またまた、Eテレの「すくすく子育て」より紹介します。

【今日のテーマ】
「子どもはなぜ『イヤイヤ』をするのか?」
「イヤイヤ期の子どもに親はどう関わっていけばいいのか?」


【助言専門家】
東京大学大学院教授 遠藤利彦(発達心理学)
保育士 井桁容子(保育歴42年)

イヤイヤ期とはどういう時期なのか?
・イヤイヤを繰り返し、“自分の好き”を見つける“自分探し”の時期
・あれほど全力で嫌と言えるのは人生の中でこの時しかない、今しかできない時期

どうしてイヤイヤをするのか?
・心の成長と共に自分がやりたいことが膨らむ時期。提示されたことが嫌だということだけは分かるのでイヤイヤを言ってしまう。まだやりたいことをうまく主張できないため、子ども自身フラストレーションが溜まり困っている。
・自分について理解する、いわば“自分探し”のためにイヤイヤをしている。

イヤイヤ期の「自分探し」って何? 
1歳頃まで≫
自分の姿や特徴を理解していない
1歳半から2歳ごろ≫
自分の特徴や性別などを理解し始める
自分を認識するようになると、自分以外の人も認識するようになる。そのため、他の人に対して「恥ずかしい」と思ったり、自分と友達を比較して「うらやましい」と思ったり等の感情を抱くようになる。
自分自分以外の人との違い区別できる頃にイヤイヤ期が始まる自分以外の人が提案してきた事は、たとえそれが親であっても「自分のしたいこととは違う」と認識するようになるから)。例えば、絵本選びの際に子どもは「この本は違う」と言うことは分かっていても、「これが好き」という自分の好みはまだ確立していないために「イヤ」としか主張できない 。このような経験を繰り返す中で、自分の好みや心地よい状態などを発見していく。
2歳半から3歳ごろ≫
・“自分探し”が発展していく。
・自分がとった行動に対する相手の反応を意識する等、自分が人からどう見られているか意識し始める。
・相手の反応を見ることで“罪悪感”や“他人への思いやり”等の感情を抱くようになる。このような大人に近い感情を抱くようになるとイヤイヤ期は自然とおさまっていく。

この大切な時期に親はどう関わっていけばいいか?
≪助言≫
自分の気持ちを分かってくれる大人に出会うか、気持ちを押し付ける大人に出会うのか、それによって大人に対する信頼感が変わってくる。
イヤと言う気持ちを分かろうとする姿勢が大事。本当はどうしたかったのと聞いてあげることが大事

≪ある母親からの相談①≫
 子どもの気持ちを受け止めると言うけれど、子どもは上手く話せないのでイヤイヤの原因が分からない時がある。どうすればいいか?
≪助言≫
・大前提として、親が子どものイヤイヤの原因を分かろうとする態度が大切。
・子どもがとって欲しい物を指差したときに、すぐに親がその方向にあるものを取ってあげる(子どもの手になってしまう)のではなく、 ◯◯◯が欲しいんだね」「◯◯◯して欲しいのね」等と子どもが欲しい物の名前やして欲しいことの行為を親が代わりに言ってあげる。言葉にして表現してあげると、子どもは「自分の気持ちを受け止めてもらえた」と感じて気持ちが落ち着く。こうした経験を繰り返すことで、子どもも少しずつ自分の要求を言葉で表そうと思うようになってくる。
忙しい時は誰でも難しい。そういう“いざという時”のために、前もって“余裕がある時”に子どもとイヤイヤの“意思疎通(先の子どもの気持ちの代弁等)”や、子どもができている時に「えらいね」「すごいね」「楽しいね」等の“共感”をしておく(
イヤイヤが起きた時のための“保険”)と、いざという時の子どもの様子が違ってくる。
・ネガティブな感情を経験する事は子どもにとっても大切 。子どもも、嫌な状態を自分で考えたり親に主張したりしながら「何とかしたい」と思う。子どもが嫌な状態を自力で立て直そうとする経験が、子どもの“心のたくましさ”を育む。

≪ある母親からの相談②≫
子どもと二人でいる時間が長くなると、思わず泣きたくなる時があるが…。
≪助言≫
・子育てが辛くなったら我慢せずに泣いてもいい。親が常に完璧を求めて壁のように子どもに立ちふさがっていると子どもも反発してしまう。正直に気持ちを表現していると、子どもが親の涙を拭いてくれたりすることもある。ぜひ試してみてほしい。子どもと一緒に揺れ合おう。
 
【感想】
 この放送を見て、改めて、専門家の助言の奥深さを知るとともに、自分が「イヤイヤ期」の表面上のことしか理解していなかったことを痛感しました。
 以下に、感じたことや気がついたことを紹介します。
 
