前回の投稿で、人間には生きていく為に満たされなければならない五つの欲求があるという「五段階欲求説」について紹介しました。今回はその続きです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   五つの欲求の中で、まず初めに満たされなければならないのが「生理的欲求」です。
人間の全ての欲求の中で、最も基礎的強力で、言い換えれば生命維持に関わる欲求であり、食物、飲物、保護、性、睡眠、酸素を欲する欲求です。これらが満たされないと、人間は命の危険にさらされます。いわば、「の欲求」とも言えるものです。
   例えば、ネグレクト(育児放棄)されたことによって、食事や水分補給をさせてもらえなかった子どもは、本能的に命の危険を感じ、「生理的欲求」が満たされません。その子どもは親を自分の「安全基地」とは認識できず、自分の中に生じたストレスを癒やすことができません。遅かれ早かれ、社会的な問題を起こすでしょう。
   また、意図的なネグレクトによるものではなくとも、部活動などで、夏など気温が高い環境の中で、ハードな活動を強いた場合、熱中症によって死亡する事例も起きています。これは「飲料を飲みたい」という「生理的欲求」が満たされなかった結果です。指導者は特に注意が必要です。
   また、現代では一人親家庭の半数が貧困層だと言われています。仮に、そのために、食事さえ満足にとれないということになると、その場合も「生理的欲求」の段階から満たされていないということになります。
{57FE664A-CBD5-48F4-80DC-531226B77584}

   私が初めて勤務した学校で担任した子供の中には、朝食が、お兄ちゃんが食べ終わって汁だけになったカップヌードルという男の子がいました。その子は、ある日ある大きな“”を犯します。「五段階欲求説」を知った時、私には、「あの時の“”はその子の「生理的欲求」が満たされないことに対する悲鳴だったのではないか?」と思われて仕方がありませんでした。
   そういう家庭に育った子供については、学校の成績を云々言うことよりも、十分な食生活を送れるようにすることの方が優先度が高いのです。ネグレクトによって親が子どもの「生理的欲求」を満たさずに、学校の成績を責めるということは本末転倒なのです。