時系列の一部切り取りで「デマ認定」することを「ファクトチェック」とは言わない | 偕楽園血圧日記

時系列の一部切り取りで「デマ認定」することを「ファクトチェック」とは言わない

 昨日のNHK「ニュース7」で、暗い中飛び立つB-1Bの映像が流れていた。
 不謹慎だが、懐かしい。
 湾岸戦争の時、同じように闇の中ジェットブラストを吹いて飛び立つ航空機の画像を出先の常磐道のサービスエリアのテレビで見た。
 世界はあの頃から変わっていない……。


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 フランス全土で農家がEU規制に抗議 道路封鎖相次ぎ物流や交通混乱


(写真、朝日新聞デジタルより。フランス南西部アジャンで2024年1月25日、高速道路を封鎖する農家のトラクター=ロイター)

 欧州連合(EU)の環境規制をめぐり、フランスの農家による抗議デモが拡大し、高速道路がトラクターで封鎖される事態が相次いでいる。欧州各地では近年、農家による抗議が頻発している。6月の欧州議会選に向けて、右翼政党が農家の不満を支持につなげようとする動きも出ている。

 牧場や畑に囲まれた仏北部の町ボーベ。近隣の農家ら約100人が23日早朝、約50台のトラクターを集結させ、パリ方面に向かう高速道路を封鎖した。集まった農家の多くはトラクターの中で寝泊まりしながら、数日かけて首都パリに移動する計画だという。EUによる環境規制の緩和を求めて政府に圧力をかけるのが目的だ。
 EUの行政府にあたる欧州委員会は2019年、気候危機を背景に環境保護や温室効果ガスの削減を加盟国に促すための戦略「欧州グリーンディール」を打ち出した。生物多様性の保護などを目的に農地の一定割合を休耕地にすることや農薬の使用削減を定めた内容で、大きな負担を強いられる農家の不満の原因になっている。
 抗議デモは18日、南西部トゥールーズ近郊で始まり、日を追って拡大してきた。仏メディアによると、24日には少なくとも全国60カ所でデモが発生。25日もトラクターに乗った農家が各地で高速道路や幹線道路、町の中心部を占拠し続けており、物流や交通に大きな混乱が生じている。
(後略)
 朝日新聞デジタル 1/26(金) 5:30

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 フランスで、農家が「気候変動だー環境だー」という政府に対して抗議のデモを行っている。

 このEUの規制というのは、聞くところによると「農地を痩せさせない完全循環農業」を目指すものらしく、なるほどずいぶん意識は高い。
 が、現実には連作障害のある小麦が農業の主力であるヨーロッパにおいては「かなり無茶な高み」を目指しているもの。
 なるほどそれでは農家が「やってられない」となるのも無理はない。

 またこの「農家デモ」は、

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 ドイツ全土で農家らが抗議デモ 首都まひ状態、極右支持拡大


(写真、CNNより。戦勝記念塔へ続くベルリンの街路にずらりと並んだトラクターの車列)

 ドイツ・ベルリン(CNN) ドイツのベルリンで増税や補助金カットに抗議する農家の大規模デモが1週間にわたって続き、首都はほぼまひ状態に陥っている。
 ベルリンのブランデンブルク門前の道路は15日、トラックやトラクターで埋め尽くされた。警察によると、農業従事者1万人以上が運輸業界と連携して首都に詰めかけている。
 ドイツでは全土でほかにも複数のデモが計画されている。オラフ・ショルツ首相率いる連立政権が危機的な状態に陥った予算の建て直しに苦慮する中、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が混乱に乗じて支持を伸ばしている。
(中略)
 農家は政府が打ち出した農業に対する税制優遇縮小の緊縮財政計画に対して不満を募らせている。
 15日には「皆さんの声に耳を傾けます」と訴えようとしたクリスティアン・リントナー財相に対し、デモ隊がブーイングを浴びせた。農業組合の会長が割って入り、リントナー財相の話を聞くよう促す場面もあった。
 CNNの取材に応じたデモ参加者は、新しい経済対策によって廃業に追い込まれると訴えた。
 ベルリンのデモに参加したマルティンさんはリューゲンで農業を営んでおり、「この国の新しい選挙に向けた抗議のためにやって来た。我々の政府には問題がある」「政府は我々の声に耳を傾けず、農家だけでなくこの国の誰もが傷つく規制をつくっている。もうたくさんだ」と語気を強めた。

 政府は昨年12月、2024年予算案に対する予想外の変更をめぐって反発を浴びた。1月4日には補助金削減の計画を一部修正したが、農家はそれでも不十分だとして完全撤回を求めている。