イヤイヤ期が起こる仕組みと子どもの苦悩
 本番組によると、自分の姿や特徴を理解していない1歳頃までの時期から、自分だけの特徴や性別などを理解し始める1歳半から2歳頃に移り、初めて「自分は他人とは違う」という認識を持ち始める、いわゆる“(周囲からの)分離デビュー”をしたことへの戸惑い(①)を感じるから不機嫌になってイヤイヤをしてしまうということのようです。大人であっても、それまで過ごしてきた環境と別の環境に移った時にはストレスを感じますが、大人の場合は人生経験や我慢する力が備わっているので大騒ぎはしませんが、この時期の子どもにはそれが備わっていないために「イヤイヤ」という大騒ぎになってしまうのでしょう。
 しかも、「違う」ということだけは分かっても、「どのように違うのか」、つまり自分なりの好みや特徴等さえも分からない(②)うえに、更に大人にうまく自分の気持ちを伝えられないことへのフラストレーション(③)も加わります。本当は、「自分はあなた(親)とは違う」と思っているだけなのに、「自分が望んでいるのはこれ」とは言えないために、「イヤ」という拒絶的な言い方になってしまう、すると親も困った表情になるため、子どもは一層混乱してしまうのではないでしょうか。
 
子どもの苦悩に共感する親
 この①+②+③という“三重苦”は、まだ人生経験がほとんど無い幼児にとってはかなり苦しいはずです。
 一方で、その“苦悩”が分かれば、「どれなの?」「これなの?」等と、ただ単に子どもが欲しているものを探るのではなく、「何をして欲しいか分からないんだね。いやだよね。」と共感してあげながら対応することも可能になり、苦しんでいる子どもにとっては大きな助けになるはずです。子どもの苦しい気持ちを分かろうとしないままに、子どもが欲しているものを探すだけの親の表情は「いったいどれなのよ、もう~」等と困った顔になるかもしれませんが、気持ちを理解したうえで探す親の表情は共感的なものになるはずです。子どもは、その親の表情の違いを敏感に反応して、自身の言動に表すのです。

「自分探し」とは、この「自分なりの好みや特徴等を探すこと」であり、この「自分なりの好みや特徴等」こそが、俗に言う「自我」。その自我が初めて芽生えるのが「第一反抗期」であり、イヤイヤ期に見られる子どもの言動は、その時期に現れる発達上のごく自然な現象であり、子どもが正常に大人への階段を登っている証と言えるでしょう。
 
未熟な意思表示を手助けする“言葉”の意味
「子どもがとって欲しい物を指差したときに、すぐに親がその方向にあるものを取ってあげるのではなく、 『◯◯◯が欲しいんだね』『◯◯◯して欲しいのね』等と子どもが欲しい物の名前を親が代弁してあげる」との指摘。
自分の好みは何?」というモヤモヤした“疑問”に対して、親が「車が欲しいのね」等と、「車」という子どもの好みの対象を明らかにしてあげると、子どもは自分の疑問が解決され気持ちが落ち着くのでしょう。自分が欲する対象の名前を教えてもらい、気持ちがスッキリする快い経験を繰り返すことで、子どもも少しずつ自分の要求を言葉で表そうと前向きな気持ちになってくるのではないでしょうか。大人でも、成功体験を繰り返すことで前向きな気持ちになれるものです。更に語彙力が身について来れば、親が話す短い単語を覚えて自分から話せることも増えてくるかも知れませんね。
 
イヤイヤに対する“保険”となる親子間の愛着
「前もって“余裕がある時”に子どもとイヤイヤの“意思疎通”や『楽しいね』『すごいね』等の“共感”をしておく等の『保険』をかけておくと、忙しくて適切な対応ができない“いざという時”の子どもの様子が落ち着いてくる」との旨の指摘。
「意思疎通」や「共感」によって子どもとの絆を大切にする時間を作っておくというこの「保険」の意味は、普段から「お母さんはいつも自分の気持ちを分かってくれる人」という“信頼感”を育んでおくに他ならないと思います。その信頼が「今日も自分の味方になってくれるはず」という見通しとなって、子どもを安心に導くのではないでしょうか?
 実は、この「いつも自分の気持ちを分かってくれる人」という信頼感を抱かせるうえで効果的なのが、子どもに対して肯定的に接する「安心7支援」の継続的な実施です。子どもとの「意思疎通」は、子どもを見て、微笑み、子どもの話を聞き、子どもに穏やかに話しかける行為によるものですし、「楽しいね」「すごいね」等の「共感」も、子どもの様子を見たり話を聞いたりして、それに微笑みながらうなずく行為によるものです。子どもは日常的に母親が施してくれるこれらの愛情行為の繰り返しによって、「お母さんは信頼できる人」という認識を抱くようになるのです。それこそが、「安心7支援」によって愛着を形成することで、母親が子どもの心の「安全基地」として機能することの意味です。

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 さて、今回の放送分は以上ですが、実はこの翌週には「イヤイヤ期」の“第二弾”が放送されています。
 次回は子どもとの関わり方を重点に取り上げます。内容はより具体的になり、「それならできそう!」という実践方法が紹介されています。お楽しみに!