9、囚われし過去と、解き放つ未来・・・・ | ジャックオールロックのブログ

9、囚われし過去と、解き放つ未来・・・・

 あいかわらず、左腕のオメガは数分の狂いもなく時を刻み続けている。
チッチッチっと円を描いて回る秒針は、やはりこの世のすべてを容赦なく動かしている過去と未来の証明として左腕に巻きついているように見える。

跨ったバイクからの轟音が夕闇がかった小さな街を轟かせている。

職場の駐車場はサラ金の駐車場と隣接していてそのサラ金の看板のネオンはその音に合わせて小気味よく踊っている。
片田舎の街には少し不釣合いに見えるその建物。なんとなく異物的な存在としてそこに佇んでいる様に見えてしまう。


ヘルメットを外すと、夜風によって伸びた前髪が頬をなでた。



夏の終わりは妙に寂しさを滲ませる。
四季折々の風と匂いと色が僕を包み込んで、秋の風は僕を一層孤独に仕立て上げた。
そして空を見上げてみると早くも孤独な一番星が北東の方角に輝いて見えた。


「さて、・・・そろそろいくか。」
少し気だるそうに僕はバイクを降りて、吸いかけの煙草を灰皿に押し付けた。


ジャケットの内ポケットには退職願と書かれた封書が忍ばしてある。
その胸をトントンと叩いて歩き出した。




 僕らは、目の前に出されたラーメンをすすりながら旅の醍醐味と開放感を同時に味わっていた。


旅に出てからまともな食事をするのは初めてだった。
隣でケインがむせている。
「そんながっついて食べるなって・・・。」
僕は少しあきれて鼻で笑って言った。


僕は猫舌を火傷しないようにゆっくりと麺をすすっている。味噌のスープは濃厚で口の中に甘い香りが広がっていく。
<決してラーメンの物語ではない>

サカキさんもやはり懐かしい味に頷いていた。僕とは対照的に、あっというまにケインはラーメンを平らげて満足げに空になった器を見ている。

カウンターの奥にいた店の主人が冷えたコーラを3本テーブルの上に置いた。
「ほら、先生。これサービスだからね。」

「あぁ、どうも有難うございます。」
サカキさんは店のご主人は僕の父親と同じくらいの年齢に見える。


「・・・先生かぁ。サカキさん獣医さんだもんなぁ。」
ケインは続いて「さっきのきっかけの話教えてくださいよ。どうして獣医になろうと思ったんですか?」


サカキさんは記憶の糸を辿っている。

そんな顔つきで静かに箸を置いて語り出した。


つづく