 今回の抗議デモでは、極右政党AfDが存在感を強めている。
 トラクターに「農家ファースト」「ドイツは新しい選挙が必要だ」などの文字が入ったAfDのポスターを貼ったり、AfDのベストを着けて車の前に立ったりする極右支持者もいた。
 AfDの公式フェイスブックは抗議デモの写真を共有し、連帯のメッセージを投稿している。
(後略)
 CNN.co.jp 1/16(火) 16:35

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 ドイツでも起きていて、こちらの方の報道を見ると、もう少し状況が複雑になる。

 これは単に「環境規制」だけではなく、その環境規制がかかるEUに対して、現在その縛りに含まれないウクライナのような国からの「安価な農作物の流入」があり、さらにここにドイツ政府の「財政政策の失敗」を是正するために打ち切られた補助金が絡んでくるわけで。

 だからEUでは、

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 欧州委、ウクライナ産品輸入制限を提案 デモ沈静化図る

[ブリュッセル 31日 ロイター] -     欧州連合(EU)欧州委員会は31日、ウクライナ産農産物に対する輸入制限を提案した。フランスなどEU加盟国で広がる農家による抗議デモの沈静化を図る。
 提案では、ウクライナ産農産物に対する輸入関税の停止を2025年6月まで1年間延長する。一方で、鶏肉や卵、砂糖については、緊急輸入制限措置を導入。輸入量が22─23年の平均を上回った場合、関税を適用する。
 また、加盟国のうち1カ国以上で穀物など農産物の輸入急増による市場の混乱が起きた場合、欧州委が制限措置を発動できるようにする。重大な事態とみなされた場合には、加盟国からの要請を受けた21日後に発動される。
 Philip Blenkinsop
 ロイター 2/1(木) 13:32

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 こういう動きが出ているわけだが……さてここで我が日本にある「ファクトチェックセンター」なる「俺たちがネットのデマを正す!」と息巻いている会社の登場である。

 CNNの記事にあるように、ドイツではこの農家のデモに便乗して「移民反対」の政党が支持を伸ばそうとしている。

 そこを見たのだろう、

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「ドイツで政府に不信を抱き立ち上がった国民の一揆」は誤り 極右政党に反対するデモ【ファクトチェック】

「ドイツ政府への国民のデモが日本では報道されていない」などという言説が拡散しましたが、誤りです。デモは移民追放を計画していると報じられた極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に対するもので、日本でも放送、新聞各社が報道しています。

検証対象
 2024年1月23日に投稿されたポストでは「ドイツ政府に不信を抱き立ち上がった  国民の一揆 日本では報道されず」との文言とともに、多くの人々が集まっている動画が添付されている。この投稿は1月29日時点で360万回以上の表示と、5.2万件以上のいいねを獲得している。
 また、別のポストは「ドイツ農民一揆、ベルリンでの抗議集会に一般市民も加わり、超大規模化。しかし、世界での報道は控えられている」と説明している。こちらは1月29日時点で、62.9万回以上の表示と1.1万件以上のいいねを獲得している。

検証過程
 この動画はドイツ連立与党の(SPD)が公式TikTokアカウントに投稿したものだ。キャプションには「民主主義のために立ち上がる皆さんに感謝します」などと書かれている。
 このデモは日本のメディアも報じている。時事通信が「極右政党『ドイツのための選択肢(AfD)』が、移民の大量追放計画を謀議したと報じられたことを受けて批判が噴出。19~21日には各地で合わせて数十万人が参加し、抗議の声を上げた」と報じた。朝日新聞も「ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の歴史から民族や人種差別に強い反発があることに加え、世論調査で支持率2位を維持するAfDへの警戒も背景にある」と、この抗議活動を伝えている。

判定
 動画はドイツの極右政党に反対するデモで、政府批判や農家によるデモではない。また、日本の報道各社も報じているため、誤り。

検証:本橋瑞記、高橋篤史
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔
(後略)
 日本ファクトチェックセンター 1/29(月) 13:05

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 こんな記事をヤフージャパンで配信しているのだが、これについては現地在住の人間が面白い記事を同ポータルで配信している。

 曰く、

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 ドイツ「作られた反極右デモ」への違和感…国民の怒りは「政府の怠慢」に向かっていたはずなのに

