前回のつづき)
   では、「勉強が自分には必要だ」と子供が気づき実践に移せるようになるには、どんな方法があるでしょうか?私の知見から考えられるのは、「自立4支援」をベースにした次の「3ステップ」です。
①「『なぜ必要か』を話して教える
②「子供に実際の活動を任せてやらせ親は見守る
③「修正するためのヒントを親が諭して教える」

   以下に、それぞれのステップについて考えたいと思います。
①「『なぜ必要か』を親が教える
   人間は誰でも、「何の為にやるのか?」が分からないと、活動意欲は湧かないものです。そこで、「勉強はどんな力を身に付けるためにやるか?」、つまり勉強の“目的”を教える事が必要不可欠になります。その際には、先にお話しした通り、子供が納得するような必然的な理由を示す必要があります。
   そのために、“どんな力が無いと会社に採用されないか”を教えます。ある調査によれば、会社側が採用する学生に求める力のベスト3は、①主体性②コミュニケーション能力③ねばり強さ、だそうです(自営業でも職人業でも必要)。実社会で働く上で重要なのは、猛勉強で身に付けた知識ではなく、他の同僚と良い人間関係を築きながら、目の前の“課題”に対して、積極的に取り組み、解決まで諦めずにねばり強く対応できる行動力なのですね。その力を“勉強”という“課題”を練習台にして身に付けていくのです。
   その意味で、学校の授業の中で最も重要になるのが、教科学習で習ったことを活用して、生活内の総合的な課題を解決する力(「生きる力」や「問題解決能力」)をつける「総合的な学習の時間」なのです。つまり、就職した会社で与えられた仕事(課題)をこなす力をつける為に直結する学習が「総合的な学習の時間」であり、その時間での総合的な課題を解決する為に“教科学習”が必要、ということなのです。つまり、「どうして勉強しないといけないの?」という質問に対する私なりの答えは、
将来自分が仕事に就いた時に、『一番必要になる』と会社の人達が言っている『主体性(自分から進んで取り組む態度)』や『ねばり強さ』を勉強を通して身に付けるため。そして、その力を身につけないと、将来仕事に雇ってもらえず無職になって生活出来なくなるから
ということになると思います。
   将来、会社に採用されるか、無職になるかは、子供にとっては、自分の生活がかかった文字通り死活問題です。これ以上必然的動機付けはありません
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   また、良い“成績”にこだわるのではなく、“自主性”や“ねばり強さ”にこだわらせる事によって、「“結果”より“過程”が大切」と言う価値観を身につけさせる事ができ、“結果”に振り回されない芯の強い人間に育てることができるのです。

②「子供に実際の活動を任せてやらせ親は見守る
   次に、いよいよ子供に任せて勉強させる段階に入ります。
   子供に“主体性”を身に付けさせなければならないのですから、親の余計な“口出し”は厳禁です。辛抱強く子供の様子を見守る必要があります
   その際子供は、次の事を意識して取り組みます。
自分から進んで取り組めないようでは、将来採用などされない。(「主体性」の意識)」
難しい問題をすぐに投げ出すようでは、将来採用などされない。(「ねばり強さ」の意識)」

自分の将来の就職直結する目標ですから、親から単に「もっと頑張って勉強しなさい!」と言われるよりも、子供の目の色は変わるはずです。自分から学習に取り組み、分からない問題があったらできるまでねばり強く取り組む”。これ以上望ましい学習姿勢があるでしょうか。このように取り組んでいれば、“結果”は後から勝手についてくるでしょう。
   しかし、せっかく目標を絞っても、日が経つにつれて意識から薄れていくようでは“宝の持ち腐れ”です。そうならないために、有効な方法が、子供が活動しやすいように環境を工夫する「環境の構造化」の中の“視覚化”です。「自分から進んで」「分かるまでねばり強く」等と目標を紙に書いて、勉強部屋の壁に貼っておくと、子供の意識から薄れることはないでしょう。勉強部屋によく見かけがちな「目指せ◯◯高校!」の代わりです。
   見守っている親も、あくまで「子供が主体的に取り組んでいるか?」「子供がねばり強く取り組んでいるか?」という“目標”に注目して見守ります。決して“テストの点数”や“出来栄え”に目が移らないように注意する必要があります。
   また、この“見守り”の中では、「主体性」や「ねばり強さ」についての子供の頑張りが見られた時には、「自分から勉強を始めたね」「熱心に取り組んでるね」「難しい問題だったけど、ねばり強くがんばったね」等と褒めてあげましょう。褒める行為は、干渉行為には当たらず、子供の意欲が高まります。

③「修正するためのヒントを親が諭して教える
   客観的に見守っていた親から、「主体性」や「ねばり強さ」の目的に沿った勉強ができていたかどうか、穏やか諭し教えましょう


   最後に、“会社側が採用する学生に求める力”のベスト2である「コミュニケーション能力」についてです。
   この力は、言葉を変えれば、「他者を愛する力」であり、「他者と『愛着(愛の絆)』を形成する力」です。しかし、「子どもの心のコーチング」の著者の菅原氏が指摘している通り、「人を愛する力」は、親から愛された子供しか身に付ける事ができない」のです。つまり、子供に身に付けさせたい「人を愛する力」は、親が子供に愛情を注ぐ、つまり子供との間に「愛着(愛の絆)」を形成することによってしか身に付けさせることができないものなのです。そして、その為には「愛着7」のような愛情行為で子供に接することが必要です。