【今回の記事】

【記事の概要】
   夏休み、小学校の宿題に追われた家庭も多いと思います。筆者も、読書感想文のお手本を見て、レベルの高さにびっくりし、焦りました。二学期制の学校は、秋が通知表の季節。クラスに30人もいて、先生は細かいところまで評価できるのかとモヤモヤする保護者もいるでしょう。家庭教師歴40年超の西村則康さんに、小学校の評価をどう受け止めるか聞きました。


授業にアクティブラーニングを導入、評価も難しく
――小学校の通知表はどうなっていますか。先生は細やかな評価はできるのでしょうか?
   昔のような15段階の評価ではないですね。1年生の1学期は差をつけず、2学期から「よくできる・できる・もう少し」といった3段階になるところが多いようです。中には、段階をつけず、児童のいい部分を先生が書きこむ学校もあります。
確かに、先生が評価しきれない部分はあります。今までは、「ペーパーテストで〇〇点以上がこの成績」といった指標が中心でした。ところが最近では、議論やグループワークの「アクティブラーニング」が盛んになり、みんなで行動する授業を、先生が観察して評価をつけるように変わってきている。
   高学年になると、みんなで考えましょうというグループディスカッションがあり、リーダーシップを取れているか、相手の行動によって反応を変えられるかという点が見られます。児童の共感力が重視される傾向があります。先生は、全員のそういった態度まで把握しきれないでしょう。先生の「理想とする子ども像」で評価せざるをえません。親も子も、「協調性」や「自主的に発言するかどうか」の「△」や「×」を気にしないでください。それでなくとも、小学校の先生は、提出する書類が多くて忙しいのですから。

1の壁は、実は親の壁
――通知表だけでなく、音楽会や運動会の選抜に、作文・絵の貼り出し。先生の主観で決められているようで、不満を感じる保護者もいます。
   小学校の新しい生活にとまどう「小1の壁」は、実は親の壁なんですね。幼稚園や保育園では競争がなかったのに、学校では点数をつけられる。子どもを信じる気持ちが大きかった親も、信じられなくなり、学校の評価でぐらぐらしてしまうんです。それと同時に、親は他の家庭と比べる気持ちが強くなり、競争心を刺激されてしまいます。一方で子どもは、小1で環境の変化に直面しますが、まだそこまで競争心はありません。小3ぐらいになると、集団の中での自分の位置を意識し始めます。そんなとき、親は学校の評価に左右されず、「子どもが前より向上した、向上するために努力した」部分を認めてあげましょう

結果にこだわりすぎるのは、子どもの全体を見ていない
――プロに頼んで課題をクリアするという話も聞きますが。
   最近は、学校の運動会に備えて、かけっこ教室がにぎわっています。鉄棒のコーチをつける親もいますよ。「小学校は競争する場だから、勝ちたい」と、こういうことが盛んな地域があるんです。特に運動の分野は、順位を発表され、苦手な子にとっては苦痛だからです。
   でも結果にこだわりすぎるのは、子どもの全体を見ていないということです。鉄棒やかけっこだけに目が行ってしまい、子どもは様々な段階を経て成長していくということを、見落としてしまっているのではないでしょうか。
   そうやって親が(技術向上の場を)用意していると、すべて受け身になる「小さな王子様」タイプの子が増えます。言われないとやらず、探究心がない。失敗する前に全て準備され、予行練習してクリアできてしまいます。自立心が芽生える年齢になると、反抗するか、そのまま親の敷いたレールに乗っていくかに分かれますが……。いまや大学受験の予備校も、手取り足取り型が人気です。

小学校の評価は気にしないこと
――中学受験の際に、小学校の成績や生活の様子をまとめた「内申点」が重視される学校もあります。
   中学受験に影響するほど内申点を低くされる、という心配はしなくて大丈夫でしょう。稀に先生が中学受験に反対しているとか、お子さんに何かの問題があるとかで低くなるケースもあります。でも一般的には、内申点は平均より少し良い程度であればいいと思います。
   低学年の場合、一番大事なのは、いわゆる「読み・書き・そろばん」。気にすべきは、テストや小テストの点数を中心に表れる部分です。「正しく計算することができる」といった項目を見てください。
   基本的に、小学校の評価は気にしないことです。親は過剰に反応せず、参考程度に考えるのがいいですね。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   長くなるので「感想」については明日お話しします。
「小学校の評価は気にしない」ならば、親はどんな考え方で小学生の我が子を見守ればいいのでしょうか?実は、その点で大きな差がついてしまう場合もあると思います。明日はその点についてお話ししたいと思います。