前回の続き)
   国によっては、赤ちゃんの世話は、母親ではなくメイドの仕事という習慣が一般的である場合もあるそうです。日本でも、今一度「母性の意義を再確認して、これらかの日本社会をまっとうな社会に方向転換する必要があるのではないでしょうか。
   世の中の男性には、「専業主婦はいつも家の中にいてうらやましい」と、ある意味さげすむような考えを持っている方もいるようにも聞きます。また、女性自身も「子育てよりもキャリア優先」という考え方をお持ちの方も少なくないようです。しかし、子育ては、将来の日本を担う安定した人格を備えた大人を育てる重要な仕事です。これまで述べてきたように、今のままだと日本の社会は、いじめ、不登校、引きこもり、犯罪の低年齢化、未婚者やセックスレス夫婦の増加、虐待等の問題がさらに増加し、社会そのものが崩壊しかねません。
   中でも今の日本社会に確実に忍び寄っているのは、人口減少による多くの自治体の消滅社会制度の崩壊です。
   乳幼児期に保育施設に預けられる子どもが増えることで「愛着の選択性」が妨げられ特定の存在である母親に愛着を形成できない子供も増加の一途を辿ります。「母親でさえ自分の危機を救ってはくれなかった」という「脱愛着」の状態に陥ることにより本能的に他者への信頼感を持てなくなった子どもは成人後も信頼できる異性を見つけられず結婚を避けるようになると精神科医の岡田氏は危惧しています。
   そのことで「少子化」に一層拍車がかかり、人口減少が止まらなくなります。ある報道によると、内閣府の算出として、30年後、各地を代表する観光地や都市が、人口が現在の3分の2、場合によっては半分の規模に縮小してしまう。更に人口が少ない町や村の多くは消滅するとの見込みです
   加えて、働き世代が減少し高齢者世代が増える(働き世代は現在の約20%減、逆に高齢世代は現在の50%増)ことで、国の収入が減り、働き世代つまり今の子供達一人当たりにかかる税金の負担が驚異的な割合に膨れ上がり、高齢者のための年金負担も今の1.7倍になるとの見込みです。仮に結婚に辿り着いたカップルがあったとしても、乳幼児期の愛着の未形成によって、不安定な愛着スタイルを持った大人が増えた夫婦は多くが離婚に至り(現在でさえ既に3組に1組の夫婦が離婚)、収入が半減した家庭は貧困家庭に陥り、30年後に一家庭にかかる税金の負担は現在の比ではなくなるでしょう。それでも社会制度は追いつかず、ゴミは収集されないまま、救急車を呼んでもなかなか来ないという社会の“スラム化”が進む可能性が高いということです。
   専業主婦をされている女性の皆さんには、そんな日本の将来を救う為に、いえ何よりも我が子が30年後の窮困した社会でも職につき安定した生活が送れる「安定型愛着スタイル」を持った大人になれるように、どうか自信誇りを持って子育てに当たってほしいと思います。
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また、父親である男性には、その母親の仕事の意味や大変さを理解したうえで、父親でなければできない子育てをしてほしいと思います。子育ては、母親、父親、それぞれが、自分にしかできない役割を果たしながら行わなければできない作業です。
 ちなみに、共働き家族研究所の1989年と2012年の調査によれば、共働きで働く理由で最も多い理由は、両年いずれも「生活にゆとりを持たせたい」でした。確かに今の時代、いつ何時どんなことが起きるか分かりませんから、いざという時のためのゆとりを持つということは必要なことだと思います。しかし、これまで述べてきたとおり、最低三歳くらいまでの母親による養育が、その子の一生に影響する大切なカギ(「愛着形成」と「母子分離」)を握っています。そのような考え方に立つと、その時期に我が子を保育所に預けてまで共働きをするのは本末転倒なような気がしてきます。せめて三歳まで育児休暇を気兼ねなくとれる社会になってほしいと切に望みます
   我が子が、いじめ、不登校、引きこもり、非行、犯罪等の問題を抱えた時には、経済的な余裕云々などと言っている場合ではなくなります。子どもの安定した成長か?経済的なゆとりか?どちらの問題を重視するべきかについては言うまでもないことかと思います。