【今回の記事】

【記事の概要】
   何年か前から耳にする「おひとりさま」という言葉。1999年頃ジャーナリストとして活躍していた故・岩下久美子さんにより提唱されました。元々は女性が一人で自由に自分の息方を決め、自立した人間として趣味や旅行を楽しむという意味がありましたが、次第に意味が変化し、今では主に「お店に一人で行く人」のことを指す言葉として使われるようになっています。これは女性に限りません。
 今、「おひとりさま」サービスが充実しつつあります。専用のお店ができたり、一人で快適に過ごせる席が用意されていたりと、気軽に一人を楽しむことができる時代になってきました。その背景はいったいどこにあるのでしょうか。
増える「おひとりさま」ビジネス
 @niftyニュースの「何でも調査団」での「外出時、一人で行動することが好きですか?」というアンケートでは、「好き」と回答したのが73%、「嫌い」と回答したのは8%と、一人で行動するのが好きな人が圧倒的に多いという結果が出ています。
 では一人が好きな人は、どんなところに行くのでしょうか。喫茶店ファミリーレストランは、割とハードルが低いようですが、一人でどこへでも行くという人は、美術館水族館遊園地なども一人で楽しんでいるようです。
 こうした需要に目をつけ、「おひとりさま」にとって心地よいサービスを提供するお店が増えています。
 例えば、カラオケ店。皆でわいわいするのではなく、一人で思いっきり歌ってストレス発散、または本気で練習をしたいという方のために、「ワンカラ」「ヒトカラの鉄人」といった、一人カラオケ専用のお店が増えています。
 また、ラーメン屋では長いテーブルに一席分だけ仕切りがあり、気兼ねなく一人で食べられる「一蘭」という有名なチェーン店もあります。
 東京ディズニーリゾートでも、「シングルライダー」が人気です。この制度は、複数の乗客がアトラクションに乗った際に、席が余った場合、一人で来た人が優先的に乗れるというものです。
 旅行会社も「おひとりさま」人気を受けて、一人旅ができるツアーを考えているところが多くなっています。


「おひとりさま」が増えた理由
 なぜここまで「おひとりさま」が増えたのでしょうか。それにはさまざまな理由があります。
 厚生労働省が発表した「生涯未婚率の推移」では50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合が1985年の男性3.9%、女性4.3%から、2010年には男性20.1%、女性10.6%と、男性は4倍以上女性も2倍以上になっていることがわかります。そして以降の推測値は、さらに増えていくと予想されています。非婚化が進むということになれば、シングルでいかに楽しむかを考える人が増えたというのも頷けます。

   ストレスの多い現代社会、ときには誰にも干渉されずに自由気ままに「おひとりさま」を楽しむのも良いのではないでしょうか。

【感想】
   今回の投稿は、「『おひとりさま』が社会のどんな側面を背景に生まれた現象なのか?」という私自身の疑問がキッカケでした。
   まず、記事では、「1999年頃ジャーナリストとして活躍していた故・岩下久美子さんにより提唱された」とあります。これによって、「おひとりさま」という現象が1999年頃生まれたということが分かります。
   更に記事には「生涯未婚率は、1985年の男性3.9%、女性4.3%から、2010年には男性20.1%、女性10.6%と、男性は4倍以上、女性も2倍以上になっている。そして以降の推測値は、さらに増えていくと予想されている。」とあり、「おひとりさま」の現象が増加中であり、今後も同様の傾向が予想されるという推移が分かります。

   さて、以下に示したのは、携帯電話の世帯普及率の推移を表したグラフです。


このグラフを見ると、1995年以後、携帯電話やPHSの普及率が劇的に増加しています。この1995年という時期は、ジャーナリスト岩下氏が「おひとりさま」を提唱した1999年頃の5年前です。

   ところで、「愛着」研究の第一人者である岡田尊司は自身の著書の中で次のように述べています
「さらにそうした事態(人との繋がりが希薄になる「自己愛」の風潮)に拍車をかけたのが、情報化の急速な進展と、映像メディア、パーソナルメディアの爆発的な普及でした。」

   この岡田氏の指摘と、「おひとりさま」が初めて提唱された1999年頃の5年前から携帯電話やPHSの普及率が劇的に増加している事実とを重ね合わせた時に、やはり岡田氏の言うパーソナルメディア、つまり携帯電話やPHSが1995年以後急増し、約5年の月日をかけて、人との繋がりが希薄になる「自己愛」の風潮が更に高まったことが「おひとり様」の顕在化に影響を与えた、と考えることは決して不自然な考え方ではないでしょう。
    更に、先の「生涯未婚率は今後も増加していくと予想される」という指摘と、2011年時点で既に携帯電話(PHSを含む)の保有台数が1人1台を上回る台数を保有している計算になったと言われる指摘とから、今後も「おひとりさま」が増え続けていくことは確実だろうと思います。

    因みに、先日投稿した記事の中で、「若者の“長生き志向”に限りが見られる」という記事を紹介しました。その中で、愛着不全の特徴の中には、次のようなものがあることをお知らせしました。

・未来に絶望を感じている。

・心から楽しんだり喜んだりできない。

・自分自身、人間関係、人生に否定的な考えを持っている。

   我が子が、自分の人生に対してネガティブな意識しか持てずに、誰とも結婚せず、孤独な老後生活を送ることは、親として耐え難いことです。


   しかし、先述の岡田氏の指摘により、スマホ所有率の更なる高まりによって、今後も人との繋がりが希薄になる「自己愛」の風潮が高まり、少子化に拍車がかかるのではないか?という“危惧”は、“「おひとりさま」の増加”という明白な事実によって、異性の人間と人生を共にしようとする若者が減っていっているという明らかな“現実”となって、私達の前にハッキリと立ちはだかっているのです。

   各家庭においては、家族間のコミュニケーションを確保するために、スマホの使用をいつやめさせるか?ということについて、真剣に考えなければならない限界時期が迫っているように思います。