【今回の記事】

【記事の概要】
   中学受験を頑張った息子に贈る、父からの「スマートフォン貸与契約書」が本気すぎると話題になっている。作成したのは、LinkedInの日本代表を務める村上臣さん。先日までYahoo! Japanの執行役員としてスマホ事業を牽引してきた専門家だ。一体どんなことが書かれているのか? 村上さんが語ってくれたことを、父親目線で紹介する。
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〈上記契約書の主な契約内容〉
・基本的に家族との連絡用としてのみ利用すること。よって家族からの着信があった場合には必ず返信をする。
・子供が快適に利用できるよう端末の設定・セットアップは親がする
・親に連絡なく端末設定やパスワードの変更等を勝手にしない
・利用時間は朝6時から夜9時までとする。またテスト週間に関わる学校の利用停止期間の約束にも従う。急な利用時間の変更については子が親に事前に申し出る。
・利用したいアプリがあるときは、勝手にダウンロードせず、事前に親に断る。
・LINEは家族と学校関係の友人との間での最小限の利用を認める。知らない人や会ったことのない人(友達の友達等)の登録は認めない。
・その他のサービス(Twitter、Facebook、Instagram等)の利用はしない。
・位置情報は重要なものなので、むやみに公開しない。
・調べ物したい時は、何を調べるのか事前に親に報告すること。
・公共の場で写真や動画を撮るときには、他人のプライバシーに配慮する。
・インターネットの情報を過信し過ぎない。正しい情報得るために、図書館や書籍、親などを活用する。
・インターネットに一度公開された情報は、一生消すことができないことを理解すること。
・端末は原則としてリビングで使用する。
・食事中、入浴中、トイレ中の使用はしない。
・就寝時や利用しないときは、リビングの充電コーナーに置いておき、ポケットに入れて持ち歩くようなことはしない。
・学校への持ち込みについては、学校のルールに従う。
・親は基本料金や利用を認めたサービス料金を負担する。
・破損や修理の料金は子供が負担する。
・親は必要に応じて端末の一切の情報確認することができる。確認する際は子供のプライバシーを最大限保障する。
・本契約が守られなかったときは、親は子供に対して一定期間の使用中止を命じることができる。
・想定外の事態が起きたときには、親子の間で誠意をもって協議の上解決する。
・本契約書は2通作成し、親と子が署名の上、1通ずつ保管する。

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◯基本は、家族との連絡用としてのみ利用するものとする
   すでに友人とのLINEを楽しんでいる息子だが、「お父さんやお母さんをないがしろにするな」という意味をこめた。進学で世界が広がる。中学生なら反抗期だってある。その時に、親を無視してもらっちゃ困るわけだ。もちろん、そんな時期があるのは理解している。だから、基本は家族の連絡用とした。
インターネットはいい人ばかりじゃない
   インターネットはすごく便利だけれど、そこにいる全員がいい人とは限らないフェイクニュースのように真実じゃない情報が流布することもある。どこにでもある話だけれど、陽のあたる場所があれば、闇もある。だから、今のところは、LINE以外のSNSは「なし」だ。
アプリは基本的に、契約主の承諾が必要
   ファミリー共有グループを作っているので、子どもがアプリをインストールしようとすると、親に申請通知が行く。これが親によって承諾されると、新しいアプリを楽しめるようになる。もし、申請拒否に納得が行かない場合は、適宜、相談しよう。スマホを通して親子間で会話が生まれる。それはそれで素敵なことだ。
運用上、問題が生じてくれば契約を見直そう
   最初の契約だ。だから、かなり厳しいものにしてある。ただ、企業でも契約の見直しはよくある話。運用上、問題が出てきたら適宜、相談・報告・交渉する権利は息子にはある父を説得できる理由を用意するのは、いい勉強になるだろう。それに、他人と折衝するコミュニケーションスキルというのは、将来に役立つ。契約内容の見直しをする時は、定期監査をしようと思っている。父が「スマホを見せて」と言った時に、「見せられない」というのは「なし」だ。なぜならそれは契約違反にあたるから
なぜ、こんなにガチな契約を結ぶかって? 息子が大人だからだ
   中学受験という大きなプロジェクトを終えた。その結果を、1人の大人として評価したい。親としてというよりも、フラットな大人として。アプリを入れたいという交渉は、家族の会話になる。契約主を説得するには、論理的な思考も必要だ。もし、契約の「抜け穴」を見つけるのであれば、それはそれで良い教育になる。上から偉そうに言われると、反抗したい気持ちが生まれることは、よく知っている。だから今回は契約というフェアな形をとった。「甲」と「乙」というフラットな立場にしたのも、このためだ。スマホを手に入れるということは、自由を手にするということ。そのとき、12歳の息子は、どうやって可能性を掴み取っていくのだろうか?

