トークンエコノミー法」とは、望ましい行動に対してトークン(代用貨幣)という報酬を与え、目標行動の達成度を高める行動療法の技法です。特にADHD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害を持つ子どもの行動改善のために実践されることが多いものですが、日常の子育て場面(トイレットトレーニング、着替えの練習、おもちゃの片づけ、好き嫌いの解消等)でも活用する家庭が増えてきています。
   この技法は、目標が極めて具体的な行動目標に限定されるので、子どもも何をしたらいいかが分かり取り組みやすいです。そのうえ目標を達成したらご褒美としてトークンを与えられるので、特に普段から失敗体験が多い発達障害の子どもほど効果があります。しかも、トークンが一定量溜まったら、さらに別のご褒美と交換できるという“二段階のお楽しみ”があるので、子どもはゲーム感覚で楽しみながら取り組むことができます。

    具体的な取り組み手順は次の通りです。
①具体的な“行動目標”を一つだけ決める。(今一番頑張ってほしいことで、子どもに達成可能な具体的な目標を子どもと相談してきめる。例〜「友達をたたかない」「宿題をしてから遊ぶ」等)
②シールが一定量(たとえば10個)溜まった時のご褒美を子どもと相談して考える。(例〜「土日に好きなDVDを一枚借りられる」「ある日の夕食をその子の好きなおかずにしてもらえる」等、親の負担過重にならない程度の内容にする。)
③取り組みカードを作る(トークンとは、実際には小さい“丸シール”になるので、そのシールを貼るいわゆる“ポイントカード”を作る。シールも子どもが好きなキャラクターなどのシールであればなお良い。シールを貼る欄は、始めは10個分くらい貼れるスペースを作る)
④一回達成できたらシールを1枚必ず褒めながら貼ってあげる。(普段叱られてばかりで褒められることの少ない発達障害児に対して褒める機会を増やすことが大きなねらい。子どもにとっては“もらえらる喜び”よりも、実は“褒められる喜び”のほうが大きい。)
⑤一定量シールが溜まったら、相談していたご褒美をこれも④以上に褒めながらあげる。(なぜならば、このご褒美のためにそれまでコツコツと努力を重ねてきたのですから!)
⑥取り組みカードを新しくしてまた始めから取り組ませる。(2枚目からは11個というように、少しだけレベルをあげる。)
⑦取り組む力がついてきたら、“行動目標”を少しづつレベルアップしていく。

   行動目標が学校でのことであれば、担任の先生にお願いしてシールを貼ってもらいましょう。取り組みカードは、目標を忘れないように机の隅に置いておかせるとよいと思います。
   シールの枚数やご褒美の内容などは、あくまで子どもや家庭の実態に合うような取り組ませ方をしてください。