あるテレビ番組で、今や“時の人”となった大リーグ、エンジェルス大谷選手のご両親の養育の仕方が特集されていました。

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   翔平少年は、家から帰ってきたらまず家族みんなでリビングでテレビを見ていたそうです。それが終わると、そのままリビングで兄弟で宿題をしていたそうです。兄と共用の部屋はあったそうですが、自分の勉強部屋はほとんど使わなかったとのことです。


   また、翔平少年は当時ガリガリの体型だったそうですが、母親は無理に「食べなさい!」とは言わなかったそうです。その代わり、できるだけ楽しい雰囲気の中で食べさせようと思い、父親の帰りを待ってから全員で食べさせるようにしたそうです。休みの日には家族みんなでホットプレートでワイワイ食べたそうです。

   世の中には、子供だけでなく親も食事中にスマホなどをいじる家庭があるそうですが、「食事は家族で楽しく過ごす時間」と考えている大谷家では決して見られない光景なのでしょう。


   さらに、夫婦喧嘩をしても、それを子供に見せないようにしていたそうです。子供の前で親が喧嘩をすると、家の中の雰囲気が暗くなり、先のような家族の交流が妨げられるので、子供の前では喧嘩をしないように気をつけていたとのことです。


   また、先のお母さんと同じく、お父さんも、子供に対して努めて厳しく叱らないようにしていたそうです。そのため、反抗期らしい反抗期がなかったとのこと。だからと言って、当然反抗期の発達課題である「自我の発達」が無かったわけではないはずです。なぜなら、「自我の発達」がなければ、今の彼の“信念ある行動”はありえないからです。「反抗期」という名前は、親が子どもの自我の発達を生意気だと捉え、それを強い言葉で抑えつけようとするために子どもが反抗するケースが多いことから付いた名前のような気がします。子どもの「自我の発達」を尊重してそれを活かせば、翔平少年のように余り反抗しないのでしょう。


   総じて、大谷選手は、親からの厳しい叱責や無理強いが余り無い、家族の楽しい雰囲気を大切にする家庭環境の中で育ってきたことが分かります。このことは、家族間の「愛着(愛の絆)」を形成・維持するうえで、とても望ましい生活環境だったということが言えると思います。そのために大谷選手は、他人を信じ積極的に交流し、問題が起きても前向きに考えることができる「安定型」の愛着スタイルを身に付けたのでしょう。


   中には「甘すぎるのでは?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし現実的には、精神科医の岡田氏が最も危惧しているように、どの家庭でも「うるさい!」「はやくしなさい!」「何回同じことを言わせるの!」「もうあなたのことなんか知りません!」等の「否定的・支配的養育態度」によって愛着不全に陥るケースが大変多く見られます。

   たとえ厳しい言葉をかけなくとも、大谷家のように、食が細くても母親がそれを責めなかったり、何らかの失敗をしようとも父親が必要以上に厳しく叱らなかったりと、子供の“ありのままの姿”を肯定的に受け止めることによって、子供の「自ら伸びよう」とする気持ちを育むことができるのです。


   “野球選手大谷翔平”の能力は、スポーツマンだったご両親の血筋を受け継いだものだと思いますが、“人間大谷翔平”の人格は、生後の親の家族間の「愛着(愛の絆)」を大切にした養育環境で形作られたものです。また、今回紹介した大谷家の養育の仕方は、決して特別なものではなく、意識次第でどこの家庭でも実践が可能なものです。家族間の“愛の絆”を大切にして、大谷選手のようにみんなから愛される大人に育ててあげたいものです。