日本では、コンビニのアルバイトでも「自爆営業」と言われる特異な働き方が存在します。自爆とは、自分自身にも甚大な被害をもたらす行為であり、通常は忌避されるものです。
しかし、なぜか日本では自爆を推奨するような労働環境が生まれており、具体例としては「自腹で商品を購入する」ことが挙げられます。
この問題は、現在の空前の人手不足が叫ばれている日本でも見受けられます。労働者が不足しているなかで、なぜ働く人を追い詰める悪習がなくならないのでしょうか。様々な職場での自爆を求める労働経験や現状について聞いてみました。
例えば、高級食パンの店でのアルバイト経験を持つ女性が語るところによれば、「食パンを自腹で買わされました。でも、そんなにたくさん食べられるわけではないんです」とのことです。
高級食パンは高価な商品ですし、何本も食べることはできないでしょう。このような行為は明らかな労働基準法違反と言えますが、一部の職場においては「強要」ではなく「勧誘」として話が進み、「自由意志」で購入するのか否かが問われるため、法的な判断は難しい状況となっています。
さらに残念ながら、悪質な場合を除けば労働基準監督署もあまり動かず、動いても逆に店舗の雰囲気が居づらくなることが現実として存在しています。そのため、「自爆営業」はこの国ではなくならないのです。
興味深いことに、この女性が辞めた後、その高級食パンの店はすぐに潰れたと話します。自腹で商品を購入させることが理由で、バイトの人が来なくなったためです。
過去にはコンビニのアルバイトにおいても「自爆営業」が問題になりました。しかし、現状でも自爆を求めるような働き方が日本にはまだ多く存在しているのです。
「恵方巻やクリスマスケーキなど、学生時代にコンビニでアルバイトをした40代男性は言います。『アルバイトの経験はごく短かったけれど、あまりいい思い出ではありませんでした』。
彼がそう感じた理由は、自爆営業にありました。『恵方巻やクリスマスケーキなど、今でもやらされるのかな。ネットの噂しか聞かないけれど』と続けています。私は、匿名掲示板の時代からこのような自爆営業の話が盛んに書き込まれていたように感じます。
社会問題として取り上げられたこともあるのか、現在50代の女性はコンビニでアルバイトしているけれど、彼女の店では（今は）そういったことはありませんと言っています。
彼女は言います。「なぜなら、そんなことをするとみんな辞めちゃうし、バイトスタッフが不足している状況で、昔のやり方はできないでしょう」。
もちろん、地域や店の方針によるところもありますが、基本的にはコンビニ本部も自爆営業を強いることはありませんとしています。ただし、一部のコンビニではまだ自爆営業が残っているところもあります。
それどころか、ネット上で自爆営業に苦しんだ声も根強いです。自爆営業があったとしても、仕事が欲しかったのです。
過去にも何度も自爆営業は社会問題として取り上げられてきましたが、多少の増減はあれ、過酷な環境でも働く人は絶えない時代がありました。
具体的には、2000年代から2010年代にかけて何度も報道され、日本郵政の自爆営業の理不尽さと過酷さが浮き彫りにされました。
例えば、郵便局員が金券ショップに自分で買った年賀はがきを売りに行くというニュースは、一時期の風物詩のように報じられました。
年賀状以外にも、「かもめーる」やふるさと小包、夏ギフト、お中元、お歳暮など、郵便局の職員は自爆買いに追われてきた歴史的事実があります。なぜそんな過酷な労働環境でも働いていたのか、それはわかりません。
「ゆうメイト」と呼ばれる有期労働契約の社員の話を聞きました。
彼も40代です。話しの中で、2000年代のことに触れてくれました。当時はひどい状況だったようです。彼らは低い時給で働きながら、自分自身で商品を買わなければならない圧力を感じていました。
商品を買わないと、スキルのランクを上げられず、雇用契約も更新されないという脅迫が日常茶飯事だったそうです。過去の話なので、現在はそうではないと言っても、なんとなく納得しにくいと言っていました。
詳しい話については本筋ではないので省きますが、彼は今は別の業界で正社員としてしっかり働いているとのことです。
しかし、当時は非正規の仕事を転々としていたそうです。
彼は自分たちが見下されていたと感じていました。就職難の時代だったため、非正規の仕事を選ぶしかなかったのです。同年代の多くが同じような状況だったそうです。
ゆうメイトにとっても、地域や会社によって異なるかもしれませんが、入り口は狭かったようです。自分自身で商品を買わないといけない営業があったとしても、仕事が欲しかったのです。こんな時代はもう二度と経験したくありません。
