【今回の記事】

【記事の概要】
   勉強や習い事など、子どもが何かに取り組むときは、「やる気」を出して取り組んでもらいたいものですよね。とはいえ、子どものやる気にはムラがあるもの。そんなとき、親はどんなサポートをすれば、子どものやる気を引き出すことができるのでしょうか。脳科学の権威京都大学名誉教授でもある久保田競先生に、
・やる気の引き出し方
・脳に好循環をもたらす「ドーパミンサイクル」
・頭のいい子に育てる方法
などを聞きました。ちなみに、奥さんは「カヨ子ばあちゃん」の愛称で知られる教育評論家の久保田カヨ子氏です
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やる気を引き出すにはとにかく褒める!
「早く宿題をしなさい」「○○の練習をしなさい」と声をかけても、子ども本人がなかなかやる気を出してくれず困っているパパやママは多いはず。そもそも、やる気はどのようにして生まれるものなのでしょうか
※「    」内久保田氏(以下同)
「人間は年齢に関係なく、脳内にドーパミンという神経伝達物質が分泌されると『楽しい』『うれしい』『気持ちいい』という感情が生じます。そして、ドーパミンによって生まれたこれらの感情は、人間の記憶を司る『海馬』という場所で整理され大脳皮質に記憶されます
「この記憶から『また楽しくなりたい』『また気持ちよくなりたい』という欲求が生まれ、その欲求を満たすために頑張る、これが『やる気』につながります
ドーパミンは、遊んでいるとき趣味に没頭しているとき褒められたときなどにたくさん分泌されるそうです。つまり、親が子どものやる気を引き出すためにできることは、「褒める」こと。そうすることでドーパミンの分泌を促し、頑張ろうという気持ちを生み出せるんですね。
頑張れば褒めてもらえる、褒めてもらえるからまた頑張る、という好循環を脳科学では『ドーパミンサイクル』と呼びます。このサイクルを使うことが、子どものやる気を起こさせるポイントです」
頭の良い子を育てる一番の近道は?
   とはいえ、子どもをいつも褒めるのは難しいもの。子どもがなかなか行動を起こさないと、つい「早く宿題をしなさい!」などと叱ってしまいがちですよね。褒めるのとは逆に、子どもを叱るとやる気をダウンさせてしまうのでしょうか
「親に叱られると、子どもは叱られたくないので仕方なく勉強をするでしょう。しかしこの場合はドーパミンが分泌されないので、当然やる気は起こりません。むしろ、叱られてばかりいると『勉強=叱られる』という記憶が海馬に定着して、ますます勉強嫌いになってしまいます
「また、人間の大脳の前部には、思考力・判断力・記憶力・集中力・創造力などを司る前頭前野という部位があります。この部分が成長過程である5歳くらいまでの間は、自分で何かを判断して行動したり、一つのことに集中したりすることが難しい場合も。ですから、叱られたからといって、言われた通りにできるわけではないのです」子どものやる気を引き出すうえで、叱ることにメリットはなさそうですね。
   さらに久保田氏によると、幼い頃ほど褒めることに徹した方が、頭の良い子に育ちやすいそうです
ドーパミンは、前頭前野の栄養とも言われています。前頭前野が育っていない子どもほど、褒めてドーパミンを分泌させることで前頭前野を育てることができます。これが思考力・判断力・記憶力・集中力・創造力に優れた頭の良い子を育てる一番の近道だと思います」
できているところを見つけて褒める
「勉強でもスポーツでも、やったからといってうまくできるとは限りませんし、間違えることもあるでしょう。うまくいかなかった場合でも、できているところ良いところを見つけて褒めることがポイントです
「たとえば、宿題の答えが間違っていたら『どこが違っていたのかな?』と聞いて、まず子どもに考えさせます。そして間違っていたところに気が付いたら、その『気付き』を褒めてあげましょう
子どもをよく観察してみれば、褒められるところは必ず見つかります。できていないところではなく、できているところに目を向けるのがポイントのようですね

【感想】
   昨今、褒められることに慣れた子供が、ちょっとしたことで叱られるとやる気を無くすこと等から、“褒めることを否定する”教育観を耳にすることがあります。
   しかし、今回、単なる教育評論家ではなく、脳科学の権威の久保田氏が
褒められるドーパミンが分泌される。ドーパミンは思考力・判断力・記憶力・集中力・創造力などを司る前頭前野栄養であり、ドーパミンが分泌される程、思考力・判断力・記憶力・集中力・創造力などが育つ。
と指摘しているのです。脳の仕組みがそうなっているということ以上の根拠はありません。子供のやる気を出すうえで、最も効果的なサポート法は“子供を褒める”、これに尽きるのです。
   子供はやる気が出れば、多少叱られても、へこたれたりはしません。ただし気をつけなければならないことは、「褒めること」と「叱ること」との“量のバランス”と“順番”です。ですから、久保田氏の言うように、“量のバランス”を間違えて、叱ってばかりいると「勉強叱られるという記憶が子供に定着して、ますます勉強嫌いになってしまうのです。

   更に、久保田氏は「うまくいかなかった場合でも、できているところ良いところを見つけて褒めることがポイント」と指摘しています。全く同感です。できなかったところを再度考えさせて、できたら褒める。それでもできなければ、できるために丁度いいヒントを与えて、やらせて褒めれば良いでしょう。
   また私は、小さな事から褒める方法として、以下の5つの記事を投稿しています。合わせてご参照ください。

   ただし、久保田氏の指摘の中で、一つだけ補足したいことがあります。それは、「親の期待に応えることで、より大きな達成感が得られる」という指摘です。ここは慎重な解釈が必要になります。
   この場合は、“褒め方”によって、子供の意識が変わってしまいます。
成績が上がってお母さん嬉しいわと褒めると、「お母さんのためにがんばろう」と考え、親の顔色を伺う自立できない子供に育ってしまいます。しかし、
がんばって勉強するようになったところが良いねと褒めると、「努力する事は良いことだ」と考え、自分の人間性の向上、延いては自身の“自立”に繋がります。