【感想】
   初めは、中学に入学する多感な時期の子供に対して、かなり細かい内容まで踏み込んだ約束をしているような印象を受けました。しかし、SNSの専門家である父親だからこそ、「子供が快適に利用できるよう」にする為に必要だと感じた内容を列挙したものと思われます。
   また、子供を一人の大人として認めているからこその契約書であり、「甲」と「乙」というフラットな立場が取られています。“自我”が発達する第二反抗期にある子供にとっては、自分が“一人の大人”として認められているという意識があるからこそ、「大人同士の約束」としてこの契約を受け入れることができるのだと思います。この理由無しに、大上段から「契約を結びます」と誘いかけると、子供は“束縛感”を感じ、反発すると思います。
   しかし、最も大切なことは“契約書”と言う形式ではなく、子供が快適なスマホ利用ができるように、事前に約束事をはっきりさせておくことです。これが明確でないところに、「お前この頃スマホばっかりいじって勉強してないな」と、いきなり叱ったりペナルティを与えたりすると子供は反発します。叱る基準を事前にはっきりさせておくことが子供の愛着不全を防ぐのです。
   また、何かと不満を訴える反抗期にあって、事前にハッキリとしたルールが決められ、しかも明文化されている事はとても有効です。契約書という形式でなくても、この約束事を紙に書いて、家族のみんなから見える所に貼っておくと、いつまでも約束事があやふやにならずにすみます

貸与契約書」そのものを真似するかどうかは別として、この中に記されている約束事の中には、私達でも参考にできるものもあります。例えば、
・「基本的に家族との連絡用としてのみ利用すること。よって家族からの着信があった場合には必ず返信をする。(⇨反抗期にあっても、家族をないがしろにしない
・「端末の設定・セットアップは親がする」「親に連絡なく端末設定やパスワードの変更等を勝手にしない」(⇨親が管理権を握る
・「利用時間は朝6時から夜9時までとする。またテスト週間に関わる学校の利用停止期間の約束にも従う。」(⇨利用時間の明確化
・「利用したいアプリがあるときは、勝手にダウンロードせず、事前に親に断る。」(⇨安全利用のため
・「LINEは家族と学校関係の友人との間での最小限の利用を認める。知らない人や会ったことのない人(友達の友達等)の登録は認めない。」(⇨不特定多数との交流の予防
・「その他のサービス(Twitter、Facebook、Instagram等)の利用はしない。」(⇨不特定多数との交流の予防
・「インターネットに一度公開された情報は、一生消すことができないことを理解すること。」(⇨ネットの怖さの理解
・「端末は原則としてリビングで使用する。」(⇨望ましくない利用の予防
・「食事中、入浴中、トイレ中の使用はしない。」(⇨生活上のマナー
・「就寝時や利用しないときは、リビングの充電コーナーに置いておき、ポケットに入れて持ち歩くようなことはしない。」(⇨望ましくない利用の予防
・「学校への持ち込みについては、学校のルールに従う。」(⇨社会のルールに従う
・「親は基本料金や利用を認めたサービス料金を負担する。」(⇨親が管理権を握る
・「破損や修理の料金は子供が負担する。」(⇨ものを大切に扱う意識の育成
・「親は必要に応じて端末の一切の情報確認することができる。」(⇨望ましくない利用の予防
・「本契約が守られなかったときは、親は子供に対して一定期間の使用中止を命じることができる。」(⇨望ましくない利用の予防


   親が基本料金や利用を認めたサービス料金を負担することによって、その交換条件として以下の制限を加えることができます。
「利用したいアプリがあるときは、勝手にダウンロードせず、事前に親に断る」
「親は必要に応じて端末の一切の情報確認することができる。」
「守られなかったときは、親は子供に対して一定期間の使用中止を命じることができる。」

   これに対して、「自分の好きなように使いたければ、全ての料金をお小遣いの中から自分で払いなさい」ということになると、子供が親から離れて好き勝手に使うようになってしまい、大変危険です。親はいつでも子供を見守ってやらないと子供は健全に育たないのです。これも親子間の「愛着(愛の絆)」形成の一環です。「お父さんは知らないから勝手にやりなさい」という親と子供との間には「愛着(愛の絆)」は築かれないのです。

   最後に、こういう約束事をなぜ作るのか?という“目的”をはっきりさせておくことが何より大切です。「子供が望ましくない使い方をしないように監視するため」では、子供は約束事を作ることに応じません。「子供が悪事に巻き込まれず快適にスマホを利用できるようにするため」という親から子への思いやりが感じられる目的であるからこそ、子供は約束事に応じようと思うのです。