私は、平成25年1月9日から3月15日の間に、県からの推薦を受けて、神奈川県にある国立特別支援教育総合研究所に長期出張(情緒教育専修)に行かせていただきました。
   そこでは、日本のトップクラスの講師陣が次々といらして講義をしてくださいました。その講師の先生方の中に、当時中京大学に在籍していた鯨岡俊先生がいらして講義をしてくださいました。普通の講義は3時間なのですが、全講義の中で鯨岡先生の講義だけが6時間でした。研究所が如何に鯨岡先生の講義を重要視しているかが分かりました。
   鯨岡先生の講義の中で、私が一番感銘を受けたのは、「子どもの『ある』を受け止めれば、子どもは『なる』」という言葉でした。この言葉の意味は、「子どもの『ありのままの姿』を受け止めると、子どもは自分から進んであるべき姿になろうとする」というものです。子ども自らにやる気を出させるという、まさに魔法のような言葉です。
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  では、「子供の『ありのままの姿』を受け止める」ためには、どうすればいいのでしょう?
   まず、子どもの「ありのままの姿」を受け止めるというのですから、親の方から「あれをしなさい」「これをしなさい」と言いたくなるのを我慢するということです。
   次に、子どもの「ありのままの姿」を受け止めるということは、「そう、それでいいんだよ」と子供の行動を肯定的に受け止めることです。そのためには、まず、子どもを見るということが不可欠です。なぜかというと、超能力者でもない限り、親が子どもを見なければ、親の関心が子どもに向かっていることが子どもに伝わることはあり得ないからです。
   次に、子どもを肯定的に受け止めるためには、親が“しかめ面”をしていてはいけません。それでは逆に否定的な印象を子どもに与えてしまいます。「それでいいんだよ」と微笑むことが必要です。
   次に、子どもの“気持ち”は子どもの“言葉”として発せられることが多いですから、それを受け止めるために子どもの話に耳を傾けることが必要です。そしてその子の今の気持ちに共感しましょう。
   次に、もしも子どもから何か話されたり聞かれたりしたときは、「しかめ面」の表情にならないのと同じ理由から、話し方も穏やかな話し方で話すことが大切です。「今忙しいからダメ!」等と語調が強くなると、どうしても子供は否定的に見られている印象を受けてしまいます。
   ここまでで、子どもは「安心感」を感じて何の迷いもない伸び伸びとした意識になります。そこに、自分から進んで良い行いをしようという気持ちが生まれるのです(「あるべき姿になる」)。
子供が良い行いをしたら、その事を褒めます。褒めるという事は、その子の行動を肯定的に捉えている何よりの証です。その大人の肯定的な眼差しによって、子供はいっそう「自分の姿を受け止めてもらった」という気持ちになり、必ずまた良い行いをしようとします。

   さて、もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、上記に述べた「子どもを見る」「微笑む」「子どもの話に耳を傾ける」「気持ちに共感する」「穏やかな話し方をする」「褒める」という行為は、「愛着7」の愛情行為と同じです。つまり、そう、それでいいんだよ」と子供の行動を肯定的に受け止める事で、子供はその大人との間に“心の絆”、すなわち「愛着(愛の絆)」を感じるのだと思います。心の絆”で繋がった大好きな大人の前では、進んで良い行いをしようという気持ちになるのですね。

   次回は、このサポート方法を小学校現場で試してみた時の話を紹介します。(つづく)