【今回の記事】

【記事の概要】
大阪市住之江区で、飼い猫がエアガンのようなもので撃たれた姿が映った動画がツイッターに投稿され、警察が捜査している。

 今月24日、大阪市住之江区の民家に備え付けられた防犯カメラがとらえた映像―。
 民家の玄関先にゆっくりと近づく黒い車。運転席から白い破片のようなものを投げつける。約2分後、この家の飼い猫が興味を示して近づいた瞬間、再び現れた車から運転席の人物がエアガンのようなものを発砲したように見える。

 1か月ほど前から、自宅の前にパンくずやエアガンの弾が落ちていたのに住民が気づき、防犯カメラを確認したところ、不審な車が映っていたという。
 猫の飼い主「こう来て、ここで止まってパン投げて、猫が食べてるときに戻ってきて、この辺でここからバーンと(撃った)。至近距離でした」「もし人間とかに向いたらこんな事ではすまないと思うので、早く捕まってほしいです」
 飼い主は、映像をツイッターに投稿し、情報提供を呼びかけるとともに、家族が近くの交番に申告。警察は、動物愛護法違反の疑いもあるとして捜査している。

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【感想】
   私は、今回の記事のような“小動物への虐待”に関する記事の投稿はこれまでも何度か行ってきました。しかし、それらの投稿では、単に「小動物への虐待行為は、愛着障害の症状である」という指摘しかしていませんでした
   しかし精神科医の岡田氏は、子供の愛着障害には回避型」「抵抗・両価型(「不安型」)」「混乱型3つのタイプがあると指摘しており、それぞれのタイプには、それぞれ異なった幼少期の養育の仕方があります。
   それでは、小動物への虐待行為に走る子供達は上記の3つのタイプのうち、どのタイプの愛着障害であり、幼少期にどんな養育を受けた子供達なのでしょうか?それらを今回の投稿記事の焦点としたいと思います。

   さて、精神科医の岡田氏が指摘する「回避型」「抵抗・両価型(「不安型」)」「混乱型」の3つの種類のうち、私が最も劣悪な養育環境だと思うのは、親の気分次第での体罰(虐待)が加えられる「混乱型」です。
   しかし、岡田氏の文献を見ると、「混乱型」の子供の特徴としては、「肩を丸めるなど親からの攻撃を恐れているような反応を見せたり、逆に親を突然叩いたりすることもある」とあり、小動物という間接的な攻撃ではなく、親に対する直接的な反発が特徴とされています。今回の小動物に対する攻撃のような親以外への「周囲への反抗攻撃性」が特徴として挙げられているのは「回避型」なのです。岡田氏の文献によれば、次のように指摘されています。
「回避型の子供は、その後、自分に対して世話をしてくれなかったり、②いつも否定的な言葉をぶつけてきたりしていた大人への不満が、周囲への反抗攻撃性という問題を起こすことが多い。」

   さて、この指摘から思い出される事件があります。それは、以前にも紹介した1997年に起きた「神戸連続児童殺傷事件」です。
   この事件を起こした「少年A」は、母親からとても厳しい叱責を受け続けました。母親は、少年が幼稚園に行って恥をかくことのないようにと、団体生活で必要な生活習慣や能力をきちんと身につけさせようと、排尿、排便、食事、着替え、玩具の後片付け等を早め早めに厳しくしつけました。少年が口で何度注意しても聞かないときはおしりを叩くという体罰を与えました裁判所の判決文によると、「一歳までの母子一体の関係の時期が少年に最低限の満足を与えていなかった疑いがある」とされています。
   そんな少年Aが唯一心を開いていたのが母方の祖母だったそうですが、その祖母は少年が小学校五年生の時に亡くなりました。その祖母の死との繋がりは不明ですが、そのころから少年はナメクジカエルを解剖する遊びをするようになったそうです。その対象が次第にとなり、とうとう自分より年下の小学生となり、あの事件が起きたのです。

   この母親は、少年が口で何度注意しても聞かないときおしりを叩くという体罰を与えているだけで、「混乱型」に見られるような気分次第の虐待はしていません。その養育を受けた「少年A」は、「混乱型」のように母親に対して怒りを向けずに、周囲の小動物に向けたのです。やはり、何やってるの!」「ちゃんとしなさい!」“といった否定的な言葉”をぶつける上記「回避型の要因の②が、小動物への攻撃へと走らせた要因と言えそうです

   さて、この母親の「少年が幼稚園に行って恥をかくことのないように、団体生活で必要な生活習慣や能力をきちんと身につけさせようと厳しくしつけ、口で何度注意しても聞かないときはおしりを叩いた」という行動は極めて特異なものでしょうか?そのような、“少し度を越した教育熱心な母親によるしつけ”行動は、どこにでも見られる養育ではないでしょうか?
   かく言う私も恥ずかしながら、少年時代に我が家で飼っていたペットの犬に向かって石を何個も投げつけた記憶があります。今思えば、私の場合は、両親共働きでしかも一番末っ子で、あまり手をかけられなかった“寂しさ”からの行動(上記「回避型の要因の①だったのかもしれません。
   しかし、それだけ愛着障害とは身近に存在するものなのだと思います(ちなみに岡田氏は『愛着障害は約3割の出現率で存在する』と指摘しています)。事実、岡田氏は自身の文献の中では、「ごく普通の家庭に育った子供にも見られる症状」という意味を込めて、敢えて「愛着スペクトラム(区切りのない連続的な)障害」と表現しています。
   つまりは、どの家庭でも、“愛着障害”に陥らない為の「愛着7」のような愛着を形成する愛情行為を、更に子供に対する“過干渉”を防ぐ為の「自立4支援」によるサポートを心掛ける必要がありそうです。

   最後になりますが、少年Aが唯一心を開いていたのが母方の祖母だったと言います。つまり、彼にとっては、その祖母こそが「愛着(愛の絆)」の対象であり、「安全基地」だったのだと思います。その祖母が亡くなり「安全基地」を失った時と時期を同じくして少年の小動物への攻撃が始まっています。如何に、“心を許せる誰か”がいることが、「愛着」を維持し愛着障害に陥らないうえで必要不可欠な事であるかが分かります。