【今回の記事】

【記事の概要】
《相談内容》
   反抗期の小5男の子を持つ、母です。息子は極度の面倒くさがりで、興味対象が少なく、諦めが早いです。日常、宿題→やりたくない→寝転がる→そのまま1~2時間ダラダラ→「やりたくない」「できない」と泣き出す。寝転がる→私が注意するキレる悪態をつく→うるさいこと言われたからやりたくない→物を投げる→泣き叫ぶ……という感じです。そのあと、落ち着いて宿題をやると、15分もしないで終わります。「お母さん、終わった、明日からはちゃんとやる」と言いますが、次の日も同じことの繰り返しなのです。プライドが高く完璧主義ですが、努力はしません。なので、勉強することよりも、間違いを直すこと、覚えるために字を書くことが嫌いです。私も、手をかえ品をかえするのですが、やはり、最終的に息子の態度に怒ってしまいます。反省してはいるのですが、やはり、リモコンを投げつけられたり、棒を振り回されたりすると、捕まえて手を上げてしまうことも……。本当に一筋縄ではいかないのですが、どうしたら、逃げ出さない壁に向き合うことを理解させられますか?(仮名:伊藤さん)

《回答内容》
不正解を避け、様々な方法を試す
   かなり大変な毎日のようですね。お子さんを何とかして、「理想的状態にしたい!」という気持ちがよく感じられます。その親の愛情を受けて育つ子は幸せです。しかし、アプローチを間違えると日々、親子共々つらいだけになってしまいます。子育て・家庭教育の方法に絶対唯一の正解はありませんが、不正解はあります。つまり、適切な子育てのアプローチは多種多様ですが、一方でこれはやってはいけないといういくつかの不正解はあるのです。その不正解さえ避けておけばあとは、様々な方法を試してみるといいでしょう。
   ではその不正解とは何か? それは「今やっている方法」です。今現在の方法が間違っていないのであれば、そのままやるといいでしょう。しかし、うまくいっていないないのに、なぜか続けてしまうという不思議。では、伊藤さんの「逃げ出さない、壁に向き合うことを理解させるにはどうすればいいか」というご質問にズバリとお答えしましょう。「それはできません」これが回答です。つまり、「そのようにすることはできないので諦めてください」という意味です。「え?」と思われることでしょう。もう一度言います。「諦めてください。逃げ出さない、壁に向き合う子にすることを一切諦めるといいでしょう」「なんということを言うのだ!」と思われるかもしれません。しかし、それが解決方法なのです。
親の感情の問題が解決しないと何も変わらない
   お気づきになっているかもしれませんが、今、直面している問題というのは、お子さんの問題ではなく、親の問題なのです。親の感情の問題なのです。親が自分の感情コントロールできないために発生している問題なのです。目の前の子どもの状態を見て、「カッ」ときて、あれこれ言ってみたり、あれこれ手をだしてみたりするのです。この感情の問題が解決しないと、現状は何も変わりません。
   しかし、「落ち着いてお子さんの気持ちになってください」とか「もっと子どもに寄り添ってあげてください」というレベルのアドバイスでは、解決しません。感情の問題というのは、そう簡単に解決できないのです。ではどうすればいいでしょうか。それが「諦める」なのです。一切、子どもに「こうなってもらいたい」という期待を捨てましょう。「期待」と「絶望」はセットでやってくるのです。ですから今のケースでいうと、粘り強い子になってもらいたいチャレンジする子になってもらいたいきちんとした子になってもらいたいという「期待」を捨てるのです。
   現在の伊藤さんが置かれている親子関係はかなり深刻な状態であるため、このようなアドバイスをしています。そうでなければ「諦める」という言葉は使いません。しかし、伊藤さんのような状況には、「諦める」は効果てきめんなのです。「諦める」とどうなると思いますか。もっとひどいことになると思われるかもしれませんが、そうはなりません。逆の現象が起こり始めます。実は、こうしたケースをそれこそ数多くみてきました。親が何とかして子どもを勉強に向かわせたい、不登校で早く学校に行ってもらいたい、宿題をきちんとやる子になってもらいたい、と親が強く思えば思うほど、それとは逆の現象が起こるというものです。笑い話のようですが、実話で次のようなことがありました。
押し付けると反発し、引くと寄ってくる
   毎日毎日子どもに勉強することを強制し、やっているかどうか管理しているママさんがいました。そのママさんの口癖は「この子は言わないとやらないので、私が管理しないといけないのです」と。やがて、子どもが大きくなり中学生になって思春期・反抗期に入りました。すると、親の強制に反発していきますそれでもそのママさん、“頑張り”ました。そして頑張れば頑張るほどお互いつらくなっていきます。そのうち親も疲れ果てて、子どもを自分の枠に入れることを諦めたのです。すると、子どもは自主的にやるようになっていったのです。不思議ですよね。押し付けると反発するし、引くと寄ってくる。人間関係も物理学の力学の法則と同じようなことが起こります。もしどうしても「諦めることができない」というのであれば、今後もこの“格闘”がずっと続くことを覚悟するしかありません。でも、少しでも「諦める」ことができるなら、ぜひ試してみてください。しかし、やるからには本気で諦めなければなりません。表面的に諦めているだけなら、すぐに元に戻ってしまいますから。ただし、この「諦める」というのは、親が今子どもにかけている“過剰な期待”を諦めるのであって、子育てを諦めるとは異なります。そこは間違えないようにしましょう。日常は子どもと楽しく会話をして、信頼関係を作ってください。子どもの変化に驚くことになるでしょう。

