【今回の記事】

【記事の概要】

◯社会進出する母親にとって、やっぱり気になる「三歳児神話」

   最近は女性の社会進出も目覚ましく、保育園に子供を預け就労する母親も増えてきています。ですが「三歳児神話子供が3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきであり、そうしないと子供の情操に悪影響を及ぼすという考え方)」を聞いたり、預ける時に(子供に)大声で泣かれたり“後追い”されると早くから保育園に預けることに迷いや抵抗を感じる人も少なくないでしょう。
   心も体も健やかに成長し、しっかり自立している子供の中には、幼い時から保育園に預けられ育った子も多くいます。ですが何故、3歳までは母親が育児に専念して育てた方がよい、という「三歳児神話」が根強く残っているのでしょうか
そのカギを握るひとつ「愛着形成」と、0歳から赤ちゃんを保育園に預ける母親が心がけたいことをお伝えします。

◯生きていく基盤となる愛着形成

   愛着とは、慣れ親しんだモノへの特別な思いを言い、発達心理学では赤ちゃん特定の養育者との心のつながりや情緒的な結びつきを言います。
愛着を形成していくことは、子供の成長において非常に重要で、協調性や社会性が身についていく、勉強や運動ができる、友達と仲良く遊ぶ、ルールを守る心が優しいたくましい意欲があるなど生きていくうえで大切なことの基盤となります。

◯愛着の形成は社会的やり取りから生じる

   イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィの提唱した「愛着理論」によると、愛着の形成は、社会的やり取りをする人と結ばれると言われています。つまり話しかけたり、スキンシップを取ったり、赤ちゃんからの何らかのサインに応えてくる人との間に形成されていくのです。
   まだ言葉を話せない赤ちゃんは、このコミュニケーションを非言語によりおこなっています。顔の表情や声のトーン、しぐさなどを通し、身近な人と交わす社会的やり取りが、心理的絆を深めていくと言えるでしょう。やがてそのやり取りの最も多い相手、つまり主たる養育者と決まった意思疎通の形式が出来てきます
   そしていつもの馴染みの相手から、予測している反応が返ってくることで、赤ちゃんは安らぎを感じ、精神的に落ち着き愛着形成がなされていくのです。

◯意思疎通の形式が定まらないと不安を感じる

   自分の発する非言語による言葉に応じてもらえない、またはいつもと違う反応期待していた返答と異なる対応であったりすると、不安恐怖を感じる原因になると言われています。
   家庭の場合、社会的やり取りの相手は母親になりますが、保育園だと、保育士さんが仕事を分担したり、シフト制であったりしますので、その相手が変わります。ですので馴染みの相手や意思疎通の形式が変わり、赤ちゃんは不安を感じることもあるでしょう。
   では保育園に預けられると皆、不安を感じて育つのかと言うと、そうではありません。母親との愛着形成がしっかり築かれていると、むしろ集団の中でたくましく育つでしょう。
   育児は時間より質が大切です。短い時間でも充実した関わりを持てば、母子間の愛着は形成していくことができます。

◯スキンシップや関わりの時間を決めたり、見える化する

   愛着が形成される過程となる社会的やり取り、例えば、語りかけや絵本の読み聞かせ、抱っこなどのスキンシップ、赤ちゃんの顔の表情、しぐさなどに対しての応答をしてあげましょう。
   簡単なようですが、就労しながら子育てをしている母親は、帰宅後さまざまな家事をこなさねばなりません。そして夜泣きが始まったりすると、夜も熟睡することは出来ず、肉体的にも精神的にも疲労困憊の状態でしょう。するとどうしてもあかちゃんの小さなサインを見落とされたり、関わりが減少してしまいがちです。
その場合は、
・赤ちゃんに向き合う時間を決める
・抱っこや、絵本読みのカードを作り、その関わりをすれば裏返しにしていくなど、工夫するのもよいでしょう。

◯就労しながらの愛着形成は母親の意思次第

   就労しながらの愛着形成は母親のかなりの負担と努力が必要です。また愛着はどれだけ形成されているかは目に見えず、結果も直ぐにはでないので、判断が難しいでしょう。そのあたりも、三歳児神話が根強く残る理由かもしれません。
   ですがその道を選択したのであれば、保育園に預けていることに迷いを見せず、強い意志を持って子育てに向き合いましょう

