‪‬ (この「愛着の話」は精神科医の岡田尊司氏を中心に、各専門家の文献を、内容や趣旨はそのままに、私が読みやすい文章に書き換えたものです)


(No.7からの続きです)
   しかし、この一歳半の時期を過ぎたからと言って、まだ安心できるわけではありません。なぜかというと、この時期は「愛着の形成」という意味での臨界(限界)期ですが、それに続いて迎える「母子分離」の段階は、「母子分離の達成」という次のステップの臨界期に当たるからです。特に二、三歳の時期は、母子分離不安(子どもが母親から離れる際に感じる不安)が高まる時期であり、この時期に無理やり母親から離されるという体験をすると、愛情に傷が残り、分離不安が強く尾を引きやすいのです。
   二歳ごろから一旦、母子分離を始めた子どもは、三歳ごろ再び母親にベッタリになる「最接近期」という時期を迎えます。この時子どもは、外界を探索したいという気持ちと、母親に頼りたいという気持ちとの間で葛藤しています。この葛藤を乗り越えられないと、母親との共生状態に逆戻りしてしまいます。その結果、「母子分離」が成し遂げられず、「母子融合(子どもがお母さんから離れられない状態)」が続いてしまいます。その場合、子どもは母親に執着し依存する一方で、母親に対して支配的で攻撃的になり、依存と反発の入り混じった状態を示しやすいのです。その姿が俗に言う「イヤイヤ期」として母親に反発する姿として現れると考えられます。この「最接近期」に親が上手に支援し、無理なく母子分離を果たさなければなりません。例えば、子どもが困難を感じていないのに、子どもに手をかけ優しくする態度を見せてしまったり、子どもが困って母親に助けを求めている態度を見せた時に、すぐに親が子供を引き寄せてしまったりすると、母子分離ができないと思います。「見ていてあげるから、がんばってごらん」と温かい応援をしてあげて、できたら褒めてあげましょう
   ちなみに、母子分離の導き役に最適なのは父親です。この時期に父親が育児に参加しないと、母親にベッタリの「マザコン」や、子供にベッタリの“毒親”が生まれてしまう危険があります。詳しくは、後の「父性の役割」の項でお話しします。