落とし穴に陥りやすいのはケース② (下線部)だと思います。なぜなら、子供が約束の時間を過ぎてもテレビを見ているような場面に遭遇した場合、私達大人は直ぐに“注意”をしがちだからです。しかし、どんな不適切な行為でも、それをしている時の子供の“気持ち”(「ワクワクする」「ドキドキする」等)があります。それを理解せずに注意だけをした場合、子供は一定の反発心を抱きます。いくら普段「子供のありのままを認める」「“無条件の愛”を大切に」等と謳っていても、その気持ちを受け止めないままに、すぐに注意をしてしまうのは、ある意味“矛盾”と言えるでしょう。因みに「子供は『自分の気持ちを理解して育ててくれる親の言うことなら聞こう』と思っている」とは、児童精神医学界のレジェンド佐々木正美氏の言葉です。つまり、子供は、その時の自分の気持ちを理解してくれる親の注意は受け入れやすいのです。

 加えて、始めに子供の気持ちを受容する言葉を口にしておくと、その後に続く指示や注意の語調も自然と穏やかなものになり、子供は、より親の注意を受け入れやすくなるでしょう。


 つまり、子育てには次のような「基本原則」があると考えると、分かりやすいと思います。

子供に笑顔があったり、熱心・熱中したりして自力で活動できている時は、社会的自立を促す父性の働き(見守り4支援)で接する

それ以外の(笑顔が無い)は、先ずは子供を受容する母性の働き(安心7支援)で接するが、この後の対応は以下の2通りのパターンに分かれる。

(左矢印)子供が抱える問題がそれほど深刻でなく注意を加えても構わない場合は、その後に父性の働き(指示や注意)も加える

(右矢印)問題が深刻な場合には、父性の働きは加えず、先に加えた母性のみによって子供に「自力回復力」が生まれるのを待つ。

普段リビング等でくつろいでいる時は、母性(安心7支援)で安心貯金をして、今後いざ問題が起きた時のために備えておく。


 なお、上記原則③の「安心貯金」について、私は、イヤイヤ期の接し方についてのある専門家のイヤイヤが起きた時のための普段からの“共感保険”」という指摘(「難しい「イヤイヤ期」〜子どもの中に何が起きているのか?どう関わればいいのか?〜」参照)」)や、交流分析学での「ストロークバンク(心の栄養の貯金)」の考え方を基に考えています。因みに、元瀬戸内短期大学准教授で「不登校は1日3分の働きかけで99%解決する」(リーブル出版)の著者森田直樹氏は「コップに注がれた自信の水」という考え方を紹介し、「不登校に陥る子供は、このコップの水が不足している」と指摘。これも、安心貯金」の考えに相当すると捉えられます。


 以上のように、子供に笑顔がない時や日常の場面という、家庭生活のかなり多くの場面で母性の働きが必要になるという結論に至りました。因みに、先の佐々木氏は「子供が健全な社会的存在として育つためには、家庭の内外の環境に母性的なものと父性的なもの、両方が必要と言うことには異論はないでしょう」とした上で、次のように述べています。

「母子家庭でも父子家庭でも、家庭で不可欠な事はなにかと問われれば、私は迷わず母性をあげます

いかに母性が大切であるかが分かります。正に母親は子供にとって最大のエネルギーです。


 なお、上記①〜③の「基本原則」は、かなりザックリとした方針に見えます。しかし、現実的に「今のこの子の言動には、A専門家のあの考えで対応すべき」「今度はB専門家のあの考えで…」という対処は難しいですから、このくらいシンプルな方針である方が好ましいと思います。

 それどころか、①〜③の各項目によって、毎日の子育ての中に潜む、次のような各リスクをも回避することができると考えます。

①からは、過干渉・過保護のリスク。

②からは、子供の反発を生む注意のリスクや、精神的に傷ついた子供(不登校児等)を更に追い込むリスク。

③からは、日ごろの“安心貯金”が足りていないために、ちょっとした事がきっかけで不登校に陥るリスク。


 しかし、実は子育ての中で何より大きいリスクは、「子供達が、本来なら目を輝かせるはずの『B 活動場面』で過ごしている機会が少ない」ということではないでしょうか。私はこれまでの教師経験から、子供達は環境さえ整えば、私達大人が思っている以上に、もっと生き生きと行動できる秘めた才能を持っているのではないかと確信しています。

 そんな中、、家庭生活の中でかなりを占める上記「基本原則」の②と③の場面で、「安心7支援」という具体的な母性を通して安心感を与えることで、その姿を実現することができるのではないかと期待を寄せています。