前回の続きです。
「小学校の評価は気にしない」ならば、親はどんな考え方で小学生の我が子を見守ればいいのでしょうか?実は、その点で大きな差がついてしまう場合もあると思います。それは…。
 
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【感想】
○さほど重要視されない小学校評価
「親も子も、「協調性」や「自主的に発言するかどうか」の「△」や「×」を気にしない」
「それでなくとも、小学校の先生は、提出する書類が多くて忙しいのですから。」
との記事中の指摘。これは、ただでさえ多忙な職務の中での評価作業であり、加えて、教師の「理想とする子ども像」に基づく主観的な評価で客観性に乏しいためと言えるでしょう。
   そもそも通知表の目的は「保護者に対して子どもの学習指導の状況を連絡し、家庭の理解や協力を求めること(法的根拠はなし)」(文科省参考資料「学習指導要領・指導要録・評価規準・通知表について」より)だけであり、通信票の成績は、進学の際に中学校に“引継ぎ”もされません。引き継がれるのは「指導要録」(在学する児童・生徒の学習及び健康の状態を記録した書類の原本。学校に作成・保管義務あり。補完は原則5年。学籍に関する記録は20年)です。しかし、それさえ中学校での成績に反映されることはありません。何らかの問題が発生した際に、小学校時代にどんな実態だったかを確認するための資料です。
   元教師の人間が言うのも変ですが、記事中の「基本的に、小学校の評価は気にしないことです。親は過剰に反応せず、参考程度に考えるのがいい」という指摘は的を得ていると思います。
 
○以前に比べた伸びや子どもの努力を評価することが大切
「小3ぐらいになると集団の中での自分の位置を意識し始めます。そんなとき、親は学校の評価に左右されず、『子どもが前より向上した、向上するために努力した』部分を認めてあげましょう」という記事中の指摘。つまり、子どもが友達と比べ始めた時に、子どもが正しい価値観を持てるように、親こそが子どもの中の伸びや良さに目を向けて見守ることが大切ということです。
   因みに、「(結果が)前より向上した」かどうかを見るのは、「学習の記録」「生活の記録」の欄、「向上するために努力した」かどうかを見るのは、「総合所見」です。前者では、とにかく「◎」や「○」の数が一つでも増えていれば、それは褒める対象となります。仮にそこで“結果”の向上が表れていない場合でも、その裏に隠れた“努力”が「総合所見」に書かれているはずです。
   子どもが通知表を持って帰ってきたら、まずは「向上」と「努力」を探して褒めてあげてください。注意したい事があるなら、極力その後です。敢えて通知表の大切な目的を挙げるとすれば、「子どもの意欲と自信を育てること」、私はそう考えています。
 
   また、次のような指摘も挙げられています。
「一番大事なのは、いわゆる『読み・書き・そろばん』。気にすべきは、テストや小テストの点数を中心に表れる部分」
これは、学期に一回の通知表ではなく、日頃の“努力”が客観的に表される「テストやミニテスト」での結果が大切だということです。なお、点数であらわされるからこそ、「○点以上でないと褒めない」という考え方(絶対評価)ではなく、子どもの中に良さや成長を見つける考え方(個人内評価)、しかも「今までよりも点数が良くなったら褒める」という考え方(縦断的個人内評価)で見守ることが大切です。そうしないと、子どもが点数と言う結果にこだわるようになり、「いい結果でないとダメ」と言う価値観が身についてしまい、結果が伴わない場合に結果を隠したり、結果について嘘をついたりするようになる場合もあります。
 
小学校時代には将来に必要な人間性の基礎を築く
「親が(技術向上の場を)用意していると、すべて受け身になる『小さな王子様』タイプの子が増えます。言われないとやらず、探究心がない。失敗する前に全て準備され、予行練習してクリアできてしまう」
という記事中の指摘。かけっこ教室や鉄棒教室など、子どもは親の用意してくれた練習の場で技術を習得することができても、積極性、探求心、不屈心等を身に付けることができません。目先の結果は取り繕うことはできても、将来に生きる能力を学ぶことができないのです。
 私は、小学校時代に一番大切なことは、例えば上記の「積極性」「探求心」「不屈心」等の将来に必要な人間性の基礎を築くことだと考えています。以前の記事で、将来に生きる能力を身につけるうえで大切な考え方として「キャリア教育」(「社会的自立のために『学力』よりも大切な4つの能力」参照)を紹介しました。その中で“身に付けさせたい4つの能力”として、「人間関係能力」「情報活用能力」「将来設計能力」「意思決定能力」を挙げました。これらが、上記の「積極性」「探求心」「不屈心」などの「将来に必要な人間性」と同じ意義を持ちます。
   中学校に入れば、部活動があり、その中でこれらの4つの力を学ぶことができますが、小学校では部活動はありません。だからと言って、かけっこや鉄棒などの目先の技術の習得だけにとらわれていては、進学後の部活動にさえついていくことができないかもしれません。つまり、小学校時代には、特に親御さんがどれだけ望ましい能力観を持っているかが大きな分かれ目になると考えることもできます。
 では、親御さんは、「キャリア教育」に示されている4つの能力観を具体的にどのように解釈すればいいのでしょうか?以下にその例を挙げてみます。
「人間関係能力」~友達と望ましい友人関係を築く力
「情報活用能力」~自分から進んで他の人に聞いたり調べたりする力
「将来設計能力」~自分がこれからどんな目標を持って取り組めばいいかを考える力
「意思決定能力」~自分の意思で物事を決める力
 
   例えば、子どもが長期休業の自由研究に取り組む時、お皿を割ってしまった時、テストの点数が良くなかった時、友達とけんかをしてしまった時、等の際に、親は子どもにどんな言葉をかければいいのでしょうか?


一考が必要かもしれませんね。