【今回の記事】
【記事の概要】(一部、項目タイトルを変更しています。)
学校に行かずネットゲームにハマる子供
   これは昨年、私( ITジャーナリスト高橋曉子が関東地方のある公立中学校に講演に行った際、生徒の母親から相談された事例だ。「息子は今日も学校に行かないんです……」と、彼女は深刻そうな顔で言った。彼女から成績の下降を強く叱責されたことがきっかけで、息子の山崎佳祐くん(仮名)はその講演会の1年ほど前から自室にこもって昼夜問わずネットゲームに入り浸るようになった。ゲームをやめさせようと彼女は彼のパソコンを取り上げたこともあったが、怒鳴ったり、物を投げたり、叩いたりするようになって逆効果だった。ネットゲームに依存するまではかなり良い成績だっただけに、それでも彼女は連日、佳祐くんを責め立てた。しかしその度に、大げんかになり、次第に彼は学校を欠席しがちに。2年生に進学してからは、とうとう1日も学校に行かなくなってしまったという。


親がすべきはセルフコントロール力」の育成
   最近は注意を促す報道や番組も増えているため、わが子がネット依存になることを恐れて、「子どもにスマホを持たせたくない」「パソコンの利用を禁止したほうがいいのでは」と考える保護者も多い。しかし、その考えはあまりおすすめしない。家庭には、スマホやパソコン以外にも学習用タブレットやゲーム機などネットが使える端末は多くある。もし子どもが隠れて使うと、トラブルに直面したとき親に相談できず、問題が深刻化する可能性があるからだ。
   インターネットをまったく使わせないのは、現実的ではない。ネット依存を遠ざけたければ、子どもの「セルフコントロール力」を養ったほうがいい。たとえば、ネット依存の治療に長けた医療機関が採用している「認知療法自分が置かれている状況を冷静に見直す治療法)」が参考になる。もし自分の子どもがネット依存症の疑いがあるようだったら、一度ネットやゲームの利用時間を紙に書かせて、可視化させたほうがいい。そうやって「置かれている状況を客観視させることが、セルフコントロール力の向上につながる。
   ちなみに冒頭で紹介した佳祐くんも、その後、なんとかネット依存専門の外来で認知療法を受けられるようになった。彼の場合、毎日ネットゲームのプレイ時間を記録することで、一日のうち寝る以外はゲームをしている状況や、これまで自分がゲームに費やした時間の総量を把握して、われに返ったそうだ。ゲームでは強くても学校に行かず、友達もいない自分の状況を客観視して、「ゲームはやめたほうがいいかもしれない」と言えるまでに変わった。まだ以前のように学校には通えていないそうだが、これから徐々にゲームのプレイ時間を減らしていけば、正しい生活リズムを取り戻すことはそれほど難しくはないだろう。

「他に熱中できるもの」を持つことも大事
   また、他に「やりたいこと」や「将来の目標」がはっきりしている子は、依存症にはなりづらい。逆に、やりたいことや目標などがない子ほど、友達の誘いや誘惑に引っかかってしまい、ズルズルとネットを使い続けて依存症になる傾向にある。もし自分の子どもが後者であるなら、積極的に目標ややりたいことを見つける手助けをすることをおすすめする。たとえば子どもが受験を予定しているなら、志望校の学園祭や説明会などに参加させて、「この学校に行きたい」という気持ちをかきたてるなどだ。
   子どもが小さい場合は、目標を持たせることが難しいこともある。実際、わが家でも当時まだ幼稚園児だった息子が、夫のダウンロードしたスマホゲームにはまってしまったことがあった。ゲームをアンインストールしても、欲求は収まらなかった。しかし、息子が小学校に入学して、けん玉にはまってからは「ゲームをやりたい」とねだらなくなった。けん玉では他の子どものトップに立てたため、1人でゲームをしているより楽しかったようだ。他に夢中になれることがあれば、子どものゲームやネットの優先順位は低くなる。外遊び習いごとをさせるなど、子どもが小さいときは可能なかぎりスマホを使えない環境におくといいだろう。
   ネットやスマホは非常に魅力的なツールだ。大人でもゲームやSNSに熱中し過ぎる人は少なくない。大人でさえのめり込みすぎるものを子どもだけで使いこなせるようにするのは難しいのだから、きちんとルールを作って、保護者が見守りながらうまくコントロールできるよう練習させることを推奨する。ルールを作る方法については、過去の記事「子どものスマホデビュー、知らないと怖い基本」を参考にしてほしい。