きっかけは戦後最大規模の反政府デモ
 新年早々、ドイツでは、戦後最大規模の反政府デモが繰り広げられた。中心になっていたのは農民で、元はといえば、昨年末、政府が農家に対する幾つかの補助金を撤廃しようとしたことだった。
 それがきっかけになって、農民の間に長年のあいだ燻っていた政府、およびEUの農業政策への鬱憤が爆発。しかも、その途端に多くの国民が農民支持に回ったため、論点は農業を超えて、速やかに現政府批判へと移行。これが広範な反政府デモに発展するまで、それほどの時間はかからなかった。
 こうして裾野を広げた農民デモは、年の明けた1月8日から、新たに1週間の予定で始まり、全国の主要都市でトラクターとトラックが道路を埋めた。また、幾つかの主要なアウトーバーンの入り口も封鎖され、あちこちの交通が8日間にわたって混乱した。
 最終日の15日には、みぞれが吹き荒ぶ中、ベルリンのブランデンブルク門の抗議集会に数万の人々が集結。ドイツ各地のみならず、周辺の国々からも応援に駆けつけたトラクター、トラックが、見渡す限り並んだ。
 一方、政府代表として出席していた財務大臣のスピーチは、「ブー!」や「帰れ!」の声でかき消され、今にも革命が起こるかと思うほどの熱気が立ち込めた。
(中略)
降って湧いた「反ドイツ秘密集会」スクープ
 ところが、どっこい、万策が尽きたわけではなかったのだ。
 農民デモが竹縄だった1月10日、公営第2テレビが7時のニュースで突然、「AfDの政治家が、その他の極右の活動家らとポツダム(ベルリン近郊)のホテルで密会し、ドイツにいる移民・難民の『デポルタツィオン(Deportation)』を画策していた」ことについて報じた。
 すると翌日には他のメディアも一斉に、センセーショナルな見出しで追随。 “謀議”の行われた密会があったのは、昨年11月のことだったという。
 ちなみに、メディアの使った「デポルタツィオン」という言葉は、本来は「移送」という意味だが、ドイツではほぼ自動的に、ナチが行ったユダヤ人の「強制収容所への移送」という非常に非人道的なイメージとなる。
 このニュースの源は、「コレクティーヴ(Correctiv)」というリサーチ機関がホームページに載せた「反ドイツの秘密集会」というタイトルのレポートで、リードにはこう書かれている。
「この会合について誰も知ってはならなかった:AfDの幹部、ネオナチ、裕福な産業界の人物らが、ポツダムのあるホテルで落ち合った。彼らの計画しているのは、何百万人もの人間のドイツからの追放に他ならない」
 ただし同レポートには、「AfDの政治家らが移民の追放を計画している」ということは書いてあっても、「デポルタツィオン」という言葉は出てこない。しかし、だからと言って、コレクティーヴが真っ当な機関かというと、それもどうだか? 
 コレクティーヴは2013年にメルケル政権下で作られ、現在、主に、SNSに書き込まれたフェイク(嘘)やヘイト(誹謗)のチェックに従事している。つまり、コレクティーヴがあるポスティングをフェイクだと断定すれば、それをアップしていたプラットフォームには削除の義務が生じ、怠ると膨大な罰金が課せられる可能性が高い。
(中略)
反政府デモがいつの間にか「反極右デモ」に
 さて、この後、起こったことは、いかにもドイツらしい。

「デポルタツィオン」のインパクトは強烈で、これに反応した国民が突如として、「民主主義の防衛」「2度と(ナチの)間違いを繰り返してはならない」と叫んで立ち上がり、14日ごろから町に繰り出し始めた。
 それをメディアが取り上げ、同時に、大仰に民主主義の危機を説いたため、デモは瞬く間に全国の都市に飛び火した
。公営テレビも毎日、日ごとに大きくなるデモの様子をトップニュースで伝え、民主主義を守ろうとする人々を褒め、かつ、鼓舞した。
 その結果、21日の日曜日には、デモは各地でかつてなかった規模に発展。警察発表によれば、ベルリンとミュンヘンでは10万、ケルンでは7万、ブレーメンでは3~4.5万の人々が集まった。それどころか、ミュンヘンでは安全上の懸念により、警察がデモを中途で終了させるという異例の事態となった。
 そして、これが最も不思議なのだが、当初「民主主義を守れ!」であったデモ隊の叫びが、いつの間にか「AfDを倒せ!」にすり替わっていた。つい1週間前には農民と共に政府を批判していた国民が、何故か政府と共に、AfDの息を止めようと張り切っていた。
(後略)
川口 マーン 惠美(作家)
 現代ビジネス 1/26(金) 6:04

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 こういう流れで「怒りの矛先がすり替えられた」というのだ。
 なるほど、ドイツは1930~40年代に国内で「やらかしたこと」が社会的トラウマになっていて、そこを突かれると国民が一斉に「その攻撃ができないように」と団結するということか。

