今回は“健康教育”に関わるお話です。

   現在、「マスクをしたままでの接客は是か非か」という論議がネット上で物議を醸しているようです。しかし、否定派意見を見ると、「接客中にマスクをするなんて客に対して失礼だ!」という店側の“接客に対する心構え”を責める意見が殆どで、マスクの着用に対して正しい理解がなされていないような気がしました。
   そこで今回は、特にインフルエンザが流行し始めるこの時期にあって、「学校で暮らす子供たちがどんな生活実態にあるのか?」、更に、「子供たちにインフルエンザ予防について正しい理解をさせる為にはどうすれば良いのか?」ということについて考えてみたいと思います。

   さて、学校で暮らす子供達は、担任の先生から「インフルエンザが流行っているからマスクをしましょう」と呼びかけられても、休み時間になるといつの間にか外してしまう子が多く見られます。特に男子にその傾向が強いです。なぜならば、以前の投稿でお知らせしたように、子供(特に男の子)は「インフルエンザが流行っている時になぜマスクをしなければいけないのか?」と言う必然性理由)が理解できないと実行に移さない生き物だからです。一方、女子は先生から言われた通り忠実に守って行動します。しかしその女子も、マスク着用の本当の理由については理解してはいないのです。
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   大人の皆さんは既にお分かりのように、「なぜ?」の答えは、2つあります。それは
⒈  相手からの感染を防ぐ
⒉  周囲の人に感染させない
というものです。

   まず「1」についてですが、誰かが「ハックション!」とクシャミをすると、インフルエンザウイルスが周囲に飛び散ります。それを口から吸い込まない為にマスクをする。この「飛沫感染」については、子供も比較的容易に理解できます。
   しかし、感染は「飛沫感染」によるものだけではありません。それは「接触感染」です。例えば、インフルエンザに感染している誰かが教室のドアや水道の蛇口の前でクシャミをすると、インフルエンザウイルスがドアノブ水道の蛇口の取っ手に付着します。それを健康な人が手で触れると、今度はその人の体にウィルスが付着します。その時点ではまだ感染がしません。ウィルスが外部から体内に潜入してくるのは、ある場所に限られています。それは粘膜(細い血管が膜近くにあるピンク色の部分)です。その粘膜があるのはの内部です。特に子供は、目をゴシゴシ鼻をホジホジ口をイジイジする事が何度もあります。仮にウィルスが付着した手でそれらの行為を行うと、それぞれの粘膜からウイルスが体内に潜入してくるのです。ところが、そのことを理解していない子供たちが沢山います。まずはそのウィルスの侵入経路を子供に教える必要があります。
   特に、学校という閉ざされた空間の中に大勢の人間が長時間生活をしている環境下では、先にお話ししたように、たった1人でもインフルエンザに感染した子供がいれば、その子が教室のドアや水道の蛇口の前でクシャミをするだけで、そのドアノブヤ水道の蛇口の取っ手を他の大勢の子供が次から次と手で触り、あっという間に他の子供たちに感染することになるのです。
   しかし、その時にマスクをしていれば、少なくとも鼻と口が隠れるため、直接手で触れる心配が無くなるのです。そうすれば後はがかゆくなった時だけ、ティッシュを使うなどして直接手でゴシゴシしないように気を付ければいいのです。

   次に「2」に関わることです。子供にインフルエンザ予防を更に難しくさせているのが「潜伏期間」という考え方です。インフルエンザウィルスに感染してもすぐには発症せず体調は普段と変わらないままです。感染してから発症するまでの数日間の体が元気な期間が子供に油断をもたらすのです。特にすぐにマスクを外してしまう子供はこの理解がなされていない証拠です。今は元気でも、自分はすでにインフルエンザウィルスに感染しているかもしれないという危険性を認識させる必要があるのです。その時にマスクをしていれば、ウィルスに感染しているかもしれない自分の口からクシャミによってウィルスが吐き出されることがなくなるのです。

   一説に、「マスクはインフルエンザ予防にそれほどの効果は無い」と言う説が存在するようで、教師の中にもマスク着用に否定的な考え方をしている方もいらっしゃるようです。事実、以前私が勤めていた学校で、インフルエンザが流行り始めた頃に、「予防効果は薄い」というある担当教諭の考えによりマスク着用をあえて呼びかけませんでした。しかし、その後あっという間にインフルエンザ感染者が増え、最後には“学校閉鎖”という最悪の事態にまで発展してしまったのでした。

   以上のことを、今のうち子供自身が正しく認識していなければ、いずれ訪れる高校・大学受験部活の大会等、本人にとって大変重要な時期に、必然性を感じない為に自ら予防行動を取れず(この歳になると親は余りうるさく言わない)インフルエンザに感染してしまい、その後の人生に少なからず影響を与えるという事態にもなりかねないのです。