【感想】
   子どもを不登校にさえ陥らせるネットゲーム。世界保健機関(WHO)が改訂作業を進めている疾病に関する国際統計分類(ICD)新版の草案で、精神衛生症状の項目に「ゲーム障害」が盛り込まれたことからも、世界的な問題であることが分かります。
   さて、ここでは、以下の子供の実態別にゲーム障害にさせない為の対策について考えたいと思います。
これからスマホやPCを持たせる場合
既にスマホやPCを持っているが、まだ事態が深刻ではない場合
既にスマホ依存が進行している場合

これからスマホやPCを持たせる場合
   この場合は、“適切なルール”を設定することを条件に購入することが大切だと思います。更に、守れなかった場合のべナルティティについても納得させておく必要があります。約束を守らないと、自分にどんな不利益が生じるかが 分かっていれば子供は努めて好ましい行動を取ろうとします。
   なお、ルールの設定に際しては、本記事筆者の過去の記事「子どものスマホデビュー、知らないと怖い基本」を参考にすると良いと思います。

既にスマホやPCを持っているが、まだ事態が深刻ではない場合
   この場合は、より魅力的なゲームが登場した場合には、今後のめり込む可能性も考えられます。そこで、今のうちに“ルール”を導入させると良いと思います。
   ただし、今までなかったルールを取り入れるのですから、「なぜ今ルールを?」と言う子どもの疑問に答えるだけの理由を知らせることが必要です。その際は、今回の記事のような事例を見つけたと紹介して、そのようなゲーム依存を未然に防ぐという目的を知らせると良いでしょう。

既にスマホ依存が進行している場合
   まず、記事にあるような親による厳しい叱責機材の取り上げ厳禁です。この場合、子供の猛烈な反発を招くことは必然で、それをキッカケに親子関係が崩壊して不登校に陥ることも十分考えられます。その意味で、「『スマホ漬け』の子を性根からたたき直す知恵」と言う今回の記事のタイトルも、大人の強力な力によって改善するという印象を与えるもので、適切な表現とは言い難いと感じます。また、記事にあるように、親の目を盗んでゲームを続けることも十分考えられます。その場合、多額の課金等の重大事態に陥った時に親に相談できず、大事になる危険もあります。
   何よりも、子どもから機材を取り上げてしまうと、子どもに「セルフコントロール力」が身に付きません。「セルフコントロール力」というものは、その対象に関わる経験を通してしか鍛錬できないのです。“泳ぐ力”は実際に水に入らないと身に付かないのと同じです。

   また記事では、「ゲームの代わりに打ち込めるものを見つけさせる」ことも紹介されています。いわば、ゲームに代わる“心の拠り所”になるものを与えるのです。ただ、既にゲーム漬けになっている状況では難しいかも知れません。

   私が個人的にお勧めするのは、まず、記事中で紹介されている、毎日のネットゲームのプレイ時間を記録することで、自身の状況を客観的に把握させる「認知療法」です。ゲームに没頭していると、自分の現状に気付かない場合が殆どなので、これは有効だと思います。実際、記事の冒頭で紹介された子どももこの方法で我にかえったと言います。
   もう一つは、「シェイピング(スモールステップで少しづつ直していく)」による改善方法です。例えば、目標時間を毎日5分ずつ短くしていきながらできたらその度に必ず褒める”という方法です。「無理なく少しずつ」これは、どんな問題の場合でも大切な考え方です。

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   更に、①〜③のいずれの場合にも共通することがあります。
   それは親子間の「愛着愛の絆)」を維持したり回復したりすることです。以前の記事で紹介しましたが、精神科医の岡田氏は、「愛着」は人間の様々な面に影響を及ぼすとし、その中で「『愛着』の欠如は様々な依存症を招く」と指摘しています。依存症に陥っている人は、親との「愛着」が不安定なために、本来困った時に自分を癒してくれるはずの「安全基地」を持ちません。その為に、手近に得られる“代わりのもの”に依存してしまいやすい傾向があります。「安全基地」以外の手っ取り早い方法で自分を慰めてストレスを軽減させようとするのです。今回の場合は、その「手近に得られる“代わりのもの”」がネットゲームなのです。
   その為には、日常的に「愛着7」のような愛着を形成する為の愛情行為を子どもに施すことが何よりも大切です。依存症が進行しているような場合には、より効率的に「愛着」形成ができるような工夫が必要になる場合もあります。