【感想】

「宿題→やりたくない→寝転がる→そのまま1~2時間ダラダラ→「やりたくない」「できない」と泣き出す。寝転がる→私が注意するキレる悪態をつく→うるさいこと言われたからやりたくない→物を投げる→泣き叫ぶ」
母親という相手に対する“攻撃行為”を始めるのは、母親が注意した後です。それ以前は、攻撃行為はありません。つまりは、母親が火に油を注いでしまっているのです。
   その事に関わって、私はこのブログの中で「させるオーラ」と言う言葉を次のように紹介しています。
「『ちゃんとしつけよう』『ちゃんとさせよう』と子どもの前に立っている親の表情や態度はどうなっているでしょうか?眉間にシワが寄って、目はギラギラ…?口から次から次と繰り出される言葉は語気が強く、時には子どもの腕を引っ張って、力づくでも言うことを聞かせようとするかもしれません。 そういう時の親が発する、えも言われぬ“恐怖のオーラ”を子どもは敏感に感じ取り、親との間に心理的な壁を感じて近づきにくくなり、更には親への反発心さえ生まれ、親の言うことを聞かなくなるのです。」
本記事の中で、「親が何とかして子どもを勉強に向かわせたい、不登校で早く学校に行ってもらいたい、宿題をきちんとやる子になってもらいたい、と親が強く思えば思うほど、それとは逆の現象が起こる」と紹介されているのはそのためなのです。

   また、本記事に登場するママさんの口癖は、「この子は言わないとやらないので、私が管理しないといけないのです」でした。これがいわゆる「親の過干渉」と呼ばれるものです。この“過干渉”が、先のように子どもに攻撃行為をさせてしまうのです。ですから、
「どうしても『(子どもへの期待と干渉を)“諦める”ことができない』というのであれば、今後もこの“格闘”がずっと続くことを覚悟するしかありません」
「ただし、この“諦める”というのは、親が今子どもにかけている“過剰な期待”を諦めるのであって、“子育て”を諦めるとは異なります」
つまり、「諦める」のはあくまで「過剰な期待」であって、子どもを「見放す」とは違うのです。「期待はしないが見放してもダメ」、何やら難しそうですが、そのさじ加減を丁度よく具現化する方法が見守り4支援」によるサポートです。この方法は、子どもが自立した大人に成長することを願って、親は過干渉をやめ、子供に任せて「見守る」支援です。記事中に「押し付けると反発するし、引くと寄ってくる」と言う記述がありましたが、この「自立4支援」では、普段は見守っていますが、子どもの方から「SOS」等があった時には応じます。つまり、子どものニーズに応じて親子間の関わりが持てると言うわけです。

   しかし、思春期の指導は子どもの態度が一度悪化してしまうと、それを改善するのは難しいものです。その一方で、あらかじめ対応法が分かっていることによって、子どもの実態の変化に合わせた対応ができるので子どもの問題は深刻化しません。車のマニュアル車に例えるなら、平地を走っていた車が急な坂道に遭遇した時に、相変わらず5速のまま登ろうとすると車はエンストしてしまうかも知れませんが、すぐに2速にギアチェンジすれば、車にかかる重力に応じて車のパワーを変えることができるので、問題なく登ることができるのです。