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【感想】
   記事では、「三歳児神話子供が3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきであり、そうしないと子供の情操に悪影響を及ぼすという考え方)」が存在する根拠として主に「愛着」形成を挙げています。しかし、わが国の愛着研究の第一人者である精神科医の岡田氏は「愛着形成」の“臨界期”(愛着形成がスムーズに行われる最終時期)は一歳半までと指摘しています。
   しかしその岡田氏も「最低3歳位までは母親が子供のそばにいて養育にあたる必要がある」と述べています。それは「愛着形成」と言う第一の課題の次に訪れる「母子分離」と言う第二の課題の達成のためです。特に二、三歳の時期は、母子分離不安(子どもが母親から離れる際に感じる不安)が高まる時期であり、この時期に母親の仕事の為に無理やりひき離されるという体験をすると、愛情に傷が残り、分離不安が強く尾を引きやすくなり、記事にもあるように、保育施設や学校へ預ける時に、大声で泣いたり、母親を“後追い”したりして周囲を困らせることがあります。

   さて、記事中にあるように、赤ちゃんはいつもの馴染みの相手から、予測している反応が返ってくることで、安らぎを感じ、精神的に落ち着き、愛着形成がなされます。しかし、赤ちゃんの世話にあたる人間が変わり、いつもと違う反応期待していた返答と異なる対応であったりすると、赤ちゃんが不安恐怖を感じるのです。その点、スタッフが仕事を分担したりシフト制であったりする保育園だと、個々のスタッフによって意思疎通の形式が変わる為、赤ちゃんは不安を感じるのです。この事が、子供を保育園に預けることの最大のデメリットです。
   しかし、記事では「母親との愛着形成がしっかり築かれていると、むしろ集団の中でたくましく育つ」と指摘しています。なぜなら、育児は時間より質が大切」であり、短い時間でも充実した関わりを持てば、母子間の愛着は形成していくことができるからです。

   では、どのようにすれば“充実した関わり”を持つことができるのでしょうか?
   記事中に「愛着の形成は、社会的やり取りをする人と結ばれると言われています。つまり話しかけたり、スキンシップを取ったり、赤ちゃんからの何らかのサインに応えてくる人との間に形成されていく」とありますが、この話しかけたりスキンシップを取ったりすると言う“社会的なやりとり”とは、いわゆる「愛着7」のような“愛情行為”のことを指しています。
   また、育児において大切なことは、母親が「どうしたらいいの?」「これでいいの?」等と迷わないことです。なぜなら母親の曇った表情等から、その不安感が赤ちゃんにも伝わってしまうからです。記事中でも「保育園に預けていることに迷いを見せず、強い意志を持って子育てに向き合いましょう」と指摘されていますが、「育児は質より量で勝負する」「この愛情行為を心がけていれば大丈夫という強い意志と自信が大切です。
   その為には、赤ちゃんに向き合う時間を決めたり絵本読みをしたりする事ももちろん大切ですが、効果的な養育をする上では、それらの行為が「愛着7」の愛情行為の一環であることを意識する事が重要だと思います(「赤ちゃんに向き合う」ことは「愛着7」で言うところの“赤ちゃんを見て微笑むことにあたり、「絵本読みをする」ことは“赤ちゃんに穏やかに語りかけることにあたる)。養育の仕方を木の“枝葉”のようにバラバラに覚えていると、忙しい生活の中では忘れてしまい、「あれ?これで良かったのかしら?」と迷うことも多分にあります。しかし、木の“”にあたる「愛着7」のような養育の仕方をしっかりと自覚していると、養育の仕方に“ブレ”が無くなります。その“ブレの無さ”が赤ちゃんの心の安定に直結するのです。更に、“幹”があれば、工夫次第でそれぞれの家庭の実情に合った様々な枝葉(オリジナルの愛情行為)を伸ばす事もできます。自分の中に「愛着7」のような“幹”を持つという事はそれほど大切なことなのです。

   ちなみに、3歳までの養育が十分ではなかった為に、保育施設や学校へ預ける時に、大声で泣いたり母親を“後追い”したりする場合でも、その時点からの愛着形成のやり直し可能です。その方法は、「愛着7」の愛情行為と同じです。子育てに“手遅れ”はありません