 まあ、これはあくまで一作家が行った「分析」なのだが、上記の「ファクトチェックセンター」も、記事の最後に、

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あとがき
 検証対象には「ドイツ農民一揆」との説明もありました。ドイツ国内では農家への支援策の打ち切りを発表したショルツ政権に対する大規模な抗議集会も開かれています。こちらも日本メディアの報道がないわけではなく、NHKやCNN日本版などが報じています。

 日本ファクトチェックセンター 1/29(月) 13:05配信「『ドイツで政府に不信を抱き立ち上がった国民の一揆』は誤り 極右政党に反対するデモ【ファクトチェック】」より

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 と「いいわけ」を書いているように、このデモが元々は「政府に対する不満」であったこと自体は間違いではない。

 それがこの「ファクトチェックセンター」に類するドイツの民間機関の「工作」によって矛先反らしがされたと川口氏は書いているわけで。
「それを先途とマスメディアが『左に倣え』で論調をそろえた」というあたり、我が国もまったく「ふ~ん」と傍観していられるような話ではない。

 ここ数年、この手の「マスメディアによる世論扇動」がどれぐらい行われてきただろう。
「安倍叩き」から顕著になったその動きは、今でもまだ続いている。
 今年は年初そうそうに地震が起きて結構な被害が出たのだが、それを使った「政府叩き」の声がどれだけ流布されただろう。
 安住立民国対が偉そうにしているのであまりに馬鹿らしくて取り上げる気も失せる政治資金関係のことでも、本論を外れたバッシングがどれだけ続いているか。
 相変わらず週刊誌に踊らされる人たちは後を絶たないし。

 今回のドイツなどのデモの話はウクライナの戦費にもかかわる話で、ウクライナの戦況は、間違いなく「それを見ている覇権国家」の動向にも影響する。
 そういう話を「矛先反らし」でごまかしてしまうような流れには乗らないよう、気をつけなくてはならない。

 ちなみに、この「ファクトチェックセンター」の編集に名前を連ねている古田大輔氏は、元朝日新聞の記者である。


 本日の改心。

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 掛け声は「福は内」のみ、寝屋川の成田山不動尊で朝ドラ出演の水上恒司さん・伊原六花さんら豆まき


(写真、読売新聞オンラインより。参拝者に豆をまく(手前左から)水上恒司さん、伊原六花さんら(3日、大阪府寝屋川市の成田山不動尊で)=飯島啓太氏撮影)

 節分の3日、大阪府寝屋川市の成田山不動尊で恒例の節分祭があり、NHKの連続テレビ小説「ブギウギ」に出演する水上恒司さんと伊原六花(りっか)さんらが、約2万人の参拝者に福豆をまいた。
 不動明王をまつる境内では鬼も改心するとの考えから、掛け声は「鬼は外」は言わず「福は内」のみ。かみしも姿で特設舞台に上がった水上さんらが落花生を勢いよくまくと、集まった参拝者は紙袋を広げて受け取った。
 舞台には、能登半島地震の被災地の復興を願った看板も掲げられた。訪れた同府交野市の主婦(70)は「能登半島には何度も旅行で訪れたことがある。被災地の復興と家内安全を願いました」と話していた。
 読売新聞オンライン 2/3(土) 14:08

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 昨日の節分では、全国各地の神社仏閣で豆まきが行われた。
 新型コロナの影響は、もうほとんどみんな忘れていしまったようだ。

 大阪の成田山でも豆がまかれ、ここでは「不動明王をまつる境内では鬼も改心するとの考えから、掛け声は『鬼は外』は言わず『福は内』のみ」だとか。
 うん。不動明王や十二神将などはよく邪鬼を踏んずけているな。どうもこの「改心」というのはあまり「平和的」な手段によってもたらされたわけではなさそうな(汗)。

 そういえば水戸の常盤神社でも「福は内」しかいっていなかった気がする。
 祭神のお一人である烈公など、「鬼とみれば手ずから打ち払う」ようなお方だと思うけどな。

 水戸市内の神社では、まくお菓子にくじをつけて豪華賞品を当てるようにしているところもある。
 おかげでそれを目当てに「鬼」たちが集まり、「早くまけよ!」と怒号が上がったりとなかなか殺伐とした空気に包まれるのだが、常盤神社ではただ豆と子供向きにお菓子をまくだけなので、そこまでギスギスしたものにならないのがいい。
 大人はまかれた豆やお菓子を一つキャッチしたらさっさと後ろに下がって、子供たちに場所を空けてあげるようになれば、もっといいな。