【今回の記事】

【記事の概要】
子どもに「怖がるおどし言葉」を使っていませんか?
    自我が芽生える2歳ごろ。あれがしたい! これがしたい!と自己主張ができるようになり、嬉しい成長である反面…思い通りに行動してくれず、ママはヘトヘトになってしまいますよね。そこでなんとか言うことを聞いてほしくて、つい「鬼が来るよ!」「おばけに連れていかれるよ!」「もう、おまわりさんに連れていってもらおう!」なんて子どもが怖がる“おどしの言葉”を使ってしまうことはありませんか?これが「おどし育児」。こうしたことをいつもしていると、子どもはただ怖いから言うことを聞き、どうしてその行動をしなければいけないのか理解できないようになってしまうと言われています。また自分をおどしてばかりいるママへの信頼感が減ってしまうことも…。


ちょっとの工夫でHAPPY育児に
「おどしているかも!」とドキッとしたママも大丈夫。小さな工夫をするだけで劇的に変わる方法をお伝えします。たとえば、夜なかなか寝ない時。同じ「おばけがくる」設定でも、「あ!そろそろおばけがきちゃう!大切な○○ちゃんが連れていかれたら大変だから目を閉じて」と、あくまで子どもの味方として伝えます。そうすることで子どもはあわてて目を閉じますが、ママへの信頼感はなくなりません。そして、布団に入ることができた時や目を閉じた時には、「しっかり眠れたら明日も元気に遊べるね」「大きくなるね」と、どうして眠るのか、その理由も伝えます。少しずつでも何のためにそうしなければいけなかったのか、子ども自身が学んでいきます。

今のわが家の定番は「魔女」
    現在3歳を過ぎた筆者の娘。イヤイヤ期のピークは越えたものの、まだ遊びたい!という気持ちからなかなか布団に入ろうとしません。そこで、娘が大好きなプリンセスのひとり、ラプンツェルごっこを始めます。娘は髪が長いので、「本当にきれいな髪だね~、ラプンツェルみたい!あ!魔女が盗みに来るー!」と声かけすると「キャー!かくれなきゃ!」と布団にもぐりこみます。「ママも髪の毛切られちゃうよ」と言われ筆者も「一緒にかくれるね!」と布団に入ったり、「ちょっと魔女が来ていないか見はってくる!」と言って、自分自身の寝る前の支度を済ませたりもしていました。最近ではこの展開に慣れてきて、「寝る時間だね」と声かけするだけで「魔女が来るから寝なきゃね」と怖がる様子もなく布団に入っていくことも。すっかり寝るための導入になりました。さて、次のネタは何にしようかな?  なんだかんだ楽しみにしている筆者です(笑)。

【感想】
    今回はいわゆる「動機付け」についてのお話になります。「動機付け」とは、「やる気になる“きっかけ”」のことです。心理学では、動機付けには「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の二つがあるとされています。外発的動機付け」は行動の要因が評価・賞罰・強制などの人為的な刺激によるものであるという考え方に対して、「内発的動機づけ」は行動要因が内面に湧き起こった興味・関心や意欲によるものであるという考え方です。
    今回のような「鬼が来るよ!」「おばけに連れていかれるよ!」「もう、おまわりさんに連れていってもらおう!」等の声がけは、“罰”の存在を知らせるものなので、「外発的動機付け」になります。昨年、ユネスコ無形文化遺産に登録された「来訪神」である「なまはげ」は、「悪い子はいねがー?!👹」と言って子ども達に襲いかかります。これによって、言うことを聞かない子どもがいれば、「なまはげが来るよ!」と叱るのです。これも“罰による脅し”なので、「外発的動機付け」になります。
    これらのような“罰”を与える、ことによる動機付けの他にも、「テストで◯点以上とったら◯円あげる」「お手伝いしないとクリスマスプレゼントは無し」「◯◯してくれたら今日のお風呂掃除はしなくていい」等、“賞”をあげる、“賞”をあげない、“罰”を無しにする、ことを動機付けにすることも「外発的動機付け」に当たります。

    外発的動機付けのメリットは、子どもにとって強烈な刺激を用いるため、“即効性”があることです。逆に、デメリットは、外部からの刺激が無くなると、動機付けがなされなくなることです。「鬼が来るよ!」「おばけに連れていかれるよ!」「もう、おまわりさんに連れていってもらおう!」等と言うことは子どもが年齢を重ねれば嘘だとバレます。そうなれば、子どもはもう行動を改めようとは思わなくなるでしょう。子どもに通用しなくなれば「次のネタ」を考えなければならなくなります。更に通用しなくなれば、また次のネタを…。この繰り返しになります。
   また、「外発的動機付け」では、子どもの人間的成長は図られません。ただ怖いから言うことを聞き、どうしてその行動をしなければいけないのか理解できないようになってしまうリスクがあります。
    その一方で、「内発的動機付け」のメリットは、その反対で、「ネタ」に頼る必要がなく、その行動をなぜしなければならないかが分かり、より良い自分になろうとするきっかけにできることです。

    子どもが幼くても、子どもに分かる表現で、出来るだけ「内発的動機付け」がなされるように工夫することが大切だと思います。早く寝てほしいのであれば、早く寝ることでどんな“いいこと”が起きるのかを具体的に教えてあげるのです。記事中には、「布団に入ることができた時や目を閉じた時には、『しっかり眠れたら明日も元気に遊べるね』『大きくなるね』と、どうして眠るのか、その理由も伝えます。」とあります。このことを布団に入ろうとしない子どもに「しっかり眠れたら明日も元気に遊べるよ」「しっかり眠れたら大きくなるよ」と話してやるのです。
    更に、「内発的動機付け」にとっては、行動を改めることができた時に必ず褒めることが大切です。褒められることによって、「また良い行動をしよう」と言う子どもの意欲化が促進されるからです。

   最後に、「記事の概要」では紹介できませんでしたが、この筆者は上記記事の中で「もちろんなんのおどしもなく、穏やかな気持ちで行動してくれるのが一番。それは分かっていても一筋縄ではいかないのが子育てです。」と述べています。つまり、理想的な方法がどの子どもにも必ず当てはまるとは限らないのです。子どもの実態に合わせて支援することが大切です。
    特に、発達障害の子どもに対しては、逆に「外発的動機付け」を用いる方が効果的である場合があります。それは「トークンエコノミー法」と呼ばれる支援方法です。これは、子どもの望ましい行動に対して、シールやご褒美を与えて動機付けする方法です。詳しくは、「なかなか直らない子どもの行動改善に効果抜群!「トークンエコノミー法」」をご参照ください。