【今回の記事】

   テレビでお馴染みの番組「はじめてのお使い」。ある日の放送から…。


《お使い①…「2歳10ヶ月の男の子が汚れたお父さんの仕事用のシャツをクリーニング屋に預けてくる」というお使い》

   子供が出発する直前にお父さんは玄関で長々と(30秒以上)お使いの内容や言い方を言葉で伝えます。すると子供は「嫌だ、嫌だ」と激しく抵抗し、なかなか出掛けません。そこでお母さんが登場し、「それじゃあお父さんお店できんよ」「パパお寿司屋さんやめてもいいの?」と子供を説得します。


《おつかい②…「2歳6ヶ月の女の子が、何十mも離れたお父さんのお店に忘れ物を届ける」というお使い》

   お父さんのお店に行くにはいちど道路を渡らなければならないのですが、女の子はまだ1人で道路を渡ったことがありません。

   それでも何とかお父さんへのお使いが終わり家に戻った女の子。その途端、お母さんは急に時計屋さんへのお願いを追加します。時計屋の前を通り過ぎ、「時計屋さんがない」と不安がる女の子はとうとう泣き出してしまいます。結局お使いが果たせず家に戻り母親に大泣きをします。それでも行けなかったことがとても悔しかったらしく、女の子は「行きたい!」と泣き出します。さらに女の子は「ママもいっしょに行こう😭」と大泣きしながら強くせがみます。それでも お母さんは1人で行かせようと娘と次のような会話をします。

母「泣いても…?」子「(泣きながら)解決しない!」

母「やるしか?」子「(泣きながら)ない!」

おそらくこの掛け合いは、普段から言い聞かせている合言葉なのだと思います。


【感想】

   この放送の中では、いくつか「?」と感じる箇所がありました。その点を挙げてみます。

◯「お父さんは玄関で長々とお使いの言い方を伝えます」

⇨子供は親の説明が長すぎて言われている内容が理解できず極度の不安を覚えるのでは?

◯「『それじゃあお父さんお店できんよ』『パパお寿司屋さんやめてもいいの?』と責める」

⇨不安感を覚えているところに更にプレッシャーを与えられるのでは?

◯「何十mも離れたお父さんのお店に忘れ物を届けるお使い。お父さんのお店に行くにはいちど道路を渡らなければならないのですが、女の子はまだ1人で道路を渡ったことがありません。

⇨まだ1人で道路を渡れない女の子に外へのお使いを頼むのは危険では?

◯親「泣いても…?」子「解決しない!」

   親「やるしか?」子「ない!」

⇨子供が納得していないまま大人の価値観を押し付けているのでは?


   この番組は今や国民的人気番組のようです。それはつまり、上記のように「可愛い子供には旅をさせろ」的な考え方を強く持つ親御さんが多いということの表れなのかも知れません。


   一方で、白梅(しらうめ)学園大学教授の増田修治氏は次のように指摘しています。

今の親御さんは我が子に対して、強くあること、何でも自分の力でできること、自立することを求め過ぎるために、子どもは『自分がいじめられているということは、自分が“ダメ人間”だということになる』という心理が働き、親にいじめの悩みを打ち明けられなくなるのです」

   つまり、子どもが親に打ち明けられずに自殺に至る事例が多発している中、親が子どもに「強くあれ!」と求め過ぎるのは実はとても危険なことなのです。


ベストな「はじめてのお使い」

   子どもが自分で考える前に親があれこれと干渉しすぎるのはよくありませんが、逆に今回の事例のように突き放しすぎるのも良くありません。

そこで、おススメな「はじめてのお使い」的支援方法があります。それは、

“背後にピッタリ”見守り4支援

です。

   これは、支援者が子どもの背後に立ち、「見守り4支援」をしながら子どもについて歩く、というものです。但し、子どもからSOSを求めてきた時や子どもに危険が及びそうな時には優しく助言します。親が背後に居ますが、子どもの自己決定によって行動が決められることには変わりありません


   また、たとえ実の親であっても、「うちの子はこれくらいできるだろう」と思い込んでしまっている事はあります。しかし、不意にそんなことが起きてもこの方法なら大丈夫。なぜなら、子どもが対応できないような不測の事態が起きても、直ぐにアドバイスを送る大人がその背後にいるのですから。

   ただし、子どもに助言する時や、子どもが上手にできた時等に注意することがあります。それは本来の「見守り4支援」を参照ください。


「背後自立4支援」の活用場面

   さて、この「背後自立4支援」は、どんな場面で活用できるでしょうか?いくつか挙げてみましょう。

・スーパーやコンビニ等での買い物

・公共交通機関の利用

・登下校の練習(特に入学後や転校後には必要)

・その他、子どもが日常生活の中で一人で行動することが多い場面


   子どもにとって、日常生活を送る上でどうしても必要な活動から、時に怪我や命にさえ影響するような活動まで多様です。しかし、これらの場面をいつも大人がついて歩くことは不可能です。そうなれば、できるだけ早い時期に、子どもに危険予測能力を身に付けさせることが必要になります。

   しかし、それは「車に十分気をつけて歩きなさい」等のような抽象的なものではなく、「信号機のないこのを渡る時は、一度ここに止まって、必ず左右を確認してから渡るんだよ。やってごらん」等のように、子どもが実際に活動する場面に即した具体的なものでなければ役に立たないでしょう。


   子どもが安心して挑戦できる、この支援方法はお勧めです!